第七話「あの悪夢再び、降臨!」
シャークス様に続いて、私はエントランスの入口へと迎えられた。扉はもう説明しなくてもわかるよね!金銀宝石が埋め込まれている絢爛豪華な扉を通り、エントランスホールへとやって来た。
―――ひょえぇ~。
入口からおったまげ~。壁の大きな窓が解放され、ホールに大量の光が取り入れられていた。また細い柱がホールの空間を広くさせ、建物を外側から支えるアーチや柱などの構造物が外壁へとせり出していた。私には斬新な空間が堪らない!
―――この格好で本当に良かったのかな?
とは言ってもこれがめいいっぱいのフォーマルな服装だもんな。私は普段好んで着る事はないシルク素材のヒラヒラの白いレースがついたクリーム色の準ドレスを着ていた。一応このドレスでいいかシャークス様には了承を得ていた。そういえば、この姿を見せた時のシャークス様ってば、
「すっごく可愛いね❤」
って、頬を紅潮させておっしゃるから、ドキドキさせられたな。イーグルス兄さんはドレスに助けて貰っているなと失礼な言い方をしてたのにさ!
素敵な空間は歩く所々で見られ、私は始終驚かされていた。天井画も壁画も絵師様によって描かれた芸術作品だし、細やかな美しい彫刻も立ち並び、やっぱり宮殿は別世界だなぁ~と実感させられた。
「スターリーは年いくつなの?」
案内をされている中、ふとシャークス様から質問を投げられる。
「20歳になったばっかです」
私は素直に答えた。
「そう。じゃぁ、成人しているから大丈夫だね」
「?」
―――どういう意味だろう?
意味ありげに笑みを深めるシャークス様に私は首を傾げた。気になるところではあったけど…。そういえば、すれ違う使用人さんや侍女さんはシャークス様の姿を見ると、お辞儀をしていたな。やっぱ彼は位の高い騎士様だ。
「ここの部屋だよ」
シャークス様が一室へと案内をして下さった。招かれた部屋へと足を踏み入れると…。
「わぁ、凄い!」
アンティークデザインの可愛らしい家具が並んでいて、カーテンやクロスなどはフワフワのシフォンレースの生地が使われている。絨毯も壁も繊細で可愛らしい花のデザインだし、窓の形もハート型になって超可愛い♪部屋全体が小人が住むようなメルヘンチックな空間だ。
中でも一番目についたのが天蓋付きのベッドだ。なんといっても美しいデザインの真っ白いカーテンレースに包まれたベッドのシーツは乙女心をくすぐるベビーピンクだった。枕も同じ色で可愛い!
―――ん?でもなんで枕が2つ?
「素敵なベッドだよね?」
私が首を傾げている間に隣にはシャークス様が来ていた。
「そうですね!天蓋付きベッドなんて、お姫様みたいで夢の一つですから!」
「そっか。気に入ってもらえて良かったよ。思い出を作る大事なベッドだから、どうせなら気に入る物がいいよね?」
「え?……え!?」
いつの間にかシャークス様が私のすぐ目の前まで近づいていた。しかも物凄ぉぉく至近距離で!私は思わず後ずさりをしてしまう。
「あ、あの?シャークス様?」
でも私が下がれば、その分シャークス様から近寄られ、結局距離は縮まない。なんかこのシチュエーションって迫られていない!?
「やっと2人っきりになれた」
「はい?」
「この部屋なら誰にも邪魔されないしね♪」
「はい!?」
言葉の意味もめちゃ怪しいけど、気になるのはシャークス様が恍惚な表情をされて、そして息がめっさ荒い!?突然に豹変されて顔つきが違いますけど!?
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
―――えぇぇええええ!?
な、なんか本気で息が乱れていて、ヤバイんですけどぉおお!?私はさらに後退しようと試みたが、なんと後ろは重厚な調度品が妨げていた!
―――ど、どうしよう、どうしよう!!
今のシャークス様、なんか普通じゃないよね!?
「あ、あの、シャークス様!心なしか距離が近いので少し離れて…ぎゃ!」
私は女子ならぬ悲鳴の声を上げた!だって、シャークス様がいきなりガシッて私の左手を強く握って、そして顔を近づけてくるんだもん!
「ひぃぃ!!」
私は身の危険を感じ、シャークス様から顔を逸らした!
「はぁはぁはぁはぁっ」
彼は完全に興奮していて、我を忘れたかのように息を高速させていた!表情もトロンとイッちゃてる!?こ、この表情は…私は心の奥底に封じ込めていた事柄をフラッシュバックさせてしまう!
―――まさかまさかまさか!?
あの悪夢再びなの?あの「オレを罵ってくれー!!!!」と叫んでいたキモキショのド変態ドM男が再び私の前に!?
―――イッヤァァアアア――――――――――!!神よぉおおおお!!今すぐ、お助けをぉぉおおおお!!!!