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第十一話「首都ジョンブリアンの国王様」

「調査する為の準備をしていたんだよ。闇雲にやるわけにはいかないからね」


 放置プレイの不満を顔に表していた私に、シャークスは淡々と説明をし始めた。その表情がとても真剣だったから、言っている事は本当なんだろうな。


「思っていた以上に厄介でね。時間を要してしまった。悪かったよ、淋しい思いを…」

「してないから気にしないで、本当に!」


 私はシャークスの最後の言葉を遮り、めっちゃりきんで強調してやった。やっぱ最後はこういうトンチンカンな方向に行くんだよね。はぁ~。


「スターリー」

「なによ?」

「もっと素直になって」

「私は至って素直に言っているの!」


 全く!なんでこの人、変な解釈すんだろ!自分の言いように脳内変換やめろっつーの!


「スターリー」

「(今度は)なによ?」


 私は煩わしそうに返事する。もうシャークスと会話するのが面倒なんだもん。


「用件を伝えに来たんだ。今から国王に会って欲しい」

「…はい?今なんと?」


「国王」って言ったのは聞き間違い?


「うん、今から国王に会ってもらえる?例の首都で起きている不穏な事件の説明をしようと思って」

「それで私みたいなパンピーが国王様に会えるの?」

「国王からの命令だからね。王から説明を受けるのが一番でしょ?」

「そうだけど…」


 シャークスが言っている事は尤もだけど、それでも私なんかが国王様とぉぉ~!?


 *★*――――*★* *★*――――*★*


 ―――数十分後。


 国王様に会うならと私は正装のドレスを借りた。清楚な白のドレスなら問題ないよね。私の着替えが終わるタイミングをみて、シャークスが再び部屋へと迎えに来てくれた。


 そして私は彼の後に続き、回廊を歩く。その間にも私の心臓はドキドキと高鳴り、緊張しまくっていた。国王様なんて遠目から見る事はあっても近くで話をするなんて。あぁ~、冷や汗が出そうだよ~。しかも…。


「今回の任命は大ぴらにしていないから、少し入り組んだ部屋で話をさせてもらうよ」


 と、シャークスから聞いていた。だから余計に緊張が高まるんだ。私はふぅ~と大きく深呼吸をした。


 ―――さらに数分後。


 地下牢のような薄暗いコンクリートの階段へとやって来た。


 ―――ひょぇ~、なんか本当に秘密の部屋にでも行くんかい!


 ドクンドクンと無駄に心臓の音を速まらせ、シャークスの後に続く。螺旋階段になっているようで、グルグルと回りながら下りて行った。暫く続いた階段が終わると、細い道へと入った。


「この奥に部屋があって、そこで王は待っている」


 薄暗い明かりの中だったけど、口調からしてシャークスが真顔でいる事は間違いなかった。私はコクンと頷き、再び彼の後に続いた。そして数メートル先に、フラリとなにか織物のような物が見えた。どうやら美しい花のデザインのタペストリー(装飾用の織物)が広がっていた。そこでシャークスは立ち止まり、振り返る。


「ここだよ」

「え?」


 そう言うけど、このタペストリーと王のいる部屋となんの関係があるんだ?私が首を傾げて、シャークスを見ていると…、


「?」


 彼はいきなりタペストリーの下部を持ち上げた。すると…?


「あ!」


 タペストリーの裏側に金色のローレリーフの扉が見えた。そしてシャークスは扉をドンドンッとノックをした。


「シャークスでございます」

「入れ」


 シャークスが名乗ると、扉の奥から貫禄のある、でもとても穏やかで優しい声が返ってきた。その返事にシャークスはゆっくりと扉を開き、中へと入る。


「さぁ、スターリー。君も入って」


 シャークスに促されて私も急いで中へと入った。部屋に入ると、シャークスは静かに扉を閉めた。絢爛豪華な調度品が並ぶ部屋の中心に、クラウンの玉座に腰かける人物に目が止まった。私はハッと目を見張る。


 ―――この方が…王?


 一目で王とわかる存在感溢れる方だ。ブロンド色のエレガントなソバージュヘアーは瞳と同じ色をされている。年齢は50歳前かな?鼻の下と顎下には髭が生えていらっしゃる。ライン全体に美しい刺繍が織られたジュストコールの礼服に煌びやかな肩布を羽織っていらっしゃった。王としての威風と貫禄が見られる。


「やっと来たな、シャークス」


 王のお声は穏やかではあるけど、威厳の重みを感じさせる口調に、私の緊張は高まった。


「遅くなりまして申し訳ございません。…王」


 シャークスは深々と頭を下げた。それは敬意を込めたお辞儀だと察した私もつられて頭を下げた。すると…。


「例の娘か?」


 顔を上げると王が私を目にし、問われた。


「さようでございます。スターリー、紹介するね。こちらがジョンブリアン国王エクストラ・ドライ・マティーニ様だよ」

「は、初めまして!」


 私は改めて深々と頭を下げた。変に緊張した声が出てしまう。


「そして王、こちらがスターリー・クランベリーでございます」

「なるほど、元気そうな女子おなごだな」


 それはお褒めの言葉ですよね?心の中で私は思わず王に突っ込みをしてしまった。そして王は私に言葉を続けられた。


「シャークスがお主を今回の調査に加えないと、任務を遂行しないと言いよってな」

「へ?」


 私は突拍子もない言葉を発してしまった。


「今回、首都で起きている不穏な出来事は並みならぬ黒幕が潜んでおる。一筋縄ではいかぬ調査だ。シャークスなしで事が終えられぬだろう。その為、コヤツが望むお主を呼んだのだよ」


 私は王の言葉に開いた口が塞がらなかった!王は大層シャークスを買い被っているよね?つぅか国の主に要望出せるシャークスって、どんだけお偉いさんなんだぁ!


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