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第四十四話「窮余の一策とは逆襲か!?」

 顔を蒼白として固まっている輩は…そう、あのザクロとポーカーゲームをプレイしていた「つぶらな瞳のおっさん」だった!

 

「な、なんでアンタがここに!ってか、なんで私をさらおうとしたのよ!?」

 

 私が詰問をぶつけたが、おっさんは固まったままだった。あ~そうだ!

 

「ザクロ、剣閉まってよね!」

 

 剣を突きつけていたのはワインレッド色の長い髪をもつザクロだった。やっと戻って来て助けてくれたのだだが、一般市民に騎士の長剣は刺激が強いっての!


 私の言葉にザクロは(意外にも)素直に剣を閉まった。私は咄嗟につぶらなおっさんから離れる。そしてザクロは大の字で伸びている輩達の覆っている顔の布を剣で器用に裂いた。

 

 ―――あ!

 

 素顔を現した輩達に見覚えがあった。みなトパーズのカジノで見たおっさん達だ!今日、家を訪問した時は不在だったのに、一体奴等はなにやってんのよ!

 

 ―――数分後。

 

 おっさん達は揃いも揃って並んで正座をしていた。ザクロから命じられたのだが、少なからず彼等は痛手を負っているのに、可哀想な気も(痛手を負わせた私が言うのもなんだけどさ)はたから見る人には、どんな風に映るのか…。

 

「洗いざらしに吐いてもらおうか」

 

 今のザクロは無表情だけど、殺気立っているオーラが半端ない。おっさん達からしたら、閻魔大王えんまだいおうにしか見えないだろう。

 

「なんで私をさらおうとしたのよ!」

 

 それが一番知りたい理由だ。

 

「…………………………」

 

 だけど、おっさん達は怖がってビビっているのか口を割ろうとはしなく、ただ俯いているだけだった。

 

「話さないのなら、お前達一人ずつ、ギリチョンにして裁いていくか」

「「「「「「!?」」」」」」

 

 ザクロ以外の人間は刹那凍り付いた!ギリチョンって、もしや「首のちょん切り」ですか!?

 

「わぁ~やめてくれ!わかったよ、話すから!」

 

 つぶらな瞳のおっさんが観念して口を開いた。

 

「とっとと話せ」

「オレ等は……その金が必要で。カジノで大損して生活が困難になったんだ。だからその娘から金を巻き上げようとしただけなんだ」

「罪犯さないで、仕事で稼ぎなさいよね!」

「それが出来れば苦労しない」

 

 つぶらなおっさんの言葉に、他のおっさん達も切なる表情へと変わる。

 

「お前達にそうさせている輩は誰だ?すぐに答えぬのなら、ここで首をぶった切るまでだ」

「「「「「ひぃぃぃ!!」」」」」

 

 ―――ザ、ザクロ、アンタ…。ストレートに迫り過ぎているし、明らかに脅迫しているよね!シャークスの作戦では生活に行き詰った彼等に、優しく手を差し伸べ、黒幕の正体を暴く筈じゃ!

 

 おっさん達の中に、泡を吹いて死にかけている人がいるよ。

 

「わーわー!ま、待て!!それは知らねーんだ!」

「そうか。じゃぁ、オマエからいこうか」

 

 ザクロはいきなりつぶらな瞳のおっさんの前まで行き、なんと剣を振るい被った!

 

「ひぃぃぃ!!やめてくれぇええ―――!!本当なんだ!!確かにオレ等はある人物から、依頼されて仕事を休業していたのは確かだ!でもその相手の素性はわからねーんだよ!」

「なんでだ?依頼を受けた際に、顔を合わせているだろう?」

「それが……相手は目以外の顔から頭上までヴェールを覆っていて、わからなかったんだ」

「そうだそうだ、それは本当だ!」

「オレ達は誰一人、ソイツの顔を見ていない!」

 

 つぶらなおっさんのフォローなのか自分達の命を守ろうとしているのか他のおっさん達も強調してきた。なんという事なの!黒幕の素性を誰一人と見ていないなんて!期待が大きかった分、絶望感も強くて、私はヘロヘロと力が抜けていく。

 

「そんな素性のわからん相手の要望をよく呑んだな」

 

 でもザクロは至って冷静に詰問を続ける。確かに言われてみれば、そんな怪しい格好をした人の言う事聞く方がおかしいよね!

 

「それは……金をもらっていたんだ。休業と引き換えに定期的に受け取っていた」

「それで夜な夜なあんなカジノなんて行けていたのね!」

 

 このぐーたら達めが!

 

「オレ等は賭け事で金銭に余裕がなくなり、金を頂戴していた人物に、さらに金額の要求を出したんだ。だけど…」

「相手はそれを呑まなかったんだな」

「そうなんだ。だったら、仕事を再開させろと言ったんだが、それは契約違反だと返されて。それじゃ、オレ等の食い扶持ぶちがなくなると焦って、思わず訴えてやるぞと相手を脅したんだ。そしたら…」

 

 おっさん全員が一斉に蒼白となった。

 

「ローゼンカバリア女神の天罰が下ると言われたんだ!」

「ローゼンカバリア女神の天罰?」

 

 おっさん達とは違って、私は思いっきししかめっ面をした。

 

 ―――なにそれ?

 

「オレ等は女神の天罰なんて鵜呑みにしなかった。それで今日から殆どのヤツ等が仕事を再開したんだ。でも仕事をしている途中に、連中の次々が原因不明で倒れ、運ばれて行った」

 

 それを聞いて、私はピンッときた!

 

「もしかして今日、やたら病院に運ばれている人達がいるのって…」

「そうだ!女神の呪いにかかったオレ等の仲間だ!だからここにいるオレ達は天罰を下されるならって」

「それで私をかっさろうと?」

「騎士と娘がオレ等の家を訪れていると耳にして、これは只事ではないと様子を窺っていたんだ。そしたら昨日までカジノにいた成金男とその連れの女だと知って。しかもまさか成金がよりによって黒の騎士だったとは!」

「だからなんだ?」

 

 冷たいなー、ザクロ。女性だけでなくて、本当は人間嫌いなんじゃないの?そんなザクロにでも、背水の陣であるおっさん達には救いの手に見えるのだろう。彼等は切実に助けを求める声を上げた。

 

「オレ達に残された道はその娘から金を巻き上げる事しか思い浮かばなかったんだよ!わかってくれよ!」

「黒幕を知らぬオマエ達など用はない。野垂れ死のうと勝手だ」

「わぁぁああ!そんな事言わずになんとかしてくれ」

「オレに出来るといったら、楽にさせてやる事ぐらいだ」

「え?それって…もしかして!?ひぃぃいいい!!」

 

 あ~、もうなんだか頭がガンガンとしてきた…。


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