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第十七話「ド変態ドMへの心配は不要です」

 大聖堂での調査を終えた翌日。今日は外出禁止令が出され、大人しく部屋に籠っていた。それは私に問題があったからではなく、朝から例のデモが起こっていたのだ。私が来てから、大きなデモは起きていなかったから、そこまで重視していなかったんだけど、実際に耳にすると、落ち着かずにはいられなかった。


 そしてデモンストレーター達の対処は下位の騎士様達が行うのだけど、今回はなんと上位の黒の騎士様達が出動する事になった。デモンストレーター達が武器を持ち、大きな騒動を起こし、下位の騎士様の多くを負傷させてしまったのだ。その為、シャークス率いる黒の騎士様達が向かった。


 ―――もう既に数時間が経ったけど、シャークス大丈夫かな?


 私は心配からか焦燥感と不安に煽られていた。普段はド変態ぶりに「いなくなれ!」とか「死ね!」とか言ってしまう事はあるけど、実際に危険な場所へと向かったシャークスの安否が気になって仕方なかった。


 ………………………………。


 落ち着かない気持ちのまま、さらに数時間が経ち、


 ―――ドンドンドンッ。


 突然、部屋の扉からノックの音が聞こえて、私は咄嗟に扉へと向かった。ノックの主がシャークスではないかと思ったからだ。バンッと半ば乱暴に開けると、姿を現した人物は…。


「シャークス!」


 思った通りで私はホッと安堵感を抱くのも束の間、彼を見て動きが止まった。髪は乱れ、いつのもカッコイイ黒の騎士様の制服も擦り切れていて、なにより口元付近の血の塊を目にして驚愕する。それにいつになくシャークスの表情が険しく、とても疲れている様子だった。


「シャークス!口元怪我をしているじゃない!」


 私は彼の口元に手を添えて聞いた。


「スターリー…」


 名を呼ばれて、シャークスと視線を合わせる。


「大丈夫?……じゃないよね?ゴメン」


 バカな言葉をかけたと後悔したけど、


「大丈夫だよ」


 シャークスは気にする素振りを見せずに、ニコリと微笑んだ。その表情を目にして、心と涙腺が緩んだ。


「無事で良かったよ」

「うん」


 急に泣き出しそうな私の姿を見たシャークスは右手を私の左頬に包み込んで応えた。


「思っていた以上に厄介な連中だったよ」

「攻められたのね」

「まぁね。攻められるのには抵抗はないよ。むしろ…」

「…………は?」


 いきなりシャークスが私から視線を逸らし、頬を紅潮しているのは何故?………ま・さ・か!?


「まさかと思うけど、攻められるのが快感だったとか言わないよね?」


 私はシャークスに心底白い視線を送りつける。


「スーターリーはオレの事、しかっりとわかっているんだね❤」

「こんのアホんだらぁああ!」


 なんてヤツだ!命に関わる事なのに快感に思えるなんて、どんだけドMなんだ!このド変態騎士めが!私の心配を返しやがれ!私は頬に置かれていたシャークスの右手をパシンッと払い退けた!


「安心してくれ。オレの性的快感はスターリーにしか感じ…」

「黙れ、このドM変態野郎!さっきいっぺんヤラれてくれば良かったのに!」

「オレがヤラられるとしたら、スターリーからの攻めじゃないと有り得ないよ。なんなら今から試すかい?君が上になって…」

「サラリとキモイ事言うなぁああ!!」


 すぐにしもに行こうとして!それに私は初めてなんだから、変態プレイなんかに付き合わせられてたまるか!絶対にこの男にだけはあげたくないわ!私はさらにシャークスを押し退けてヤツとの距離を作った。


「ねぇ、黒の騎士様達は大丈夫なの?」


 シャークスは無事だとしても、他の騎士様達はどうかわからない。


「あぁ、大きな負傷者はいないよ。彼等は普段からハードなトレーニングをして鍛えているからね。ちっとやそっとの攻撃を受けたからってヤラれはしないさ。だけど、中には爆薬や爆竹を投げる者がいてね、デモの連中で怪我を負っている者が多いよ」

「え?」


 ―――爆薬に爆竹?それってヤバイよね!


「でも今回の爆薬や爆竹といった危険物の被害の大きさを当の本人達は把握していなかったみたいだ」

「それって?」

「指示された通り行って犠牲になったんだろうね。知らされず自己犠牲になって、同情せざるを得ないね」


 シャークスは目を細めて同情の言葉をかけた。私はなんて応えたらいいのかわからず言葉を失う。


「犠牲者が少ない内に調査を終わらせないとだね」

「そうだね」


 その調査が難しいんだよ。でもこの間のシルビア大聖堂で最後に目にした大司祭様のパナシェさんの姿。あの凍り付くような冷然とした表情は見間違い…?だと思いたいけど……。


 それとシャークスの言葉「きっと大きな手がかりになる」。めちゃ意味ありげで気になるのに、当の本人は詳しくは教えてくれない。その手がかりとやらが調査の進行を促すんでしょって思うのに。一体シャークスはなにを考えているんだか。


「スターリー?」


 私が恨めし気な視線を送っているのに、気付いたシャークスは怪訝そうな表情をして、私を見ていた。


「どうしたの?あ、もしかして調査に不安を抱いている?大丈夫、絶対に黒幕を暴いてみせるから」


 自信に満ち溢れた表情をするシャークス。彼って超変態だけど、物事をなんでもスマートに行うよね。だから黒の騎士様の長を務めているんだろうけど。彼の余裕の笑みを見ていたら、本当に調査を終えられるのではないかと思えた。


「シャークスってなんで黒の騎士様になったの?攻められるのが好きなら、白の騎士様の方が向いていたんじゃない?」


 私はふと頭に浮かんだ疑問をヒョッコリと口に出した。


「あぁ、確かにオレ本当は白騎士を志願していたんだけど、当時の白騎士の長に“オマエがいると無駄に攻められそうだから”って黒にさせられたんだ」

「は?んなアホな話があるんかい!」


 私はシャークスの突拍子もない言葉に目ん玉が飛び出しそうになった。


「白騎士は守りが主本だけど、戦いを未然に防ぐのも役目なんだ。でもオレは敢えて防がずウェルカム体質だから、白には向いてないって言われてさ」

「なんじゃそら!」

「気が付いたら、今では黒騎士の長。あの時の白騎士の長の目には狂いはなかったんだな。今となっては感謝しているけどね♪」


 思い出に耽るシャークスだけど、私はちっとも感動しないっての!全くどんだけ攻められ好きなんだよ!


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