第三十一話「なんちゃって成金騎士とカジノへ」
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例のカジノへ潜入する日が来た。潜入先は首都ジョンブリアンの中でも、マンモスカジノと呼ばれる「トパーズ」だ。しかし正直な話、無事に調査が成し遂げられるかどうか不安であった。華やかで不慣れな場所というのもあるけど、なんたって、あの黒の騎士「ザクロ」と二人での調査なんだもん!
ヤツは一見タラシに見えるけど、実際は極度の女嫌い!なにかとつけては私に暴言を吐く不快極まりのないヤロウだ。私達はお互い口を開けば言い合いになってばかりの、いわば「不仲」なのだ…。
今回の調査に関してはザクロの強運は必須であり、私も女騎士への道の為にはヤツと協力してやり遂げなければならない。それに…、今回の調査から上手く情報を得られれば、黒幕の正体が掴めるかもしれないのだ。私情に捉われて大きな収穫を逃すわけにはいかない。
―――コンコンコン。
自室でシャークス達が来るのを待っていると、扉からノックの音が聞こえた。きっとシャークス達が迎えに来たのだろう。
「はーい!」
私は素早く扉を開けた。すると…。
「へ?」
扉を開けて目に映ったモノが…。やたらキラキラと神々しいオーラを放った人物であったのだ!それは……「ザクロ」だ!元からヤツはキラキラと人間離れした華やかさを持ち合わせていたが、今日は格好が格好だ!いつもの黒の騎士様のシックな制服とは正反対の…。
「なんじゃ。そりゃ!どこの成金マンで!?」
私は思わず心の中で思った感想を口に出してしまった。だってザクロの服装が顔まで覆っちゃうぞという立襟シャツの上にベストを羽織り、さらに袖口や丈のラインに美しい刺繍やスパンコールといった煌びやかに装飾されたジュストコールを身に纏っていたのだ。
そして膝丈のキュロットにフワフワの羽が付いた長つば反り帽子を被り、全体的にゴールドの色で飾った、このゴテゴテしい姿を見て私は開いた口が塞がらなかった。
「似合ってるよね~?」
ザクロの後ろから、ヒョッコリと現れたシャークスはまるで自分事のように、自慢げに聞いてきた。
「本当はこれにさらにキラキラのマントを羽織らせようとしたんだけど、さすがに見苦しいってザクロに言われて諦めたんだ」
今のこれでも十分見苦しいけど?無駄に派手だろ!元々ヤツが絢爛な美貌をもっているのに、それをさらに際立てるこの衣装は貴族というより、どこの王族様で?って思わせるぐらいのゴージャスさだった。
しかし、当の本人は実に面白くないと、至ってブーくれたような複雑な表情をしていた。きっとシャークスにおもしろ可笑しく着せ替えさせられたんだろうな。その様子を想像した私は無意識に顔が緩んでしまったようで、
「そのなんの特徴もない顔を印象深くしてやろうか?」
ザクロからこんな言葉を投げられた。なんの特徴もないって?私の顔の事か!しかも「印象深い」ってどういう意味だよ!
「ザクロ、女のコに対して乱暴をにおわす言葉を吐くな」
私が意味がわからず黙然としていると、いつの間にかヤツの隣りに現れたクローバーさんから叱咤の言葉が入った。「乱暴」ってコイツ、人の顔を殴ろうとしていたのか!なんてヤツだ!冗談でもこのバイオレンスな発言が信じられん!
「そうだよ、ザクロ。何度も言っているけど、スターリーはオレのフィアンセだ。あまり言葉が過ぎると、リア充を求める女性達の前に君を素っ裸にしてゴチしてもらうよ?」
シャークス、私からも言わせてもらおう!何度も言うが貴様の婚約者になった覚えはないし、いちいち制裁の内容も笑えない!シャークスが言うと、冗談には聞こえないっての!あの自害事件も事もあるしさ!
シャークスとクローバーさん二人から叱咤されたザクロは舌打ちをして顔を逸らした。元は貴様の発言が問題なんだからな。私はざまぁと思いながら、ヤツを冷たい目で見ていた。
「スターリー、もう用意は出来ているよね?」
「うん」
シャークスから出掛ける準備をするように言われていたもんね。私は彼等が来る前にはバッチシと準備し終えていた。
「思った以上に似合っていて可愛いね♪」
「そ、そう?」
シャークスの言葉に素直に喜ぶ私だった。カジノと用意された白いワンピースドレスにパープル色のストールを羽織り、白のミュールを穿いたノーブルな正装姿をしていたのだ。
「そのミュールのヒールで踏みつけられて死んじゃえ!って言われたら、オレ一瞬でエクスタシーに至る自信あるよ♪」
「キモイッ!もっと違う事に自信を使えっての!」
私は部屋の扉を閉め、そのままシャークス達の後に続いた…。
*★*――――*★* *★*――――*★*
「なにこれ!」
私が驚いているのはカジノの建物ではなく………カジノまで運んでもらう馬だった。
「なにって馬車だ。そんな事も知らなかったのか」
ザクロから深い溜め息が漏れた。いやいやいや、馬車ぐらい知ってるから!私が驚いたのはこの馬車だ!4頭立ての4輪大型、全体がふんだんに金に覆われていて、縁取りには繊細な模様のレリーフが施されている。
極めつけは乗車する屋根に鳳の金の彫刻が立っている絢爛豪華な乗り物だった。どこまでも王道で行くんだ!私はポカ~ンと口が開いてしまっていた。
「とんだ田舎娘だな」
私がザクロの言葉に応えないでいたら、ヤツがさらに言葉を付加してきやがった。
「馬車ぐらい知ってるっての!あまりのキラキラの馬車で驚いていただけでしょ!」
「まぁまぁ、二人共仲良くね」
「これから二人でカジノに向かい、調査を始めんだ。始める前から口論して肝心な調査を怠るなよ?成金はフリでも賭けは本気だ。しかも相当な多額を賭ける。いくらザクロに腕があるといえど、慎重さと冷静さを忘れるな」
私がザクロに食って答えた後すぐに、シャークスから緩和の言葉が入り、クローバーさんからは仕事だから真面目にしろ命令が下った。
「はーい」
「………………………………」
私はクローバーさんお言葉に素直に応じたけど、ザクロは返答無しだった。なんか本当にこんなヤツと上手く調査が出来るのかと改めて不安になってきたよ。
「スターリー、最後にこれだけは気をつけて」
「なに?」
シャークスがとても真剣な表情をしている。なにか大きな忠告があるのだろうか。
「…ザクロに心を許さないでくれ。万が一の事があったら、オレは死…「行ってきまぁーす!」」
私はシャークスの言葉を最後まで聞かずに馬車へと向かう。
「ザクロもくれぐれもオレのスターリーに手を出さないでくれよ」
当然ザクロもシャークスの言葉をフルシカトして、馬車の中へと乗り込んだのだった…。
次話、いよいよカジノ内部へと潜入します!なにが待ち受けているのでしょうか?お楽しみぃ~♪