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第三十二話「煌びやかなマンモス地帯は刺激が強すぎます」

 私は今、馬車の中で縮こまっていた。対面に座るザクロがいるからではない。だってこの馬車、内装まで金銀宝石とキラキラの上に、腰かける椅子もクラウンなんだもん!あ~、一般市民の私には落ち着かない。


 しかし、目の前のザクロは優雅に脚と腕を組み、いかにも慣れていますという成金オーラを放っていた。コイツは上位の黒の騎士様だけど、家柄はボンボンの可能性ありとみた。賭け事をした経験があるって、お金持ちじゃないと出来ないもんね。


 それに、この無駄に華やかな服装も何気に様になっているし。まぁ、ヤツの家柄の事なんてどうでもいいけど!にしてもボンボンのくせに騎士様になるとは、なにか複雑な事情が?あー、格式ある堅苦しい生活に疲れて逃げて来たんだろうな。


 しかも、ちゃっかり上位の黒の騎士様なんて。性格上、問題ありまくりだけど、実力はあるって事だよね!あ~、黒の騎士を目指すつもりでいるけど、シャークスだけじゃなくて、コイツの下でもやらなくちゃならないんだよね。荷が重い!


「さっきからなに見てんだ?虫唾が走るからそれ以上見るな」


 そんなこんなん思っている間に、ザクロからまた不快な言葉が飛んできた。


「見てないわよ!」

「見ていた。シャークスの婚約者だからといってイイ気になるなよ」

「いい気になってないし!それに私はシャークスの婚約者じゃないから!」

「変な所で謙遜するな。オマエが毎日シャークスと夜な夜な過ごしているのはヤツの口から聞いている」

「は?なにそれ!私は全くもって一人で寝てるっての!」


 私は相当鼻息を荒くしてヤツを睨み上げた。夜な夜な過ごしているって、なんの話だよ!シャークス、また話を捏造しやがって!もう絶対に許せない!


「夜のオマエは一段と罵りを上げ、精神的にも肉体的にも快楽を与えていると、ヤツから生々しい話をウザイほど聞かされている」


 私はガチの姿を見せ、シャークスとはなにもないと応えたにも関わらず、ザクロはさらにとんでもない事を口走ってきた。


「真に受けるな!ウザイほど聞かされているなら話させるな!つぅか私、シャークスの事罵ってないし!」

「アイツのリアルな表情を見れば嘘だと思えない」


 ザクロは私に対し、疑念の眼差しを見せ言葉を続ける。コイツ、ガチに言っている!どう考えてもシャークスの言葉は狂気じみているのに、なに信じてんだ!


「ヤツの想像に過ぎないっての!なんなのよ、アンタ!変なところを真に受けてさ!」

「シャークスは黒騎士の長だ。責任感も強く誠実だ」

「アレのどこが誠実だ!長を敬う心は素晴らしいけど、虚言を信じるなっての!」


 なんなのよ、コイツは!何気にシャークスの事、敬って慕っていたのね。だからと言ってシャークスの虚言を信じるなっての!私は思わず立ち上がってまで、力説しちゃったよ。


 でもそんな私をザクロは冷めた目で見た後、すぐに視線を逸らした。コイツ、絶対に私の言葉を信じてないわ。なんかシャークスに対しての絶対感に、悍ましさを感じるっての!


 ………………………………。


 暫くの間、機嫌を損ねていた私はザクロと話をするのが不快で黙っていたけれど、とは言っても、これ以上の沈黙もなんだかなーと思っていると、自然に口を開いてしまった。


「カジノ行って、どんな賭け事するの?」

「知らなくていい。オマエは見ているだけでいいと、シャークスからも言われているだろう」


 カチン!人がせっかくまともな質問しているんだから、まともに答えろっての!なんでコイツはいちいち人をいからせる言葉しか吐かないんだろう!


「知ってた方がいいじゃない。調査の参考になるんだから」

「オマエが知ったところで全くもって参考にならない。それよりも今日の帰りは明け方となる。オマエと夜な夜な過ごせなかったと嘆く明日からのシャークスが怖い。ヤツの深い悲しみが仕事に支障出ないよう、どうすればいいのか、そっちを考えろ」

「調査と全く関係ないっての!」


 もう!長のシャークスがシャークスなら、そのもとで働くコイツも狂気じみているっての!


 *★*――――*★* *★*――――*★*


 結局カジノではどんな賭け事があるのか知らされずに、マンモスカジノ「トパーズ」が建っている繁華街へとやって来てしまった。馬車から下りて「トパーズ」の外観を目にして、私は瞬時に固まった。


 色々な思いがあったけど、一言でいうなら「無駄に豪奢」だ!なにせこの地区へと入った時から賑やかさと華やかさは半端なかったのだ。建物はキラキラ!七色以上の光のイルミネーションが放たれ、人の多さにあっぱれ!


 出店が並び、居酒屋はオープンテラスがメイン。それに演奏や劇、はたまた手品などの華やかなショーイベントが行われている。それに多くの客人から感嘆の声が響いていた。時には奇声らしきものも聞えてきていた。


 確かに首都のジョンブリアンは昼間でも賑わいぶりは凄まじいけど、この地区の夜は想像以上にヤバイ。裏の首都を見てしまったような、昼間では想像がつかない光景だ。首都に来てから夜には外出した事がなかったもんね。


 正直、田舎娘の私には昼間の首都の光景さえ空気に馴染めていないのに、この夜の街はより一層と違和感を覚えた。そんな中でのマンモスカジノ「トパーズ」だ。この建物は半端ない!


 一体、なんヘクタールの敷地を占めているんだ。巨大なドーム型の形から、いくつものゴシック調の尖頭アーチがデデーンと立ち並び、ここはあの上品な首都ジョンブリアンですか?と目を疑ってしまうほど、超キラキラのゴールドに光っていた。


 あ~、私はこの建物だけで大きな圧迫感に押されて、これから中での事柄が上手く出来るのだろうかと不安に尽きっていたのだった…。

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