第四話「正夢じゃないですよね?」
―――あれ?
眩しい光が見えた。妙に神々しく感じて「あー、ここは天国なのか」と率直に思えた。その内、視界と意識が良好になってきた私は…。反射的にガバッと躯を起こす。
「私?」
どうやら、ベッドの中で寝ていたのは間違いない。でも……確か確か!昨日、昼間に出会った騎士様が夜這いしに来て!?ハッと我に返るように自分の服装を確認する。
すると……?
寝巻は乱れた様子が……なかったのだ。
「あれ?あれれ?」
確か昨日、でも……記憶がない!はぁはぁと気持ち悪い息と今にも食い千切りそうな気色悪い恍惚とした表情、極めつけは「罵ってくれ!!」と叫んで懇願するド変態ドM騎士様に襲われそうになったんだよね!?恐怖のあまり記憶がぶっ飛んでしまったの!?思い出しただけでも大きな身震いをするほどの恐怖体験だった。
だけど、部屋の周りを見渡す限り、これといった変化は窺えず。部屋の内鍵もかかっているし、もしかして……昨日の悪夢は実は夢だったのぉ!?私は心底絶叫した。あんなリアルな恐怖体験ってありなの!?
確かに部屋の扉も家の入口の扉にも鍵はかかっていた。鍵穴は頑丈な作りで例え鍵師でも容易には開けられない。だから、騎士様が入って来れるわけがない!という事はやっぱり夢となるわけだけど…。
「あ~~~~~~~」
頭をクシャクシャしたい衝動に駆られる。だって、せっかく超美形騎士様に出会えたのに、出会いがインパクトありすぎたのか、なにもあんなド変態に豹変した姿で夢に出す事なかったよね。次に会った時に彼の印象がぁ~。私は酷く自己嫌悪に走った。
「申し訳ございましぇぇ~~~ん」
そして心の中で土下座をし、深々と頭を下げた。
……………………………。
テンションは下がったままだったけど、とりあえず私服に着替えて、自分がいる二階の部屋から下の階へと移動した。すると?
「……………………………」
居間の扉から会話が聞こえてきた。
「こっちの村ではここ最近なにか異変があった?」
「異変?なんの?」
「いや困るような出来事というか」
「そっちでなにかあったのか?」
「それは機密情報で言えないよ」
「なんだ、漠然としてわからねーな」
―――なんだろう?
父さんの声ともう一人は7番目の兄のイーグルス兄さんかな?居間の扉を開けると、間違いない。イーグルス兄さんの姿が目に入った。父似の紺色の髪はバシッと短く、顔つきは鋭い眼差しでワイルド。でも騎士様だけあって体格はイイ。
「イーグルス兄さん、帰って来てたの?」
私は兄さんの方へと駆け寄った。
「あぁ、スターリー。元気そうだな」
「兄さんこそ」
「オレは毎度の事だ」
「確かに。今日はここに泊まっていくの?」
「まさか、用があって立ち寄っただけだ」
確かに騎士様の制服を着ているところをみると、勤務途中に寄って来たんだろう。なぁーんだ、騎士として勤める兄達は王宮から特別に用意される宿に住んでいる。その為、実家には滅多に帰っては来ないのだ!
それに6番目の兄から上は結婚をして首都に家を持っている為、余計ここには帰って来ない!だから、たまに顔を覗かせてもらえると、とても嬉しかったりするのだ!
「あ!イーグルス兄さん、制服の色が変わったよね?」
「お、気付いてくれたか?父さんはさっぱだったけどな」
「悪かったな!」
何気に不満を吐露した兄さんに父さんはぶっきら棒に返した。
「昇格したの?しかも白の制服でしょ?凄いね!」
騎士様は制服の色によって位が異なる。下から緑→青→赤→白&黒の順となる。白と黒は同じ位なのだが、仕事内容が異なる、白は宮殿の衛兵士、黒は軍人と言えばわかるだろうか?兄さんは名誉な事に最高地位の「衛兵騎士様」だ。
昨日の騎士様は最高地位の「軍人騎士様」という事になる。あの美顔で軍人とはちょっとね~。血で汚れるイメージがない。むしろ白の騎士様の方がピッタリだな。でもあの足を押し付けただけで相手をノックアウトさせた行為はやっぱ黒タイプなのかな?
「やっとここまで上り詰めたよ」
「うんうん、凄い凄い」
私は心底自分の兄を誇りに思った!だってこれで9人いる兄の内、7人もが最高地位の騎士様だもんね!兄弟でも競い合っているのがイイ刺激になっているんだろうな。
「そうだ。もうすぐ来客がある」
兄さんは思い出したかのように、私と父さんに伝えた。
「お客さん?」
「そう。そちらの方がいらっしゃる用でオレはここに来たってわけ」
「へー」
なんか兄さんの言い方からして、お偉いさんが来る感じ?ヤバいな!私、身だしなみが良くない!
「じゃぁ、急いで身だしなみを整えてこようっと」
私が身を翻して居間の扉へと向かおうとした時だった。
―――コンコンコンッ。
「こんにちは」
入口の扉からノックする音が聞こえ、すぐに一人の男性の声が聞えてきた。
「あぁ、客人様が来られたみたいだ」
兄さんは慌てたように居間から出て入口へと向かった。私はその間に身だしなみを整えに、自分の部屋へと戻ろうと、階段を上がろうとした時だった。
「また会えたね、スターリー」
「え?」
―――今の声って?
突然に背後から声をかけられた。今の…声って?聞き覚えのある耳が痺れそうなぐらい素敵な低音ヴォイス…それは…。
「え?…え?」
後ろへと振り返ると。私は目をみるみる見開いた。目に映った人物はプラチナブロンドの髪にマリーンブルー色の瞳をした超美形騎士様、彼は黒の制服を纏って神々しく立っていた。
私は開いた口が塞がらなかった。それもそうなるよ、だってだってだって、目の前の彼は昨日、昼間出会った騎士様で、尚且つ例の悪夢に現れたド変態ドM騎士様だったからだ!