第十九話「ヤツの対処は至難の業です!」
「な、なにをなさるおつもりですの!シャークス様!(てめぇ、なにする気でいるんじゃ!)」
私は心の叫びを必死に隠しながら、懸命に敬語で対処をしようとしていたが、ヤツは私を完全に自分の手の内に引き寄せ、無駄に顔を近づけていた。
「見ての通り、食事を頂くんだよ?目の前に美味しそうな料理があるからね❤」
「わ、私!?」
「そうだよ♪」
シレッとして答えるシャークスの表情が無駄に艶っぽくて、私は悲鳴を上げそうになる。
―――ひぃぃ!コイツ、ガチで私を食べようとしているではないかぁ!!
「わ、私は食べ物ではございませんわ!」
顔を逸らして抵抗を見せる!
「ひゃぁああ!」
ヤツは私の頬をペロッと舌で舐めやがったぁぁあああ!
「なにすん……なさるんですか!」
思わず「なにすんじゃボケッ!」って、平手打ちを食らわせるところだった。プルプルと震え上がる右手をなんとか押さえ込む。
「君は十分に食べ応えがある料理だよ❤だってほら」
「ひゃぁああ!!」
そう言ったシャークスはさらに行為を進めてきたぁ。ヤツの唇は私の頬を過ぎて?……なんと耳たぶを甘噛みしている!?
「シャ…シャークス……さ…ま……や…やめ…ひゃぁあ!!」
またもや悲鳴を上げる。だって今度は舌が耳の中や耳裏へと這い回ってきたんだもん!
―――キモチ悪いぃぃいいい!!
変にゾクゾクとする刺激が躯中に回って、思うように抵抗が出来ず、私はおのずと目が潤ってきた。そんな弱々しい私に、シャークスはさらに首筋に舌を回してきて?
「やっ、やん!」
―――ひぃぃ!
生まれてこの方一度も出した事のない変に色気づいた声を上げてしまった。それに満足をしたシャークスは一度舌を離して…?
「ん~、今の声最高だね!もう我慢出来ないから、このまま一気に頂いちゃおう♪」
―――一気にってなんなんだよぉおおお!!
私は雄叫びを上げそうになった。それぐらい今の言葉は最っ高におぞましかったのだ。しかしヤツの暴走は留まらず、さらに加速する。
「君を頂いた後はお互い汗をかくだろうから、一緒に湯浴みに入ろうね❤」
調子づいてんじゃねぇぇええええ!!人がしおらしい態度をしているからって、マジ殺ス!!私は完全に火がついた。我慢の限界に達してしまったのだ。そんな私にまるっきし気が付かずのシャークスは私の唇へと近づき、キスをしようと……。
「こんのド変態騎士め!!調子づいてんのも大概しやがれってんだよぉぉおおお!!!!」
―――ドガッ!!
気が付いた時にはシャークスをグーで殴ってしまっていた。怒りの頂点に我を忘れ、手を上げてしまっていたのだ。
―――シ――――――ン。
閑散とした空気が流れる中、私はシャークスを見てハッとする。何故なら彼は鼻から血を垂らしているのにも関わらず、恍惚とした表情をして、
「はぁはぁはぁはぁ」
無駄に息を荒くしていたのだ!あぁ~、いつものヤツの発作が出てしもうた。キショイのなにものでもない悪病だ!
「それでこそ本来のオレのスターリーだよ!」
いや、鼻血垂らして息荒くして言われてもね。シャークスはまるで子供が自分だけの宝物を見つけた時のように、目をキラキラとさせ興奮していた。そしてキショイ姿のまま、嬉しそうに言葉を続けてきた。
「さっきまでの君はらしくなくて、ちっとも魅力を感じなかったよ」
言われてみれば、そういえば?いつも私に迫る時のキショイ恍惚とした表情や息をキモ荒くしてなかったよね?
「…もしかしてシャークス、いつもの私に戻す為に、わざとイヤラシイ事をしたの?」
「いつもイヤラシイ事しているけど?」
「そうだったわね!」
シレッと言うなぁああ!ヤツからの異常な愛情表現は日常茶飯事だけど、今回のはさすがに行き過ぎていたもんね(ファーストアクションは裸体での奇襲でメッサ恐ろしかったけど!)。
「なんで侍女のように畏まった態度をしようと思ったのかはわからないけど、スターリーは、やっぱ明るく元気なままが一番可愛いよ」
私から離れたシャークスは微笑みながら言う。その言葉に思わずドキンッとしてしまった。たまに可愛いは言ってくれるんだけどね。女のコらしくない私に男性からの「可愛い」はある意味、貴重だったりするんだよね。妙に恥ずかしさを感じて、シャークスから視線を逸らす。
「もっと欲を言えば、罵声を上げている姿や殴ろうとする君が一番魅力的だ。すぐにオレをエクスタシーにしてしまうからね❤」
「キッモーイ!他の女性に求めてよね!」
さらにヤツは頬の紅潮を深め、噛み締めるように言った。もうなんでこんなキモイのよ!!
「残念ながら君にしかそうならないんだ❤」
そして最っ高にキモイ決めセリフを吐いた!神よ、この狂気じみた精神から早く私を解放させて下さい!!