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第五十九話「黒幕の元へ」

 私はシャークスと共に、宮殿の裏扉(もとい隠れ扉というべきか)から抜け出し、黒幕の元へと向かっていた。宮殿の表では恐ろしい事に、デモンストレーターと騎士様達の奮闘が繰り広げられている。

 

 そんな彼等に姿を見られまいと、私とシャークスはローブを身に纏い、外へと出た。見つからないかヒヤヒヤしていたけど、なんとか騒ぎにも巻き込まれず、宮殿から離れる事が出来た。一先ず、私は安堵の溜め息をつく。

 

 目的地は馬を走らせれば、5分ほどで辿り着くけど、出来るだけ目立たず行動を取る為、徒歩で向かっていた。その間もシャークスとの会話はなく、お互い周りを注視しながら、気を張り詰めていた。

 

 こんな街中で変に騒ぎを起こしたくない。でも民衆は恐怖や混乱といった不安をシャークスへとぶつけて来るのはわかっていた。今、私達は黒幕を捕らえに行く目的がある。早く事を終わらせる為にも、時間を取られるわけにはいかないのだ。

 

 ―――数十分後。

 

 歩くこと20分ほどで「目的地」へと着いた。そこはまさしく……。

 

「いよいよだね」

 

 私は目の前の圧巻とする建物を見上げ、呟いた。数百本の尖塔があり、その天辺一つ一つには女神を守る天使達が立ち、尖塔中心の頂点にはローゼンカバリア女神の像が威風堂々とした姿で立っていた。そう、そこは紛れもなくシルビア大聖堂だ。そして今から私達が会う相手は大司祭の「パナシェ」さんだ。

 

 今ならわかる気がする。以前訪れた時、最後にパナシェさんから向けられた、あの冷然とした凍てつく視線の意味が。彼は私達を警戒していたのだ。私達が彼の目的に気付いているのではないかと思って…。

 

「黒幕」がパナシェであるかは定かではない。だけど、彼が関係しているという事は確かだ。何故なら、私が拉致られた事件の時、お金と私を引き換えに現れた人物から出た名がパナシェさんだったからだ。

 

 男はパナシェさんからお金を預かり、指定されたあの小屋で私と引き換えに、お金を渡すよう指示を受けていた。まるで誘拐犯に身代金を渡すような怪しい取引だというのに、これもすべて「ローゼンカバリア女神」からのお告げだと、信仰の深い男は実行へと至ったようだった。

 

 すべての罪を女神になすり付ける行為はとんだ不届きもの者だ。まさに信仰者の心を利用し、自分の欲望を満たす、しかもその欲とは王を失脚させ、「権力」の強奪を目論んでいる。

 

 正直、信じ難くて仕方ない。だって彼は聖職者である身でいながら、悪事を働いているなんて。こんな事が許される筈がない。聖職者はいわば女神の使いだ。多くの信仰者達を悲観させてしまうだろう。それに女神に対する不信感も生まれる。本来、女神は人々に恵みと幸せを運び守ってくれているのだ。そこに汚名を着せる事になる。

 

「さぁ、急ごう。一刻も早く、パナシェ大司祭に会わなければ」

 

 真剣な表情をしたシャークスの言葉に、私は静かにコクンと頷いた。でも…。

 

「あれ?開館していない?」

 

 正門へと回ると、扉が閉鎖されている事に気付く。そういえば、周りの広場にはいつも人々で賑わっているのに、今日は誰もいない?なんで?

 

「首都の騒ぎによって、一時的に閉館しているのかもしれない」

 

 ダメ元でシャークスは正門の扉を開けようとしてみたが、やっぱり開かないようだ。

 

「相手は先手を打ってシャットアウトしてきているね。騒ぎを理由に閉鎖をしたみたいだ」

「それじゃどうやって中に入ればいいの!」

 

 こんな一刻を争うって時に!

 

「何処か別の扉を探そう。鍵を壊してでも中に入るんだ」

 

 ―――数十分後。

 

 グルリと大聖堂を回り、別の扉を探したけれど…。

 

「別の扉なんてなくない?」

 

 これだけの巨大な建物なのに、出入口の扉が正面のみなんて有り得ないっての!

 

「聖なる場所なだけあって、良からぬ考えを持つ連中を避ける造りになっているのかもしれない」

 

 焦る私に対し、シャークスは至って冷静だった。なんで!

 

「どうするの?」

「んー、ちょうど、この上に扉らしきものが見えるね」

「え?」

 

 この上っていっても、シャークスの見上げる先の扉は通常三階建てくらいの高さがある。

 

「まさかと思うけど、あそこから入るとか言わないよね?」

「他に方法がある?」

「それは…。でもどうやって上がるの!」

「よじ登るんだよ」

「えぇ~!大聖堂の外観に足を踏みつけろと!?罰当たりじゃない!?」

「悪党を野放しにするよりはマシさ。きっとヤツを捕まえれば、女神もお許下さるだろう」

 

 そういう問題なの!でも別の方法を出せと言われても、なにも思い付かない…。う~、時間を考えると、決行する他ないと判断した。

 

「わかったわよ」

「それでこそ、オレのスターリーだ」

「オレのはいらない!」

 

 微笑んだシャークスは先に外観へと手を付いた。

 

「オレが先に上がって、足の踏み場を案内するから、スターリーはオレと同じ手順で上がってきてくれ」

「わかった」

 

 私が力強く頷くのを見たシャークスは足を上げ、外観へと上り始める。その後すぐに私も続こうと、手を付いた時だった。

 

「おい、オマエ達…」

 

 ―――え?

 

 背後から、低音で酷く厳しい声がかかった

 

 ―――もしかして……見つかった!?

 

 私とシャークスは反射的に声が聞こえた背後へと振り返る!すると…?

 

「「!?」」


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