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第八話「お礼の内容は…まさかの!?」

「はぁはぁはぁはぁっ」

 

 ―――こ、怖すぎる!いや、キモすぎるか!

 

 数秒毎に息を荒くするシャークス様に手を握られ、迫られている体勢に、私は逃げ出す事を許されなかった。恐怖に襲われ、心臓がバクバクとなり、頭の中は大パニックだ!どうしたらいいのか思考が回らない。

 

「昨夜、私の部屋に侵入されましたよね!?」

「したよ」

 

 ―――んなっ、アッサリ認めるなぁぁ!!

 

「や、やっぱり、あの悪夢は現実だったんだぁ」

「悪夢なんて言わないで。オレにとっては最高の夜だったよ。君の寝顔を見れてさ。しかも生まれたまんまの姿で」

 

 ―――イッヤァァ!!

 

 それは自分だけだよね?気絶した私を無理やり脱がせてないよね?怖すぎて聞けないぃぃ。私はあまりのショックさに涙が溢れてきた。だって、あんなに素敵な人だと憧れを抱いていたのに、まさかのあの「ド変態ドM騎士」だったなんて!そんなのあんまりだぁあああ!

 

「あぁ~、泣かないでおくれ」

「ひゃぁあぁぁぁ」

 

 頬に伝った涙をシャークス様は舌で舐め取ったぁあああ!キモイィィ。

 

「ん~、少しショッパイね」

 

 感想いらねー!もうどうしたら、この状況から抜け出せるの?私はなんとか苦肉の策を考え、一先ず彼に話しかけて注意を促す隙に、逃げ出そうと思いついた。

 

「シャ、シャークス様、わ、私は逃げ出したりしませんから…」

「うん、わかってるよ。そうはさせないからね」

 

 ―――ひぃぃ、ダ、ダメ、表情を強張らせたら作戦がバレてしまう!

 

 逃げ出したりしないから、少し距離をって言おうとしたのに無理そうじゃん。

 

「シャークス様、昨夜は何故私の部屋に?というか、どうやって部屋に入られたんですか!部屋どころか家には厳重な鍵が掛かっていた筈です」

「うん、それは内緒!」

 

 ―――ひぃぃ、貴様は何者じゃ!?幽霊か!?鍵師なのか!?

 

 もう得体の知れない騎士様に、私は完全に廃人化となりかけた。

 

「君の部屋に行ったのは、また君に逢いたくなったからだよ。あの時も言ったと思うけど、寝顔を見てすぐに帰ろうとしたんだ。でも見ている内に、我慢出来なくなって気が付いたら、君の上に身を乗り出していた」

 

 シレッて満面の笑顔で話をしているけど、それ完全に犯罪ですから!

 

「はぁはぁはぁはぁっ」

 

 あ~、また一段と息が荒くなっちゃってるよ!もうなんとかこの男を止めてくれ!

 

「シャークス様、お願いですから、私から離れて下さい!」

「嫌だ」

「いいから離れて下さい!」

「無理だ」

「お願いです!」

「ダメだ」

「はーなーれーてーってばぁぁあああ!!」

 

 私は渾身の力を振り絞って、シャークス様の躯を払い退けようとした。

 

「スターリー!もうなにも言わず、素直にオレの胸に飛び込んで来るんだ!」


 ―――出来るか、ボケッ!

 

 逆に彼は私を抱き寄せようとしてきたものだから、

 

「離れろって言ってんだろぉぉおおお、こんのド変態がぁぁああ――――!!」

 

 私は我を忘れて叫び、さらに!

 

 ―――バッシ―――――――ン!!

 

 部屋中に生々しく痛々しい音が響いた。そう、私がシャークス様の頬を叩く音が…。

 

 ―――シ―――――――ン。

 

 あぁ~、終わった。私の人生…。シャークス様は茫然として私を見つめている。そりゃそうだ。田舎の小娘が王族に仕える騎士様の頬を叩くなんて、このまま牢獄生活となるのか。私は再起不能となっていた。そしてシャークス様は……。

 

「え?」

 

 茫然とされていた顔の頬が徐々に紅潮し始めて?さらに瞳がトロンッとなっている!?まさに恍惚な表情になってきているのは何故なんだぁああ!?

 

「スターリー」

「は、は…ぃ」

 

 私はビックンビックンしながら、恐る恐る返事をする。

 

「今の平手打ちは最高だった!!」

「ひぃぃ!!」

 

 突然に意を決したように目をキラキラとさせたシャークス様は再び私の前へと身を乗り出してきた。

 

「打たれた衝撃がオレのリアルマイハートまで響いてきたよ!」

「なんですか、それ!?」

「君はやっぱりオレが見込んだ女のコだ!」

「どう見込まれていたんですかぁぁ!?」

 

 私は想定外の出来事に対応が出来なくて、またしても涙が出そうになるが、さっきみたいに舌で舐められるかと思うと、無駄に泣く事が出来ないぃぃ。

 

「スターリー」

「イッヤァ」

 

 またしてもシャークス様から、ガシッと手を握られ迫られる。

 

「な、なんでこんな事をされるんですか!」

「決まっているだろ!オレは君を愛しているんだ!!」

「信じられません!」

 

 なにをいきなりコイツはぁ!気持ちが興奮し過ぎて血迷っているのか!普通ならこんな美形から告白を受けて涙がちょちょ切れる筈なのに、ちっとも嬉しくないよぉおお。

 

「本当だ!オレは君を愛している!今にも張り裂けそうなぐらい、愛しているんだ!!」

 

 無駄に顔を近づけられて、りきまれても信憑性が感じられませんから!

 

「愛される理由がわかりません!」

「オレの想い!これでわかるだろ!?」

 

 感極まったシャークス様は突然に私の手を自分へと伸ばさせる。

 

「ひぃぃぃ!!」

 

 私の右手を自分の心臓に…確かにドックンドックンと鼓動が速い。さらに私の左手を…。

 

 ―――ひぃやぁぁぁぁ!!変なモノ触らせようとすんなぁ!!

 

「張り裂けそうな想いわかるだろう!?」

 

 張り裂けそうなモノがグロいんだよぉおお!!近づくグロモノを間一髪の所で避けた。ウブな女のコに、なにさせようとしてたんだ、この重罪人め!

 

「いきなり変な事をしないで下さい!」

 

 さすがに度が過ぎたシャークス様に、私は思わず叫んで訴えてしまった。しかし…。

 

「言っただろう?お礼はこの躯で払うと」

 

 私は廃人化となった。そして風によって粉々になった躯が散って行くのであった…。


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