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第三十八話「キラキラは名物化となっております」

「「うぉぉおおおお!!」」


 なんとも言えない雄叫びが館内に響き渡る。これはくるくるのおっさんの声……と混ざり合って、もう一人狂ったように叫び声を上げる人物がいた!それはザクロを狙うあっちの系の奇抜な男性だった!


 そう、実はザクロの出した数字は「9」であり、この時点でくるくるのおっさんに対しての勝利が決まった!私は思わず「やったぁー!!」と両手を万歳にして喜んだ。


「わぁあああ!!」


 ギャラリー達からも一際高い歓声が上がり、他も客人達からも大きな注目を浴びる。


「おぉぉぉぉ、負ーけーたぁぁぁ!!クッソォー!!」

「あ~ん、美形お兄さんとの甘い夜がぁああ―――!!」


 くるくるおっさんの悔し声はわかるけど、奇抜な男性の嘆く声は……いらんよね。しかも正座の体勢で顔を伏せ、拳を床に叩きつけて嘆く姿はなんとも言えず醜い…いや見るに耐えなかった。


 さてそんな雄叫びが飛び舞う中、ゲームは最後のジョーカーの赤い玉が投げられた。ホイールの回転と逆方向に勢い良く回る赤い玉は……なんと「赤の21」だった。という事は…ザクロはくるくるおっさんの賭けたすべてのチップを手に出来たのだ!


「わぁぁあああ!!」


 またしても熱い歓声が上がった。私も「うぁ~い」と、また万歳をして喜んだ。だってさっきまで、もしかしたら全額負けの悲しい結末を迎えるかもしれないと思っていたのに、おっさんにも勝利して賭け金すべてが戻って、さらに相手の全額まで手に入れられたなんて!まさに勝利の女神はザクロに微笑んだのだ!


「良かったね」


 歓喜に満ち溢れる中、隣から声をかけられた。それは例のボーイだ。彼も満面の笑顔を向けていて、心底喜んでくれているように思えた。そして、


「え?」

「これは“勝利の女神”というカクテルだよ」


 ボーイはキラキラ眩い光を放つ黄金色のカクテルを差し出してくれた。思わず目を奪われるほど輝かしく、まさに「勝利の女神」にふさわしい名のカクテルだ。


「有難うございます」


 私がお礼を言いカクテルを受け取ると、ボーイの彼はその場から去って行った。そしてザクロ前にはざっくざっくのチップが出された。


 ―――すっご!


 相当なチップの量だと思ったけど、目にすると重みが伝わるな。私が関心している間に、ザクロがこっちに視線を飛ばしてきているのがわかった。


 ―――そうだ、ザクロの傍に行かなきゃ!


 私はギャラリーを掻き分け、ザクロの前へと寄った!私が目の前まで来ると、ザクロはいきなり立ち上がって?その場から立ち上がろうとしてたから、


「え?ちょっと!チップ持って行きなよ!」


 なんで大事なモノを置いていこうとしているんだ!ほんっと変なヤツ!私が不穏な表情をして伝えると、


「それ、オマエの仕事…」


 ボソッとザクロは呟いた。


「は?」


 なにが私の仕事だっての?私が怪訝な顔をしている間にもザクロはカリスマスターの如くギャラリー達に囲まれてしまい、結局大量のチップは私が運ぶ羽目となった…。


 *★*――――*★* *★*――――*★*


 カジノの調査初日から、はや数日が経ち、あれから毎夜、私とザクロはマンモスカジノ「トパーズ」へと足を運んでいた。ザクロは初日のルーレットゲームのテーブルから離れた後も、続いてサイコロやダーツ、はたまたトランプといったゲームにも参加して、圧勝を見せていた(あんぐり!)。


 そして気が付いたら…いや当然と言うべきか、ザクロは有名人化となっていた。超美形な若人が、毎晩大金を稼いでいたら、名物になってしまうのは当たり前だった。中にはヤラセではないかと疑う輩もいたけど、あんな有名なカジノでイカサマは有り得ないんだって。


 例えば、ルーレットで狙ったところに玉を投げ込める、そんなディーラーがいたとしても、カジノ運営側にとって、そのディーラーは危険極まりない人物となり、雇ったりはしない。何故なら、そのディーラーは自分の身内や友人が、そこのカジノに客として遊びに来た際に、故意に彼らに勝たせる事が出来てしまうからだ。


 トランプゲームにしても、故意に客が不利になるようなシャッフル技術をもつディーラーがいたとしよう。しかし、シャッフルの最後には必ず客がカットするルールになっているし、またゲーム途中でも、客は好きなようにカードの流れを変える事も出来るし、シャッフル技術はまったく意味をなさない事になる。


 次にクラップスのサイコロゲームについても、サイコロはすべて透明な樹脂で作られていて、これは「中に何も仕掛けられていない。材質や重量のバランスは均一である」 事を示しているし、また表面の数字は絶対に凹ませては作られていない。これは「わずかな重量配分の不均一性すら排除してる」という意思だ。


 という事で、こういった様々な配慮の上でゲームは行われている為、容易にイカサマ出来ない仕組みになっているのだ!それで安心してゲームに打ち込めているのはよし!と、言いたいところなのだが…、ひとつ私にとっての大きな不満がある。それは…。


 何故かチップの持ち運びは私がしている事だった!ザクロが勝利を得るのは正直嬉しいし、喜ばしい事だけど、その分大量のチップが手に入る。それを毎回、私が持ち運ぶのだ!私はその為だけに来ているわけじゃないっての!


 そして調査(といっても今のところゲームを行っているだけだけど)5日目の今日、私とザクロはいつもの通り、トパーズのカジノへとやって来た…。


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