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第九話「隠された騎士様の狙い」

「全身全霊で払うから」

 

 ―――ひぃぃぃ!!

 

 なんで私が貰うお礼なのに、ヤツ(もうヤツ呼ばわり)の自己満足のプレゼントを受け取らなくちゃならないんだぁ!そしてヤツはまたしても思い切った行動に出て、私の頬に両手を包み込んできたぁぁあああ!

 

 明らかにチューをしてこようとしているではないかぁ!とても今のキモキショのヤツを受け入れる気がサラサラない私は全身に嫌気が回り、無理にヤツの左頬から躯を押し退けようとする。

 

「ぐっ」

 

 するとヤツは横向きになり、チューしようとしていた口がタコチューの形になってキモシシッ!

 

「やめて下さい!私はこんな事を望んでいませんから!」

「触る方が良かったかな?」

「もっと悪いです!」

「じゃぁ、舐め回す方が!」

「いいかげんにして下さい!どれも微塵の欠片も望んでいない事です!」

「もしや挿れ……」

「もう死んで下さい!!」

 

 なんて事を言い出すんだ!やっぱこの人おかしいんだ!これ以上、話をしていても拉致があかない!

 

「へ?」

 

 ふとヤツを見ると、さらに表情を深めているのは何故なんだ!

 

「今のも良かったな」

「はい?」

 

 なにを言い出すんだ?この変態は?

 

「もう死んで下さいってさ♪」

「!?」

 

 そう言うヤツのニヤリとする表情は最っ高にキモイ!!

 

「もっと言ってよ?」

「はい?」

「オマエなんか死ね――――!って」

「やめてください!不道徳的な!」

「さっき言っていたじゃないか!」

「そうですけど、なんかシャークス様が求める意味は違いすぎて、言いたくありませんから!そもそも、なんでそんな事を言わなくちゃならないんですか!?」

「なんかゾクゾクと込み上げる快感があるんだよね❤」

「キッモ―――――イ!」

「たまらない!」

「死んで―――!!」

「もっと強めに!!」

「ヤダァ――――――!!」

 

 もうイッヤァ!罵れば罵るほど、喜んでいるんだもん!なんで、お礼を貰いに来ただけなのに、なにこの展開はぁああ~~~~!?私はボロボロに涙が出てきてしまった。もうどうしたらいいのかわからない。憧れの騎士様はド変態ドMで、離れたいのにこびりつかれて。

 

「あぁ~、泣かないで。オレは泣いて貰いたくて言っているんじゃないんだ」

「十分泣かせるお言葉ばかりですぅ。私はお礼をして下さると聞いて、お食事かなにかだと楽しみしていました。それなのに、こんなん…ひ…ひどいです」

「スターリー」

 

 シャークス様は困った表情をされて、私を見下ろしていた。そして私の気持ちをわかって……。

 

「舐めようとしないで下さい!」

 

 いなかった!ヤツはまた涙を舌で掬おうとしていたのだ!

 

「本当に泣かないで。君の貪りたい姿を見ていると、ついオレの心を揺さぶられて居ても立ってもいられなくなるんだ」

「本来は嬉しいお言葉ですけど、今の私には気持ち悪いのなにものでもないです」

 

 もう私は思った事を素直に発した。もうどうでもいいという気持ちが強まっていたのだ。

 

「そっか…」

 

 私の言葉で傷つかせてしまったのか、シャークス様の表情が一瞬にして、切ないものへと変わる。

 

 ―――ヤ、ヤバイ。

 

 私は焦燥感に駆られた。……が。

 

「残念だけど、躯でお礼を払うのはやめるよ。十分にスターリーからの罵る姿が見られて、快感だったしね♪」

「気持ち悪い自己満足しないで下さい!」

 

 もう心配して損した。シャークス様は言葉の通り、私から躯を離した。さっきまでのキモイ表情はいつの間にか消え去っていて、普段通りに戻っていた。

 

「さて用意していたお礼が渡せないとなると、代わりの物を渡さないとならないね」

「もうお礼はいいです」

 

 私は素っ気ない返事を返した。別の物も怖そうだもん。またあんな思いするぐらいなら初めから貰わない方がいい。そんな気乗りしない私を目の前にしても、シャークス様は何故か次の話題へと進み始めようとしていた。

 

「これは極秘であるんだけど、国王から厄介な任務を命じられている」

「はい?」

 

 ―――いきなりなんの話?

 

 私はわけがわからず顔をしかめていたけど、シャークス様の表情が怖いぐらいに真顔になっていて、ドクンッと心臓が高鳴った。彼はそのまま腕を組み、淡々と説明を始めたのだ。

 

「ここ最近、この首都ジョンブリアンでは不穏な動きが勃発しているんだ。それを突き詰めていくと、どうやら黒幕がいると推測している。王はなにか禍々しいものを感じるとおっしゃっているんだ」

「禍々しいもの?」

「人の手を超えたなにかだと」

 

 ―――は?なんだそれ?

 

 私は深刻な話を突きつけられたにも関わらず、ポカンとしてしまう。内容が国王様絡みで重いのはもちろんだけど、それって…。

 

「極秘だとおっしゃる事を私なんかにお話されてよろしいのですか?」

「うん、だって調査は君にもして貰うからね」

「はい?……って何故私が?絶対に嫌です!私みたいなパンピーな人間が介入してはいけない問題ですよね?」

「君は女騎士一号を目指しているようだね」

「それがさっきの話となんの関係があるのですか?」

 

 もう!次々となんでこうわけのわからない話を湧き出すんだ!

 

「君の兄達が口を揃えて言っているのを聞いたよ。残念だけど、今のところ女騎士を確立させる提案は全くないよ」

「え?」

「君の夢を壊す発言をして申し訳ないけどね」

 

 現実の厳しいお言葉に私はショックを隠し切れず、表情を曇らせてしまう。

 

 ―――そんなずっと夢見ていたのに…。

 

「だけど」

「?」

 

 気が落ち込んだ私に、シャークス様は希望の言葉を落とした。

 

「この調査を行い、黒幕を暴き出し、その者がなにを目論んでいるのか突き止めた暁には、オレは君を女騎士として国王に懇願しようと思っている」

「え?えぇ?それってなんか交換条件みたいな?」

「でも君が女騎士になるにはこの道がてっとり早いと思うよ?」

「そ、そうかもしれませんが…」

 

 でも国王じきじきの事件を解決なんて、私みたいな女のコが容易く出来る問題では…。私が躊躇っていると…。

 

「不安な事は多いかもしれないけど、オレがずっと傍にいるから安心してくれ」

「それが一番危険なんですってば!」

 

 あ~神よぉ~、私はどうしたらよろしいのでしょうか…。



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