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第十四話「シャークスの存在価値」

 私が首都ジョンブリアンの王宮に来てから、はや一週間も経ってしまった。数日前に王自ら首都の不穏な出来事の説明を受け、任務を命じられた私は(ド変態ドM騎士の)シャークスと共に事件の黒幕を暴く為、調査へと入った。


 が、実際はこの3日間、私はシャークスといくつかの礼拝堂や修道院を回っているだけだった。それらを訪れては、お祈りをして館内の様子を見て回っているだけで、特別に誰かを見張るとか調べるとかってのは全くしていなかった。


 これで黒幕が暴けるとはとても思えない私は当然不満を生じさせていた。なんの為に祈りの場へと訪れて館内を回るのか、シャークスに問いても濁らされ、ハッキリとは答えようとしてくれない。


 それがまた私には不満でならなかった。だって、私だってドッキドキしながら、王から命じられた調査をしているのに、なんで事件の全貌を話してくれない。闇雲の中をわけもわからず探しているような感覚がもどかしくてならなかった。


 さらに慣れない王宮での生活にも気が参っていた。超美味しいお料理や素敵な湯浴みの湯は最高だけど、なにせ王宮だからお偉いさん達もいっぱいだし、お会いしたら頭を下げるのも当然で、言葉もきちんとした敬語で話さなければならない。


 品のある行いと言葉を意識した生活が田舎の村で育った私には、思った以上にストレスだったりするんだよね。し・か・も!一番のストレスといえば「シャークス」本人なんだよ。もうド変態ドMっぷりが半端ない。二人っきりになると、すぐに。


「はぁはぁはぁはぁ」

「てっめぇー、気持ち悪いだよ!息荒くしてこっちに近寄るなぁ!」

「はぁ、はぁ、た、たまらん!その罵声を上げる姿が五臓六腑に染み渡る快感だ!」

「はぁ!?ガチキッショイ、一層死んでしまえ!!」

「はぁはぁっ、もうダメだ!エクスタシーだぁぁあああ!!」

「あーん、神よぉ~!何故この男をお生みになられたのでしょうかぁぁぁぁああああ―――――!?」


 と、シャークスは無駄に息を荒くしては私の気を荒立てる発言を繰り返す。彼の狂信的な発言に、どれだけ私は血が滲む恐怖を味わっている事か!もう今となっては彼を騎士様としての尊敬がさっぱないっての!


 でもそんな彼がだよ、実は実は!黒の騎士様の「長」だった。まだ25歳の若さなのにさ。宮殿の中を彼と一緒に歩いていると、使用人さんや侍女さん、はたまた騎士様の殆どの方々が頭を下げてくるの。なんでだろうと思っていたら、なんとシャークスに対しての敬意を表した行為だった。


 信じらんない!あんなにド変態ドMなのに、なんで騎士様のトップ?みんな騙されているよ!って思って、お世話になっている侍女さん達に話を聞いてみると、どうやらシャークス率いる騎士の軍は絶対に負ける事のない驚異的な力を誇っているらしい。例え多勢に無勢の中でも圧倒的な強力さをもつ奇跡の軍らしい。


 シャークスは同じ騎士様達からも厚い信頼と人徳をもっていた。なんなんだ、そのカリスマ性は!ガチ私には理解が出来なかった。さらに彼をキャアー×2と騒ぐ侍女さん達に話を聞いてみたら(ヤツのどこに惹かれるのかと)、あの完璧なルックスと(それは確かに認めるが!)あの誠実な振る舞いさ。だと返ってきたんだよ!


 私の耳はおかしくなってしまったと思ったね。あのド変態ドMのどこが誠実なんだと!しかし、私のその発言に侍女の方々から白い目で見られ、痛い思いをするのは私の方であった。な、なんで私がこんな目に!


 とにかく、この宮殿内の生活と課せられた任務の遂行に、私は正直グッタリとしていた。こんな生活から脱出する為にも早く調査を終わらせないと。その調査が至難の業なんだけどさ!私はフゥーと重く溜め息をついた。


 今、部屋でシャークスが迎えに来るのを待っていた。これから今日の調査が始まるのだ。今日もまさか礼拝堂や修道院巡りじゃないよね。だったら調査は一向に進まないっっての。私はまたしても深い溜め息をついた時だった。


 ―――コンコンコン。


 部屋の扉がノックされて、それがシャークスだろうと思った私は、すぐさま扉を開けに行く。ギィーッて扉を開くと、


「グッモーニーン、スターリー❤」


 案の上、無駄にさわやかな笑顔を向けているシャークスの姿が目に入った。今日も黒の騎士様の制服をカッコ良く着こなしている。これだけの美形だから、余計に様になっているんだよね(だけどド変態のドM!)。


「はぁー」

「なんだい?その溜め息」

「無意識に出たの!」

「ダメだよ。いくら調査が困難だからといって、これから始めようとする前から溜め息をついちゃ」


 シャークスからメッて叱咤する表情と口調で言われる。私の溜め息の意味は調査ではなくて貴様じゃぁああって叫んでやりたかったけど、朝から無駄に体力を消耗したくない私は彼の言葉をシカトした。


「あれれ?機嫌を損ねたかな?」

「機嫌を損ねるのはシャークスが変態モード全開の時だよ」

「それはオレの全身全霊のピュアな想いだからね」

「私にとってはグロくてキショイ恐怖な思いだよ」

「そこまで深く体感してくれていて嬉しいよ」

「なんでも都合良くプラスに考えるな!この傍迷惑ポジティブ思考めが!」

「あ~、たまらない!その罵り方❤朝から興奮してしまうよ。はぁ、はぁ」

「キッモ~イ!」


 こんな感じで毎日会話が繰り広げられてちゃ、さっきの私の気持ちがおわかりになって頂けたでしょうか!


「で!今日は何処に調査しに行くの?」


 私は鼻息を荒くして怒気オーラを放散させながら、質問をした。


「今日はね、シルビア大聖堂だよ」

「またお祈りの場所?」

「これこれ不満を口にしない」


 シャークスは怒っている様子はなかったけど、今の私の言葉は失言だったようだ。でも大聖堂に行ったって、お祈りして館内を回るだけじゃん。


「目的の人にお会い出来ればいいんだけど」

「え?」


 シャークスは呟くように吐露したけど、私はその意味がわからず首を傾げた。


「さぁ、急ごう」

「はぁい」


 無駄に良い返事をした私はシャークスの後に続いて部屋を出たのだった…。


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