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第五話「どういう展開ですか!」

 私はメドゥーサと目を合わせ石化した人間のように、躯を硬直させていた。昨日助けた時の騎士様よりも、やっぱりあの悪夢の姿の騎士様の方がこびりついていてヤバイ。


 あとチューもされているよね!あぁ~、頭がグラグラする。なんとも言えない複雑な思いが飛びっている中、当の騎士様は微笑んだ表情のまま、私を見つめていた。そして…。

 

「昨日は、よく眠れたかい?」

「!?」

 

 私はみるみる目を見開く。意味ありげに笑う騎士様の表情を見て悪夢が蘇る。普通は今の質問は出てこないよね?………………………まさかですよね~!あの騎士様の「はぁはぁ」と恍惚な表情をさせたキモイ顔がチラつく。

 

 ―――それって…、ど、どういう意味ざましょ!

 

 さらに「罵ってくれー」のキショイ姿が私を襲う!

 

 ―――イッヤァァアア―――――!!!!

 

 ダメよ、スターリー!ア、アレは夢だったんだから!こんな素敵な人をあんな悪夢の姿と重ねたら罰当たりだ。私は纏わりつく悪夢を懸命に追い払っていた。

 

「…は、はい。実は悪夢を見ました。昨日の昼間の出来事が印象深かったのか、睡眠中は錯乱していたみたいです」

「可哀相に。君には初めての経験だったもんね」

「!?」

 

 それは勿論「奮闘」の件ですよね?私は額から冷や汗が出そうになった。ま、まさか…昨日の夜の出来事はガチで、私はこの騎士様に食べられちゃったとかじゃないよね!?

 

 ―――イッヤァァアア―――――――!!!!

 

 雄叫びを上げそうになった。だって私はこう見えてもウブな女のコなんだ。騎士様には悪いけど、あんなキショな彼にムリヤリ既成事実を作られて、しかも記憶がないなんて!いや、むしろ記憶がない方が幸せか!


 ってそういう問題じゃない!なんたって私の初めてがぁぁあああ!!神よ~、アレは現実の出来事ではなかったと、今すぐにお言葉を下さいませ~。

 

「驚いたよ。まさかスターリーとシャークス様がお知り合いだったなんてさ」

 

 騎士様の姿しか目に入っていなかったけど、彼の隣りにはイーグルス兄さんがいた。「シャークス様」とは騎士様の事だよね?そして「様」を付けて、お呼びしているところをみると、黒の騎士様の方がお偉い?

 

「知り合いというか…」

 

 私は曖昧な返事をする。昨日、一度昼間に会ったぐらいで、知り合いというには語弊がある。

 

「そうなんだ。昨日、品のない連中に絡まれていた所にスターリーが助けに入ってくれてね。ろくにお礼も出来ずに別れてしまったから、心残りで」

「それでわざわざお礼をなさりに、ここまで来られたのだよ」

「そうなの?」

 

 位の高い騎士様がわざわざ?私はさっきまでの恐ろしい思惑を忘れ、今度は変に緊張して畏まってしまう。しかもこんなイケメンの前で身出しなみが悪くて最悪だぁ。

 

「あの、お礼なんて大それた事をなさらなくてもいいです」

 

 私は謙遜な態度を見せた。だって最上級に位の騎士様がこんな田舎に住む娘の元に出向いたくれただけで、十分なお礼だよね?

 

「そんな事を言わないでおくれ。君はいわば命の恩人だ。なにもしないわけにはいかないよ」

 

 私の言葉に騎士様はすぐに否定に入った。そして隣の兄さんが彼の言葉に続く。

 

「実はオレもお礼はご遠慮願ったんだけどね、でもシャークス様がどうしてもされたいとおっしゃてくれてさ」

「そうだったの?」

 

 私は騎士様に目を移すと、彼は優しい表情をして私を見ていた。イケメンすぎて、なんとなく視線を逸らしてしまう。でもお礼っていうのは?なにかを用意して下さったとかじゃないよね?騎士様の手にはなにもお持ちでないし。ちゃっかしとお礼がなにかと考えてしまった。

 

「自己紹介が遅れたね。オレの名前はシャークス・トゥース。見ての通りだけど、黒の騎士をしている」

「あ、はい!」

 

 騎士様が再び口を開いた。やっぱりシャークス様というお名前だったんだね。

 

「他にも色々と知ってもらいたい話はあるけど、まずはスターリー」

「はい」

「お礼をするから外出の用意をしてきて?」

「え?」

 

 正直、騎士様の言葉の意味が把握出来ず、私は思わずポカンとしてしまう。

 

 ―――お礼に何故、外出の用意?

 

「お礼はガーネット宮殿でさせて貰おうと思ってるよ」

「へ?」

 

 突拍子もない声を上げてしまう。だってだってだってだよ?ガーネット宮殿って首都ジョンブリアンの王様達がいらっしゃるお城なんだよ!私みたいなパンピーな人間が入れる場所じゃないんだって!私はさらにポカンと固まっていると、

 

「スターリー、気持ちはわかるが、あまりシャークス様をお待たせさせては悪い。彼はオマエの為に多忙な時間をいて、いらっしゃっているのだから」

 

 兄さんに言われて私は我に返った。

 

「そんなに気にする事はないよ。彼女にお礼をするのも今日のスケジュールの中に組み込まれている大事な事柄だ」

 

 私はその言葉を耳にすると、ジーンと胸が熱くなった。こんなお偉い騎士様(しかもすこぶるイケメン)自ら迎えに来て下さって。なのに私ってば、悪夢の姿と、こんな素敵な騎士様の姿を重ねてしまって、自分が不甲斐ない人間に思えて反省した。

 

「あのすぐに用意をしてきますので、少しお待ち下さい」

 

 私は騎士様に言葉を残して、すぐに自分の部屋へと戻り、宮殿へと行く支度に入ったのだった…。


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