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第十三話「黒幕の目的とは?」

 話の続きは王へと移された。


「以前から検討していた税金率の件だ。民の生活の安定を図る為に高収入者から税を上げ、逆に低収入者には税の軽減を図ろうとしたのだ。当然、高収入者から不満の声が上がった。しかし、現状では貧困の差が大きく生じており、弱者が増えつつある。彼等を守る為にも高収入者からの税率引き上げは強要せざるを得ないのだ」


 王は目を細め、切なさげな表情を見せながら、話を続けられる。


「税金の件は決行に至った」

「厄介な出来事いうのは、もしかして先ほどの商人や漁師のように、ストライキを起こしたのでしょうか?」


 私は頭に浮かんだ疑問を王に投げかけた。


「いやそうではないのだ。実は税金に関しては、もう一つ別の問題が生じていた。それと合わせて起こった出来事だ」


 なんでそんなに次から次へと勃発しているんだ!私が物言いたげな表情をしていると、シャークスが話の間に入った。


「これは数日前に判明した事柄なんだけど、一部の諸侯や領主が農夫達に不当な税を上げていたんだ」

「不当な税?」


 私は眉を顰めた。不当っていうのは明らかに悪い事だよね。


「大聖堂や礼拝堂への生産物に10分の3の税を納めるよう強要していたんだ」

「10分の3って多すぎない?」

「ジョンブリアンの民は特にローゼンカバリア女神への信仰が熱いからね。税が原因で、そうそうに信仰をやめる者がいないとわかっていて徴収していたんだ」

「ひどい話ね!」


 私は怒気が起こった。人の純粋な思いにつけ込んで不当な行いをしているなんてさ。


「さっきの税率を上げられた高収入者と今の不当な税を徴収されていた農夫達の憤りが高まり、とうとう昨日さくじつからデモが起こったんだ」

「デモ!?」


 これまた私は素っ頓狂な声を上げてしまった。だってデモと言ったら、ある特定の意思・主張をもった人々が集まり、集団で抗議や要求の主張を掲げ行進をする、いわば示威行為でしょ?私は今までデモが起きた話なんて聞いた事がない。


「それに輪をかけてストライキを起こした生産者達もデモに参戦してきた。ジョンブリアンではデモなんて今までに一度も起きた事はないんだ。それもデモの連中と騎士達の紛争を起こすほどの激しいものとなった」

「そ、そんなに?」


 さすがに私も他人事には思えなくなった。なんだか事が思っていた以上に大きくて、自分で顔がみるみる青ざめていくのがわかった。


「しかも彼等が口を揃えて言うのが、ジョンブリアンの乱れの原因は王にあると訴えて来ているんだ」

「え?なんで?」


 続いたシャークスの言葉の意味が全くわからず、私は目をパチクリする。なんで事に関わっていない王が責任を押し付けられているの?


「政治の責任者は国の主である私だ。彼等が申すには民の経済と生活の安定を図るどころか混乱を招き入れていると、その責任を取るべきだと主張している」

「せ、責任と言いますと?」

「王の失脚を望んでいるようだ」

「失脚!?」


 な、なんていう大胆な!いやいや、そりゃいくらなんでも国の主に言葉が過ぎているでしょ!本当にガチ事が大きい。今思い出したけど、数日前にイーグルス兄さんが父さんに村ではなにか異変や困った出来事がなかったかって聞いていたのは、首都でこれだけの事が起こっていたから、心配で聞いてきていたんだ。やっと兄さんの質問の意図を把握した。


「いくらなんでも王の失脚って事が行き過ぎていると思いますが…」

「さような事だ。本来はそんな発想には至らぬだろう」

「何故そのような事に?」

「そう指示している“黒幕”がいると考えておる」

「え?」


 王の眼差しがギラリと鋭く光った。その瞬間、大きく空気が張り詰め、私は一層に緊張が高まり、心臓の音がバクバクと速まった。


「あれだけの民を操作するだけの力のある人物だ。よほど高く崇拝されている者だと推測が出来る」


 王は一段と声を低め、重々しい口調で決然と言い放った。


「その人物の目的は王を失脚させ、次期、王の座を狙っているという事なのでしょうか?そしたら、まさか宮殿内の王族の方が!?」


 私は思わず身を乗り出して質問をしてしまっていた。そんな私の姿を宥めるかのようにシャークスが私の肩に手を乗せ、そのまま座るよう促した。


「いや、身内の王族の者ではない。デモの連中はエクストラ王というよりはドライ・マティーニの王族を批判しているんだ」


 質問にはシャークスが答えた。


「じゃぁ、王族ではなく外部の人間だと?」

「うん、その線が高い」


 私は開いた口が塞がらず、シャークスを見上げていた。外部の人間が王の座を狙っている?それって、いわば王権を乗っ取るって事でしょ!


「権力の大きさを考えてみれば、大体の黒星はついている」

「え?それは誰なの!?」

「まだ確証がないから、下手に口には出来ないよ。相手が相手だし」

「まどろっこしい!相手がわかっているのに調査ってなんの為に?とっとと黒幕をとっ捕まえて吐かせればいいじゃない!」

「捕まえるっていっても決定的な証拠がないからね。それを掴めなきゃ意味が無い」

「そ、そうだけど…」


 私が渋々納得していると、王が説明を加えられた。


「貿易の組員や独占をしていた生産者の不可解な行動、税率に不満を抱いた高収入者、不当に税を上げられた農夫達と正直すべての事柄が王の失脚を目的にしているものか確証はない。しかし、このまま野放しにしておれば、ますます首都は反乱の渦に呑まれ、さらに混乱に陥るだろう」

「状況を悪化させない為にもオレ達は急いで黒幕の陰謀を明るみにし、平穏な首都へと戻さなければならないんだよ」


 そ、そうだ!私はシャークスと共に調査をするって話だったんだよね。あ~、こんな重大な事件だったとは。今更ながら自分の夢の為とはいえ、軽率に考えていた浅はかさに後悔を感じていた私であった。


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