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第四十六話「リアルプリンセス!アンティール様」

「ふぅ~」

 

 思わず深い溜め息を吐いてしまった。というのも思っていた以上に、パーティの準備が肉体労働なんだもん。ホールに持って行くお花やキンキラ金の置物やら重たい物の移動が多い!

 

 そういった物を女性の使用人さんや侍女さん数人で運んでいるんだけど、私はひょっこり一人で持ったりするもんだから、気が付いたら運び係になってしまっていた。んー、この間のカジノの荷物持ちといい、私ってそういう役目になり易いのかな。

 

 今、私は宮殿内のお気に入りの噴水の前で休憩を取っていた。今日もすこぶる天気がイイ。気持ちの良い陽射しに当たっていると、調査をするような大きな事件が起きているなんて、信じられなくなる。

 

 ―――調査、上手くいくよね?

 

 シャークスからは次の調査は病院で休養を取っている農夫達から、情報を聞き出すようにと言われているけど、いくら相手の弱っている時だからって、簡単に白状したりしないよね。


 この間のつぶらなおっさん達の時のように、黒幕から圧力をかけられているような気もするし。正直、明るい兆しが見えなくて、不安になりつつあった。まぁ、考えても答えが見つからないからやめよう。まずは言われた通りの事をやっていればいいよね。


 ―――そろそろ休憩時間も終わるし、ホールへと戻りますか!

 

 私は気合いを入れ直して立ち上がり、宮殿の二階へと繋がる階段を上がった。すると、

 

「あれ?」

 

 バルコニーに人が立っていた。後ろ姿から見て女性のようだった。普段なら人が立っていても、さほど気にはしないけど、今回は違ったのだ。陽射しによってキラキラ輝くブロンドの髪に、思わず目を奪われていた。


 毛先がクルクルンと巻かれていて、上品なイメージだ。それにジョーゼット製のドレスを着ていて、これはもう明らかに格式のある方なんだなと察した。私が呆けて見つめていたら、相手が私の気配を感じたのか、突然後ろへと振り返って、ドキッとしてしまう!

 

 ―――わぁっ!

 

 感嘆の声を上げそうになった。お人形のように色白で、どこのお姫様かと思ったよ!眉が見えるパッツン前髪に、お目々が超おっきくてクッリクリ!顔のパーツはどこも端正で見事な美少女だ。年は私と変わらない感じだけど、明らかに人種が違う。

 

 瞬時の観察だったけど、私が食い入るように見つめてしまっていたもんだから、相手はキョトンとしていた。でもすぐにニコッと微笑みかけてくれて、破壊力抜群の笑顔だ。男性ならイチコロだよね!そして…。

 

「こんにちは」

 

 女性は挨拶をしてくれた。透き通る綺麗なソプラノの声は美しい容姿相応だ。

 

「こんにちは」

 

 私も挨拶の言葉を返した。

 

「貴女はここの……侍女かしら?」

「え?」

 

 あ、そっか。今の格好、白いエプロンをつけているから、侍女さんに見えるのか。女性と少し距離があったので、私は彼女へと近寄る。

 

「侍女ではないです。事情わけあって、ここでお世話になっております」

 

 さすがに極秘調査の為だとは言えないよね。

 

「それは失礼な事を申し上げたわ。ごめんなさいね」

「いえ。この格好なので、間違えられても仕方ありませんし。今アンティール様のパーティの準備を手伝っておりまして、それでこの姿でいるんです」

「まぁ、そうだったの。それはわざわざ有難う。感謝するわ」

 

 破壊力抜群の笑顔がさらに深まった。

 

「いいえ」

 

 ご丁寧な言葉に却って恐縮してしまう。でも今の言葉からして、彼女もしかしたら……王族の人じゃ!余計変に緊張が高まり始める。

 

「今年は成人を迎える年なの。だから、いつも以上に気合いの入ったパーティに、準備が大変だと思うわ」

「え?」

 

 あ、あれ?あれれれ?な、なんか今の言葉って……まるでご本人様のような気がしたんだけど……ま、まさかまさかぁあああ!アンティール様、ご本人ではないです…よ……ね?

 

「どうかしたかしら?」

 

 私が固まっていると、女性は不思議そうに首を傾げて、覗き込んできた。

 

「あ、あの失礼ながら、アナタはもしかして…?」

「あー、それでだったのね。名乗りもせずに、話をしていて失礼したわ。私がアンティール・ドライ・マティーニよ。エクストラ国王の姪なの。宜しくね」

 

 ひぃぃぃ!や、やっぱりご本人様じゃないですか!そりゃ、普通の人とは異なる一際煌びやかなオーラを放っているのも頷けるわ。

 

「ス、スミマセン!失礼な態度を取っていたかと」

 

 私はオロオロと変にキョドリながら、やっとの言葉を伝える。

 

「そんなに畏まらなくていいのよ。普段、私の事を目にする事はないだろうし、知らなくて当然だわ」

「そうおっしゃって下さって恐縮です」

「ふふっ」

 

 アンティール様は優しい微笑みを向けていた。

 

「貴女のお名前は?」

「あ、私はスターリー・クランベリーと申します」

「え…?」

 

 問われてすぐに答えたけれど、私の名を耳にしたアンティール様は何故か瞠目された。……なんで?

 

「あの…?」

「あ、ご、ごめんなさいね。貴女、もしかしてシャークスの?」

「へ?」


 ―――な、なんでここでシャークスの名前が!


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