第一部 プロローグ 始まりの流星群
初投稿となります。構想し続けて数年。ようやく少しずつ形がまとまってきました。まだ文章を書くことに慣れていなかったり、おかしな点があったりするかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
アドバイス等お待ちしております。
五年前の夏休み。とある町で小学生を対象としたキャンプが行われた。
保護者も含めて総勢百名前後が集まって和気藹々と自然と親しみ、味わった。
そこに咲町睦月少年は妹と両親と参加していた。
妹の葉月と二人で遊んでいる中で、キャンプ場から少し離れた小高い丘の上で睦月は言った。
「なぁ葉月、今日の夜ここに星を見に来ないか?」
え?と葉月は声を漏らす。
「でも夜はテントにいないとダメってお母さんが言ってたよ」
確かに母にも案内係の大人達にも、夜はテントに入って出ることがないように言われていた。
暗い中で行方不明にでもなったりすれば大変なことだし、何が起こるか分からないからだ。
「大丈夫だって。懐中電灯も持ってくるし、すぐに帰ってくればいいだろ?」
「ならいいけど……」
葉月は不安そうにしていたものの、結局は睦月と一緒に星を見ることに決めた。
そしてその夜、キャンプの参加者が皆寝静まった頃に睦月はゆっくりと寝袋から抜け出た。
(葉月、起きろ。星を見に行くぞ)
葉月の体を揺すって目を覚まさせる。
(うーん……。眠いよお兄ちゃん……)
(星を見たらきっと目が覚めるって)
テントの入り口を音を立てないように開く。辺りを見回しても誰も外にはいないようで、薄暗い静寂が広がっていた。
これなら誰にも見られないであの丘まで行けそうだ。
(暗いから気をつけろよ)
(うん……)
葉月と手を繋いで夜道を歩く。
キャンプ場から離れるにつれて電灯が減り、少しずつ闇に染まっていく足元を懐中電灯で照らす。
月に照らされた木々の影が風に吹かれて、不気味に揺らめいていた。
いくつもの葉が擦れる音が二人の恐怖心を煽る。
葉月は睦月の手をぎゅって握りしめ、もう片方の手で腕にしがみついて下を向いていた。
「葉月、丘に着いたぞ」
立ち止まって声をかけるが、葉月は力いっぱいに目を瞑っていた。
「ほら上を見てみろよ葉月。すっげえ綺麗だぞ」
「ほんと……?」
「本当だよ、ほら」
見上げると空には星の海が広がっていた。一つ一つの星は明るさは違えども、自分を見てくれとでも言わんばかりに輝いていた。夏の大三角形を始めとして星座がいくつも見つけられた。街にいる時には街灯や街の光で掻き消されていた星々の光が隅々まで見える。今まで見たことのなかった星が、今まで見たこともない数の星を見ることができる。二人はこの光景に心を打たれ、ただただ夢中で空を見上げた。これ以上に美しいものはないのではないか、そう感じた瞬間だった。
「何だあれ?」
西の空に星が流れた。
「お兄ちゃん!あれ流れ星じゃない!?」
「そうかもな!」
見る見るうちに全天に星が落ちていく。
その時だった。
「あれ、何かおかしくないか?」
北の空に光があった。それは流れ星のはずだが、少しずつ大きくなっているように見えた。
これはもしかすると……
「葉月、もしかしたらあの流れ星は俺たちの方に向かって来てるかもしれない。キャンプ場の方に落ちたら大変なことになる。戻って皆に伝えないと!」
「え!?う、うん!」
睦月は急いで葉月の手をとって元来た道を駆け戻る。
先程より若干周りが明るくなって、視界の下の方で影が濃くなっていくのが分かった。
それがさらに睦月の恐怖を募らせて、嫌が応にも走らせる。
「あっ!」
「葉月!?」
睦月が急ぎすぎたために葉月がついてこられずに転倒した。
睦月はすぐに体を切り替えして葉月に駆け寄る。すぐ真上に星が落ちてきていた。
「間に合え!」
しかし葉月へと睦月の手が届く前に睦月の目の前で葉月が光に包まれた。
「葉月!大丈夫か!?」
光に手を伸ばすが、何か壁のようなものに阻まれて触れることができない。
「何だこれ……うわっ!」
葉月の光球に気を取られていたせいで後ろから近づいていたもう一つの光球に睦月は気がつくことができなかった。
いや、きっと気がついていても超高速で落ちてくる光球を避けることはできなかっただろう。
睦月は光の中で後悔した。
葉月を連れてこなかったら、せめて葉月だけでも助けられたかもしれないのに。
「葉月……ごめん」
そのまま睦月の意識は後悔の湖に沈んでいった。