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第二十三話「ブリブリのメイド服を着て聞き込み開始です」

 ―――なんで私がこんな目に…。


 私は目を細め、深い溜め息を吐いた。実は今ある酒場へと来ていた。そう、例のメイド服を着てだ!お客としてではなく、ウェイトレスとして働いているのだ。数時間こっきりの仕事なのに、よく働かせてもらえたものだ。まぁ、そこの内部事情はシャークスが手を回してくれたみたいだけど…。


 彼から突然この制服を出されて、それを着てウェイトレスをやるように言われたあの話し合いの場で、もちろん私は断固拒否をした!


「そんなのするわけないでしょ!それに、なにその制服!超スカート短いし、私は人にただ見をさせるほど、安い女じゃないんだから」

「わかってるよ。君の躯を見ていいのはオレだけだし、触れるのもオレだけだ」

「ぜっんぜんわかってないじゃん!もうなんで他の人がいる前で、そんな問題発言してんのよ!」


 シャークスは潔癖騎士のザクロとセクハラ騎士のクローバーさんがいる前で、いつもの変態ぶりをサラリと出していて、私はかなり焦っていたけど、当の二人から全く突っ込みはなかった。むしろシャークスの発言はいつもの事だと言わんばかりに平然としていた。さすが変人同士の間では暗黙の了解ですか!


「ミニスカは確かにオレも頂けないと思っているよ。だから下に短パンを穿くのと、あと……これも特別に穿いてOKにしてもらったよ」

「なにそれは?」


 シャークスは真っ白な長い布を二枚出してきた。


「ニーハイソックスだよ♪これで脚の殆どが隠せるよね」

「そんな問題じゃないっての!」


 という事で、なんだかんだシャークスの訳のわからない口車に乗せられ、最終的に私はウェイトレスをやる羽目となった。エプロンドレスに、もちろんニーハイまで穿いて。


 こんな悪趣味な制服、私には無縁の世界だと思っていたのに!いつも通りのポニーテルに、頭にはフリルのホワイトブリムを付けて、一応は様になっていた。シャークスは執拗に絶賛してくれたけどね。クローバーさんは何気にセクハラをしたそうだったけど、シャークスがいる手前、抑えていたようだった。そこにはシャークスに感謝!


 潔癖騎士野郎は目に毒だと暴言ばかり吐いていた。そんな彼等はとりあえず目的の人物達に気付かれないにと、見張って様子を窺うと言っていた。ちゃっかりと自分達は傍観組かと文句を垂らしたら「オレ等は何度かヤツ等と顔を合わせているから、むやみやたらに顔を出せない」と、言ってきたよ。全く!


 ―――お酒が臭すぎて鼻がおかしくなりそう!


 普段酒場なんて行かないし、家でたまに兄さん達が集まれば宴会状態になって、お酒臭い場にはなるけど、至ってここまでの臭いにはならないからね。むさ苦しい男達の憩いの場ではあるが、働いている方は地獄だよ。


 しかもさ、このメイド服スカートが超短いの!変にボリュームもあるから、所々でおっさん達にセクハラを受ける羽目に。もう頭は噴火しそうだっての!それを必死で抑えながら、私はあるおっさん達の集団へと目をつけていた。


 そもそも私がこのむさ苦しい場のウェイトレスをしているのは、あくまでも聞き込み調査をする為だ。まずは最初に事を起こした貿易船の乗組員達への調査だった。私は出来るだけ、彼等の近くを回り、オーダー取りやお料理を届けに行ったりと、積極的に接触するようにしていた。


 乗組員達は総勢20人ほどで、いくつかの丸テーブルに分かれていた。仕事場では何百といるようだけど、さすがに普段はその人数で飲みに来る事はないだろう。でも今日のメンバーはシャークスが詰問をかけた主要な人物が何人かいる為、聞き込みするには大チャンスだそう。


 彼等は仕事帰りに飲みに来たようで、仕事着を着たままだった。今は夜の10時を回り、さっきからイイ感じにお酒が入ってきているし、そろそろ出来上がってくるんじゃないかな。私は目を光らせて彼等に目を向けていた……。そんな時だ。


 ―――ひぃぃぃ!また触られたよ!ガチ殺す!!


「姉ちゃん、いいケツしてんね♪足に穿いている、そんな暑苦しいもん脱いで生足を見せておくれ!ガハハ!」


 一人のおっさんが悪そびれた様子もなく、セクハラの言葉を言いよった。乗組員達へ神経を一心していたから、セクハラの手に気付かなかった。ッキショー、このおっさん、ウェイトレスしてなきゃ、ボコボコにしてやるのに!私は泣く泣くその行為を押し殺し、顔を引き攣りその場から離れた。


 再び乗組員達へと近づく。髭ボーボーな人、中年の小太り、頭がツルツルの人、加齢臭を撒き散らしている人と、うん、めっちゃいかにもおっちゃんって感じだよね。そんな彼等は陽気に飲んだくれていて、正直ウザイ!けど、私は我慢してさらに彼等へと近づく。すると、


「姉ちゃん、見ない顔だね。新人ちゃんかい?」


 乗組員の一人の酒臭いスキンヘッドのおっちゃんから声をかけられたのだ。


「えぇ、まぁ」


 私は出来るだけ作り笑顔をして簡易的に答えた。


「他のウェイトレスのコはほんわかしているけど、君は気が強そうだ!間違いなくSだろ?」


 ―――なんの話をしているんだ!このおっさんは!


 私は頭の映像でスキンヘッドのおっちゃんをボコボコにしていた。


「たまにはこういうコがいてもいいじゃないか!オレはこういうコも好きだけどね❤」


 また別の鼻の毛ボーボーのおっちゃんがイヤラシイ目つきをし、若干よだれを垂らしつつ、口を挟んできた。マジゾッとするんだけど!


「オレもこの姉ちゃんは好きだって言いたかったんだ。勝手に先を越すなよ」


 スキンヘッドが口を尖らせながら、鼻毛ボーボーに文句を垂らした。


 ―――なんだ、コイツ等は!好きだと言われても、ちっとも嬉しくないんだけど。


「確かに姉ちゃん、躯も丸いし、なによりいいケツしてんな!この姉ちゃんの可愛さにもう100杯酒をお願いしちゃうか!ガハハハハハ!」


 と、おっさん達は好き勝手言いたい放題に叫んでいた。私は彼等の言葉を流すようにして、次々にお酒を大量に持って行くと、その内に彼等はろれつが回らず、訳がわからずの状態に陥っていた!中には眠っているおっさんもいる。彼等は完全に出来上がっていたのだ!


 ―――しめた!今ならでっち上げの話を聞き出せるかもしれない!


 私はニヤリと笑みを浮かべた…。


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