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第四十二話「なに目的ですか!?」

 ―――う~、躯の節々が痛いっての!

 

 ポーカーゲームで見事勝ち抜いた翌日、私は躯の鈍痛に悩まされていた。だってあんな大量のチップ袋を担がなきゃならなくて、そりゃこんなんヤラれて当たり前だっての!


 私は心底ザクロを恨んだ。ヤツはほんの少しでも持ってくれなかったからね!いくら女嫌いだからって、人としての最低限の優しさもないなんて。


 とはいえ、今日もまたザクロと一緒に出掛けなければならかった。今日は例の商人や漁師達の元へ行き、黒幕の正体を突き止めなければ。ザクロと勝負して賭けに負けた彼等は途方に暮れている筈。


 まず彼等は黒幕に助けを求めるだろうと予測するけど、シャークスの読みの通りであれば、黒幕は彼等に救いの手を差し延べず、仕事までさせずだろうと。


 完全に生きる道を閉ざされ弱った彼等に、私達が救いの手を差し延べ、そして黒幕の正体を明かしてもらう目的があるのだ。きっと今回で黒幕が誰か明るみになるだろう。そしたら、とっとと掴まえて……その後は…。


 私の心は一気にパァ~と明るくなる!だってこれが成功したら、小さい頃からずっと夢だった女騎士への道が開けるんだもん!こんな嬉しい事はないよ!まだ成功の結果が出ていないけど、既に私はその気になってしまっていた。


 ―――昼食後。


 昼食を食べ終えてから、ザクロと合流し宮殿を出た。ザクロってば思いっきし黒の騎士様の制服を身に纏っているから、目立って仕方ない。


 目的のおっさん達の所には馬を走らせる事になった。ザクロの馬は毛並みが美しく、見るからに気高い黒の馬だった。本人に似てプライドが高そうだ。私にも馬が用意されて(茶色いクリクリお目々の可愛らしい馬だ)ザクロと共に走り出した。 


 ―――数時間後。

 

「妙だ」

「どうしてだろう?」

 

 中央に大きな噴水がある広場で、私とザクロは立ちすくんでいた。宮殿から出発して、私達は既に目的のおっさん数十人の家を訪ねに行った。しかし、不思議な事に誰にも会えずにいたのだ。おっさん達は夜中に遊び呆けていたから、昼頃までは爆睡をしている筈なんだけど…。

 

「生きる金が無くなって集団で心中でもしたのかもな」

「ちょっと、縁起でもない!」

 

 サラリとザクロからとんでもない言葉が飛んできたから、私は叱咤して返す。そんな時だ。

 

「また運ばれたらしいわよ」

「え?そうなの?だってもう数十人は運ばれているじゃない?食中毒じゃないんでしょ?」

「ん~、それが原因はわからずみたいよ」

「えぇー!まだわからないの?こっわいわ~」

 

 まただ!女性二人の会話を耳にした私は眉をひそめた。この手の会話、今日はもう何回も耳にしていた。「運ばれた」というのは「病院」へという事らしい。どうやら急病の患者が続出しているらしい。

 

 なにか食中毒らしきウィルスが流行ってしまっているのではないかと、街中のあっちこっちで騒がれているのだ。

 

「原因不明って気味が悪いわね」

 

 私は一人で呟くように吐露すると、

 

「奴等が自害し損ねたのかもな」

「だから不吉な事をサラリと言うな!」

 

 またしてもザクロはとんでもない事を口に出しやがった!全く人の命をなんだと思っているのよ!

 

「これからどうするのよ!」

 

 とりあえずは訪れるべきおっさん達20名全員の家には足を運んだ。これからまた一人一人の家を回るのはさすがにしんどいな。

 

「……寄る所がある。暫くここにいろ」

「は?」

 

 突拍子のないザクロの言葉に、私は目が点になる。

 

「なに?いきなり?」

「すぐに戻る。ここから動くなよ」

「はぁああ!?」

 

 んな身勝手な!私は文句を言ってやりたかたけど、ザクロはすぐに私に背を向け、その場から離れてしまった。

 

 ―――なんなの!あの自分勝手さ!

 

 私は怒る気も失せて心底呆れた。

 

 ―――仕方ないなー。

 

 下手にここから離れても知らない土地だから迷子になるだけだし、大人しく待つか。私は噴水前のベンチに腰かけようとした時だった。

 

「よぉ、お嬢ちゃん、ちょっと付き合ってもらおうじゃないか!」

 

 ―――え?

 

 気が付いた時には背後から喉元にナイフを突きつけられていて、目の前にはナイフを持ち、目以外の顔の部分を布で覆い隠した数名の輩達に囲まれていた!


「なによ!アンタ達!」

「おっと!下手に話すと、喉元のナイフがぶっ刺さるぜ!」

「…っ」

 

 ―――な、なんなの!コイツ等は!?

 

 突き付けられている鋭利な刃物に目を奪われ、心臓はバックンバックン、足がガクガクと震える。

 

 ―――なんで私狙われているの!?

 

「悪いが、大人しくオレ達と一緒に来てもらおうか」

 

 背後からナイフを突き付けている輩から、無理矢理に腕を引っ張られる。私は嫌悪感からか、

 

「ぐあっ!」

 

 思わず掴まれていないもう一方の腕で後ろの輩に肘鉄を食らわせた。思わぬ衝撃に輩はよろめき、突き付けていたナイフを地面に落とした。私はしめたと思い、咄嗟にそのナイフを拾い上げて輩から離れる!

 

「なにやってんだ!あの成金の黒騎士が戻って来る前に、早く小娘をかっさらわなきゃなんねーってのに!」

 

 私にナイフを奪われた輩は仲間から罵声を上げられる!

 

 ―――かっさらう?なんで!?


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