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第四十五話「一から気合いを入れ直します」

 今回の調査の対象人物、商人&漁師達から、有力な情報を得られると、期待をしていた私達だったけど、実際に彼等は全く黒幕の正体を知らなかった。あ~、なんの為に夜な夜なカジノで、あんな重たい荷物持ちを…ってそうじゃない!

 

 あんだけおっさん達とも奮闘したのに、なんの収穫もないなんて…と、落ち込んでいたけど、シャークスは「よく頑張ったね」と、褒めてくれた。黒幕の正体はわからなかったけど、彼等に指示をしていた人物が確実にいるんだって事がわかっただけでも、やった甲斐があったと。

 

 前回の調査対象だった貿易の乗組員達からは、噂話程度の情報しか得られなかったけど、今回は確実に黒幕が繋がっているという確証が取れた。それに、これは元々長丁場の調査だ。焦っても気を落としても黒幕の正体は暴けないもんね。

 

 そして商人&漁師のおっさん達がどうなったかというと、国が保護する事になった。彼等にむやみに仕事を再開させても、例の原因不明の病に犯される可能性もあると、暫くの間は王宮がらみの労働をさせながら、生活の保護を取る形となった。

 

 そしてローゼンカバリア女神の天罰って…。本当にあるのかな?私は無宗教派だから、そういった事は全くといって信じ難いんだけど。まぁ、ザクロも胡散臭いとは言っていたしな。うーん、でも実際に数十人をも原因不明の病にさせたからな。人為的には無理な話よね?はぁーもっう、ほんっとわっかんない!

 

 ―――トントントンッ。

 

「ん?」

 

 呼び出されるまで部屋で待機していた私は、きっと迎えが来たのだろうと立ち上がり、出入口の扉を開けに行く。

 

「はーい」

 

 ギィーと扉が開き、現れた人物は……キラキラのプラチナブロンドの髪とマリンブルーの瞳が印象的なシャークスだ。彼はカッコイイ黒の騎士様の制服を見事に着こなし、存在感を際立たせていた。

 

「やぁ、スーターリー」

 

 シャークスは私の姿を目にすると、柔和な笑顔を見せ、名を呼んだ。まるで白馬に乗った王子様から、迎えられたような気分にさせられる……のはとんだ思い違いだ!

 

「まだ表情がパッとしないね?疲れているんだね。やっぱ夜はオレが癒して…」

「それいらないから!余計疲れさせられるっての!つぅか、会って早々変な言葉を飛ばして来ないでよね」

「え?でも暫くオレの登場がなかったから、スターリーとの濃密な絡みが見たいって…」

「なんの話よ!誰がそんな事言ったってのよ!それにアンタ、ちゃっかりカジノに潜入してたじゃない!」

 

 そうなの!シャークスは調査に参入しないで、蚊帳の外で傍観していたのかと思いきや、実は私とザクロが潜入していた巨大カジノ「トパーズ」に来ていたんだ。そう、例の「あの人」の姿で!覚えているでしょうか?気が付けば、いつも私にゲームの状況を説明してくれていたボーイだ!

 

 見事に変装をして、私達の様子を見ていたらしい。本人曰く、私達を見守っていたとは言っているけど、ザクロからの話だと、自分が野獣化となって私を襲いはしないか監視していたんだろうと!んな事あるわけないじゃん!あの女嫌いの暴言男、ザクロが私を襲うなんて有り得ないっての!全く!

 

 今の話も腹立たしいけど、それよりももっとたちが悪いのがザクロだ!アイツ、私がつぶらなおっさん達と奮闘している間、本当は傍観していたんだよ!元々おっさん達が私達の後を付けて来ているのに気が付いたヤツは、おっさん達の目論見を知る為、いったん私の元から離れたと言うのだ。

 

 まぁ、そこまでは良しとしよう。問題はその後だ!私がおっさん達に攫われそうになったのを目にしておきながら、すぐには助けなかったという!なんで!?かと問うと、ヤツから返ってきた言葉が「騎士を目指すなら、あれぐらいの連中を相手に出来て当たり前だ」だった。

 

 そういう問題じゃねぇぇえええ!!って言い返したけど、ヤツはフルシカトしやがった!なにかとつけ込んで、騎士になるなら騎士になるならとマジウッザ、この人でなし!

 

「はぁー」

 

 思い出した私は思わず深い溜め息を漏らしてしまった。

 

「どうしたの、スターリー?」

 

 怪訝そうに首を傾げるシャークスに、

 

「なんでもない」

 

 素っ気ない返事をした。

 

「で、今日は新たな調査を始めるんでしょ?」

「ん、新しい調査は始めるけど、今日は別件でスターリーに仕事をお願いしたいんだ」

「別の仕事?」

 

 今度は私が首を傾げた。出入口の扉の前で話すのもなんだから、私はシャークスを部屋へと招き、テーブルを挟んで向かい合わせに座った。

 

「新しい仕事ってなに?」

「ん、実は一週間後に、王宮の大ホールで、アンティール様のバースデーパーティーが行われる予定なんだけど」

「アンティール様って…」

 

 確か現国王エクストラ・ドライ・マティーニ様の実弟のご息女様だ。王宮の方達のバースデーといったら、大層な事だろうけど…。

 

「でもこんな首都に問題が起きている時に、のうのうとパーティだなんて…」

「気持ちはわかるけど、王族のイベントは伝統の一種なんだ。どんな時でも、めでたい出来事は祝杯をあげると決まっているんだよ」

「ふーん、なんか複雑ね」

「そうだね、本当に複雑だよ」

 

 ん?なんか妙にシャークスの顔が複雑そうだ。そんなに私の言葉に共感してくれたのかな?少し違和感を覚えたものの、私はさほど気にはしなかった。

 

「パーティと私とで、なにか関係が?」

「うん、パーティの準備に人手が不足しているみたいで、少しばかり手伝ってもらえると有難くてね」

「わかった!」

「もしかしたら、買い出しに外出をお願いする事もあるかもしれない」

「別にいいけど?」

 

 それぐらいならお安い御用だよね!宮殿内にいるだけじゃ息が詰まるし、却って外に出られてラッキーだって。

 

「その時にはちょっと調査の仕事もしてもらえるかな?」

「え?なにすんの?」

「うん、デモで負傷した連中から情報を聞き出して欲しいんだ」

「え?直接聞き出すの?それって無理なんじゃ?」

「弱っているところをつけ込んで吐かせる作戦だよ」

「へ?」

 

 そんな簡単に吐かないっしょ?

 

「今回のターゲットは不要に税金を徴収させられた濃夫達からの情報を得て欲しいんだ」


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