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第六十八話「繰り広げられる大奮闘」

 ―――シ―――――ン…。

 

 シャークスの言葉に、一斉にその場が静まり返った。

 

「なんと?」

 

 束の間、すぐに大司教からの不穏の声が入った。その表情はまさに鬼の形相だ。

 

「言葉の意味そのままですよ。王、民衆の前で真実を告げましょう。これまでの経緯いきさつ、そして大司教達が犯した罪をすべて明るみにするのです」

「そのような事をさせてたまるかっ!」

 

 轟音如く響く声はまさかのパナシェさんからだった。彼がこんな荒々しい声を出すなんて。そんな彼の様子に呆然として見つめていると、いつの間にか私達や民衆の前に、何処からともなく、巨大な体格をした何十人もの兵士達が姿を現した。大司教やパナシェさん、司祭達は後ろへと下がり、高みの見物となる。

 

 現れた兵士達は私やシャークスを拘束していた兵士達よりもさらに豪猛で荒らかな雰囲気をもち、重厚な鎧と兜を身に纏っていた。明らかに戦闘態勢じゃない!?それに、なんでこんな兵士と付き合いがあるのさ!聖職者は最も戦いを好まないが故、縁のない人達じゃん!

 

「貴方達の勝手をこれ以上、野放しにはさせておけません。話すのも困難な状態までいたぶってやりなさい!」

 

 ―――うわっ!

 

 パナシェさん、どこまでも聖職者として終わっているんだろう!その彼の言葉を合図として、兵士達が私達へと駈け出す!民衆達は悲鳴を上げ、逃げるように後退する。そんな中、物の動じもせず、シャークス、ザクロ、クローバーさんの三人は剣を振り被り立ち向かった!

 

 だが、どう見ても多勢に無勢だ。100人近くはいる兵士達を3人で相手にするなんて、無謀に過ぎない!私はどうしたらいいのかわからず、その場で立ち往生していると、民衆の一人に逃げるようにと引っ張られる。

 

 目の前では一人の騎士に対し、数人の兵士達が囲むように攻めているのだ!シャキン、シャキーン!と、剣が交わる鋭利な音が響いている!今、この場から離れるわけにはいかない。少しでもシャークス達の力にならなければ!

 

 私は身を翻し、シャークス達の方へと駈け出す。そして目に映った光景に、私は目を大きく見張った。だって不利だと思っていた態勢と反対の出来事が起こっているんだもん!地にドデンッと不恰好に倒れている兵士が何人もいるんだけど!

 

 ―――これは?シャークス達がやったんだよね!

 

 呆然とするその光景の先には今も激しく奮闘しているシャークス達の姿があった。その光景は度肝を抜く凄絶なものだ。クローバーさんは…どちらまでお上がりで?通常では不可能であろう数十メートル上の塔の尖頭付近まで跳躍をしていた!

 

 彼を狙っていた兵士達も口をあんぐりとしていて見上げている。あれって人間離れしているよね!確かこのシルビア大聖堂に侵入した時も軽々しく登り上げていたし、彼の身体能力って、どんだけ並外れているの!?

 

 クローバーさんはそこからさらに足を蹴り、下にいる兵士達へと向かって身を降下し、狙いを定めた兵士達に向かって、剣を振り下ろす。兵士達は完全に躯を硬直させたまま、クローバーさんから剣の衝撃を与えられた!

 

「「「ぐぉぉおおお!!」」」

 

 苦痛の叫び声が上がる!鎧や兜があるとはいえ、あの高さからの衝撃は相当な打撃だろう!バッタ―――ン!!と、巨大な兵士達は次々に頽れた。

 

 スチャッとクローバーさんは軽やかな足取りで着地した。本人にはなんの衝撃もなし!?着地の際、全く足に負担がないなんて、そんなのってありなの!彼は着地をしてからも、残りの兵士達を相手に剣を交えていた。


 ―――シャキンシャキーン!!

 

 クローバーさんの隣では鮮やかなワインレッドの髪を舞いながら、俊敏な動きで剣を交わすザクロの姿があった。翻しも振るう剣の動きも大きく、その分、相手へ与えるダメージも強く、兵士達を圧倒していた!

 

 普段の態度のでかさが剣のさばきにも比例しているようだ。あれだけ大胆な振る舞いが出来るのも、相手の次の行動を瞬時に読み取っているからだ。認めたくないけど、ザクロは頭の回転が速いとみた。見事な的確な判断に、相手の動きには躊躇いが生じている。

 

 ザクロもクローバーさんもさすが黒の騎士様だ。私の助太刀なんて不要じゃない?………はっ!?そういえば、シャークスは!彼は私の視界の範疇から超えた場所で奮闘していた。

 

「ぐぅお!!」

「ぎゃぁああ!!」

 

 突如、背後から苦痛の叫び声が上がる!刹那、振り返ると、

 

 ―――ズザザザザザッ!!

 

 派手に地へと吹き飛ばされる兵士二人に、私は目を大きく見開いて吃驚する。それと同時に、シャークスがスチャッと地に足を着き、威風堂々とした姿で立っていた。


 ―――こ、これは!


 多分、シャークスが兵士達に宙蹴りを食らわせたのだろう。毅然とするシャークスの姿に、逆立っている残りの兵士達は一斉にシャークスへと向かう。


 ―――ちょと、それって戦いの反則じゃ!


 私はシャークスの助太刀をしようと駈け出すが、間に合わない!我を忘れたかのように、襲い掛かる兵士達にシャークスは!いつの間にか大剣を両手に持っていて、兵士達へと向かって疾走する。兵士達が目前となると、彼等から一斉に剣を斬りつけられる。

 

 ―――シャキンシャキンシャキンシャキンシャキ――――ン!!

 

 シャークスは二つの剣を左右に大きく振り上げ、兵士達の剣を押し退ける。す、凄い!全員の大剣を払い退けた。その反動で距離が出来ると、左手の剣を投げ捨て、身を翻し、左側の兵士に向かって下から剣を振るい上げる!

 

「ぐっ!」

 

 シャキーンッ!と、剣が交わり、兵士から持ちこたえる声が漏れる。若干シャークスの剣の押しの方が勝っているように見えたが、負けんじと兵士はシャークスの顔へと剣を近づけようとしていた。ギリギリッと剣同志が振るえ、悲鳴を上げていた。引かず押されずの状態が続く。

 

 ―――シャークス!

 

 バクンバクンッと、私は心臓が張り裂けそうになりながら、見守っていた。大きな緊張が流れる最中さなか、突然に?シャークスの背後から、兵士の一人が襲い掛かり、剣を斬りつけようとしていた!

 

 ―――シャークス!?


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