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第十五話「大聖堂で不埒な行いは厳禁です」

 王宮から街に出る時は、けっこう慎重でなければならなかった。それは例のデモがあるからだ。今の所、運良くの当たりにしてはいないけれど、実際に目に映したら、震え上がるだろうな。想像しただけでも十分に震えるもの。


   さてシルビア大聖堂は王宮から歩いて一キロほどの場所にあり、この首都ジョンブリアンの街のシンボルでもあった。この大聖堂は完成までに500年もの月日をかけた歴史ある建築物。世界で一番信仰者の多い「ローゼンカバリア女神」様に献納されている大聖堂で、確か首都の大司教様が誇る「司教座聖堂」とも呼ばれているんだよね。


   王宮に負けないぐらい立派なゴシック調の建物で、大理石の素材を生かした重厚な造りの外観には数百本の尖塔があり、その天辺一つ一つには女神を守る天使達が立ち、尖塔中心の頂点にはローゼンガバリア女神の像が威風堂々とした姿で立っていた。


   早速、入口の扉をくぐろうとすると、デデーンとゴージャスな金色のハイレリーフが映り、一瞬身が縮こまった!そして内部へと足を踏み入れると…。


 ―――わあぁぁ!


   思わず叫びそうになったから手で口を押える。静粛な場所だからね。変に大声を上げたら、つまみ出されてしまう。でも思わず大声を上げそうになるんだ。内部は左右の壁から天井まで色鮮やかなステンドグラスが立ち並び、陽射しがグラスの絵柄を美しく映し出していた。


   床はデザインが上品な大理石のタイル、祭壇近くと館内全体には女神の歴史を物語る壁画が装飾され、そして至る所に繊細ディテールに施されたデザインの彫刻品や重厚な調度品が並んでいた。エレガントなデザインとノーブルな彩りに目を奪われ、大きく息を呑んだ。


 ―――聞いていた以上に圧巻させられる装飾だよ。


   格式ある建物だから、けっこう正装して来る人も多いけど、今日の服装で私、大丈夫かな?動きやすい服装にと用意されたサックドレスと、その上にポンチョを羽織っていた。まぁ、特に周りの人達から、白い目で見られていないから、大丈夫みたい。


  中央奥には礼拝堂があり、絢爛な主祭壇前には一人の男性が立っていて、なにかお祈りの言葉を詠まれている?


 ―――あの方が大司教様?


   長い白髪と白髭の生えた柔和で品のある老人だった。格式のあるアルバの礼服を身に纏い、目を細め、主祭壇をバックに祈りの言葉を唱えているようだった。彼の周りを囲む数十人の司祭の方々は黙祷するように目を瞑り、大司教様の言葉を聞き入れていた。さらに、その彼等を目の前で見つめる信仰者の人達がいる。


  「ちょうど祝詞しゅくしを唱えられているみたいだね」


   シャークスは一人呟くように言う。「祝詞」いわば大司教様が祈祷文を述べているのである。初めて来る大聖堂で、早速大司教様に会えるなんて運がいいんだろうな。私は無宗教だけど、さすがに大司教様の偉大さは知っていた。


   ………………………………。


   私とシャークスは暫く大司教様達の様子を見つめる。儀式までとはいかないけど、正式な場所だからか、おチャラケのシャークスの表情もとても真剣だった。なんか見ようには大司教様をガン見しているような気がするのは気のせいかな?


 *★*――――*★* *★*――――*★*


 結局、私達は大司教様の祈りの唱えが終えられるまで、ずっとその様子を見届けていた。唱えを終えられた大司教様達は信仰者の方々から、見守られながら姿を去って行った。


 ………………………………。


 えっと、シャークス?私は彼をチラッと覗く。未だ彼は大司教様達がいた主祭壇の方を見つめている?彼になにか言いたいけど、声をかけづらい雰囲気だ。


 ―――一体、どうしたんだろう?なにを考えてるんだろう?


 私は半ば奇妙な気持ちが芽生えてシャークスを見ていると、


「黒の騎士殿が大聖堂にお祈りとは戦の勝利を願いに参られたのでしょうか?」


 背後から甘い穏やかな声がかかった。私とシャークスは同時に後ろへと振り向いた。すると…?


 ―――ひょえぇぇ!


 キラキラのブロンドの長い髪を一つに束ね、印象的な琥珀色の瞳をした透明感ある美しい男性が立っていた!司祭様の礼服を身に纏っていて、まだ年はシャークスと同じ20代半ばぐらいの方に見えるけど、彼は聖職者なんだよね?私は無意識に惚けて見つめてしまっていたのだだ、


「いえ、永久に恋人と共に歩めるようにと祈りを上げに参りました」


 というシャークスの返答に一気に惚けから醒めた、一瞬、シャークスに彼女がいたのかと思ったが、何故かヤツは私の肩を抱いて引き寄せていた!


 ―――は?


 なに勝手な行為をしてやがる!


「とても可愛らしい相手様ですね」

「えぇ、愛らしい恋人です」

「!?」


 コ、コイツ、いつ私がアンタの恋人になったって言うんじゃぁああ!シレッとして言いよるシャークスに私は切れかかりながら離れようとするのに、ヤツはそれに力強く抗い、私は離れられずにいた。


「失礼ですが貴方は?」

「私はこのシルビア大聖堂司祭のパナシェと申します」


 私の必死の行動の間にもヤツと司祭様の会話は進んでしまっていた!


「他の司祭殿より服装が…」

「えぇ、位は大司祭でおります」

「なるほど」


   確かにシャークスの言う通り、パナシェさんの礼服は他の司祭の方よりも煌びやかだった。美しい刺繍が織りこまれたデザインに装飾品も宝石だよね?私はシャークスから離れるのを諦め、大人しく彼等の会話を聞く事にした。


「何度かこの大聖堂には足を運んでいますが、今日は運良く大司教様の姿をお目にかかる事ができ、とても光栄でした」

「そうでしたか。祝詞は定期的に行われております。その時間に足をお運び頂ければ、会う事はいつでも可能ですよ」


 微笑みながら返事をするパナシェさん。ん~、この美形の司祭様に会いに来られる信仰者も多いのではないかと、不埒な考えが浮かんだ。


「館内もゆっくりと回って信仰を深めて下さい。祈りは必ずローゼンカバリア女神が聞き入れる事でしょう」


 そう最後にパナシェさんは言葉を残し、私達の前から去って行かれたのだった…。

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