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第二十五話「作戦は成功を遂げられるのか」

 私は渋々な思いに駆られながら、追加オーダーのお酒を取りに行く。さっき目的の乗組員達から、せっかく重要な話が聞けるかもって時だったのに。私はそそくさ追加してきたお酒をテーブルへとお置いて、再び乗組員のおっさん達の所へと向かう。


 大太りのおっちゃん、スキンヘッド、鼻毛ボーボーのおっちゃん等は顔を赤くして、ろれつが回らんといった危ない表情をしつつも、声を潜めながら会話しているようだった。私は出来るだけ近寄ってみると、こんな内容が耳に入ってきた。


「あれからなにも言われちゃいねーよな?」

「そりゃそうだ。あの方からの指示通りにしてりゃ、今後も安心だよ」

「当初はヒヤヒヤだったけど、今となっちゃ、こんな毎晩酒が飲める生活が出来るようになったんだ。あの方には感謝し切れねーな」

「それだけオレ等は危ない橋を渡って協力したんだ。この生活は当たりめーさ」


 ん?今の会話って「あの方」?って誰の事?それに「協力」って?これって……絶対誰かに協力をして、その引き換えに、今の酒浸りの生活をしているって意味に聞こえますけど?協力ってまさか……虚言をした事じゃ。


 それってシャークスが思っていた通りじゃない!あ~、その協力を得てきた黒幕はどいつなんだぁぁあああ!名前を出してくれ!私はさらに話を聞こうと彼等に近づこうとした。でもきっとまたどっかからか追加オーダーの邪魔が入るな~。


 私はなんとか話しの続きを聞けるよう頭をフル回転させる。……そうだ、私は心の底からゴメンナサイと深く謝りながら、乗組員達の隣の席で飲んでいるお客の料理を何気な~く床へと落とした。


 ―――食べ物を粗末にして本当に本当にゴメンナサイ!


 ドサドサドサッと思ったよりも盛大に床に落ちた料理に、お客と一緒に私は唖然としてしまったけど、呆けている場合ではない。


「やっだ~、本当の申し訳ございません!すぐに新しい物をお持ちしますから~」


 可愛いコぶりっ子をし、甘えた顔でお客へ謝る。それからすぐに料理を拾おうと腰を落とした。拾いながら、隣の席の乗組員達の会話に聞き耳を立てる。


「オレ等の後にも次々と勃発していたみたいだな」

「そうだな。商人、漁師、農夫等が騒動を起こし、今では立派にデモまで起こしてやがる」


 おぉ~、なんとおっさん達は自分達以外のデモを起こした連中の話までしているではないか。いいぞいいぞ、このまま一気に証拠を掴んでやろう。私は高鳴る鼓動を必死に抑えながら、さらに耳をダンボにした。


「さすがにデモまではやり過ぎだろ?相手は王宮に仕える騎士達だろ?」

「確かに。しかしデモと言えば、数日前に大きな負傷者が出たってな。まぁ、オレ等はそこまで関わらずに済んだんだ。ある意味、面倒は最初だけで助かった」

「言えてるな」

「あの人の目的って、やっぱあれだよな?」


 ―――目的?これは有力な話だ、絶対に聞かないと!


「オレもそう思ってた。あれだろ……。王の………」


 続く言葉に私は心臓をバックンバックンとさせながら待った。そして…!


「姉ちゃん!いいケツしてんなぁ~♪」


 ―――へ?


 なんと!背後から恐れ多くも私のお尻を愛おしむようにナデナデとしてくる、とんだおっさんが!


「新しい料理はいいから姉ちゃんを頂いちゃおうかな~♪」


 ―――ひぃぃぃ!!このおっさん、ただでさえセクハラをしているだけでも悍ましいのに、さらに人を食べようとしていやがる!


 キュウリのような細い顔をしたハゲチョビンのおっさんの言葉に、私は嘔吐しそうになる。


「ささ、姉ちゃん!早くこっちに来てオレの相手をしてくれ!」


 ―――ひょぇ!!


 さらに調子づいて私の腕を引っ張ってきやがった。ここはお触りバーじゃないっての!このすっとこどっこいめが!私は思わずハゲチョビンの頭をカチ割ってやろうと手を上げそうになった…けど、さっきの料理を故意に落とした良くない行動に続いてやるのは、それになにより今は調査の為に………あれ?


 ―――しまったぁぁあああ!!


 ハゲチョビンに気を取られて肝心な乗組員達のおっさん達の話が!私は無理にハゲを押し退けて、乗組員達へと振り返ると……。


「明日は朝から天候が悪いみたいだな」

「チッ、そんな時に限って大事な代物を運ぶんだよなー、面倒だぜ」


 あ~~~、もう全く違う話をしているではないか!完全に聞きそびれてしまったぁぁあああ!!私は愕然と肩を落とす。


 ―――あ~~~ダメダメ!とりあえず今はこの落とした料理を片付けてから、またおっさん達に話を聞き出そう。


 気を取り直して私はスピーディに行動を起こした。しかし、私が料理を片付けて新しいオーダーの手配をしている間に、タイミングが悪く乗組員達は会計を済ませていて、店から去っていたのだった……。


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