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狂った世界で  作者: 桃姫
プロローグ
9/82

9話:開眼

 夜。紀乃が許可を取り、紀乃立会いのもと肝試しは行われることとなった。

「というわけで、くじ引きで、男女ペアを作る。そして、各自、自由に回ってもらうことになった」

 良介の言葉と共にくじを引いた。出た数字は四。何か不吉な数字だな。まあ、気にしないのだが。

 周りの奴らは次々にペアを作っていく。しかし、俺は、ペアが見当たらない。

 キョロキョロと見渡してみると、マリアが一人、途方にくれていた。

「マリア、お前、何番だ?」

「あっ、謳さん。私は四番です」

 と言うことは、俺のペアはマリアか。

「俺も四番だ。よろしくな」

「よ、よろしくお願いします」

 マリアが深々と頭を下げる。

「わ、私、こう言った、幽霊や妖魔の類は苦手でして」

 七不思議の中で幽霊や妖魔が出てくるのは、せいぜい三個目くらいだろう。

 妖精だの美女だのは、実際の人物の可能性が高い。幽霊の可能性は捨てきれないがそれもないと思う。

「そうなのか?」

「ええ。母も苦手だったらしいので性格が似たのでしょう」

「お~い。お前等。順番だぞ~」

 良介の声が聞こえた。

 俺は、少し震えるマリアを連れて、教室棟の方へ向かった。


 暗がりの教室棟には言い知れぬ不安感を抱かずにはいられない。

 いつもは、明るい時にしか見ないうえに、一人か二人は、必ずいる。しかし、夜の暗闇と誰もいない廊下は、不気味さを感じる。

 何かがしがみつく感覚に、一瞬、驚くものの、すぐ理解する。

「おい、マリア」

「ひゃあわっ!な、なな、何ですぅ?」

 慌てすぎだろう。

「いや、別に」

 もはや、慌てすぎて、俺の腕に巨大な胸を押し付けて、俺は、その感触に心地よさを覚えていた。

 柔らかい。弾力性がある。制服の上からでもはっきりと分かる。ふにふにとした感触が病みつきになりそうだ。

「きゃっ」

 不意に、声を上げるマリア。

「どうした?」

 俺の声に、マリアは震えた手で廊下の奥を指差す。

 すると、パタパタと走る音が聞こえる。

「なんだ?」

 俺は思わず息を呑んだ。すると前方から凄い勢いで、少女が駆けてきた。その瞬間、俺の動きは止まる。

 まるで金縛りのように動けなくなる。マリアは未だに震えているが、何も言わない。一体どう言うことだ。この状態、まるで二個目の七不思議のような。

 前から来る少女の眼は黄色に光っていた。妖しい光を漂わせている。あれは、確か……。


 俺の頭に、過去に見た「眼」が浮かぶ。様々な色の眼。その中に黄色の眼もあり、確かあれは、【縛鎖】の眼。

 俺と同じ、異能の力を手にしてしまった者か。あれは、危険能力に分類される相手を動けなくする程度しかできない「眼」のはず。

 俺は、「眼」を働かせ、【縛鎖】の眼を解く。異能は、より強い異能に打ち消される。

 すぐに「眼」を停止させ、前方から来る少女に聞く。

「何があったんだ?」

「なっ、何かあったのでしょうか」

 マリアも声を上げる。……まて、何でコイツは、動けるんだ?俺は、打ち消せるとしても、コイツは……。

「な、なな、何で、貴方達、あたしの眼を見ても動けるの?あいつの仲間なの?」

「あいつ?」

 あいつって誰だよ、と聞こうとしたが、それは、発砲音に遮られる。下手な撃ち方だな。

「あいつが来た?!くっ、あたしの力じゃ、長く停められない!」

 何か面倒なことになったな。あれにコイツが追われているみたいだが。

「待ちやがれ!見られたんじゃあ、殺すしかねぇ!」

 ああ、完全に向こうが悪いやつだな。それにしても五月蝿い男だ。

「ちょっと、貴方達、逃げないと死ぬわよ!」

「おい、追われてるあんた」

 俺は怒鳴る少女に声をかける。

「何よ!」

「あれを殺せばいいんだな?」

 俺の声に、怪訝に眉を寄せる。

「そうだけど、そんなこと!」

「できるさ」

 俺は、「眼」を開ける。

 その瞬間、俺の「眼」は、血の色に変わる。黒から紅に。

 そして男は、消え去った。

 まるでそこに存在しなかったかのように、血の一滴も散らさず。

 そう、その血は、俺の「眼」が喰ったのだ。

 もう、そこには何も残っていない。落ちているのは、一丁の拳銃だけ。

「貴方、一体……」

「謳さん……」

 俺は、自嘲気味な笑みを浮かべ、言う。

「怪物、さ……」

 その声は、自分で言うのもなんだが、酷く冷めた声だったと思う。凍え切った声だと思う。

「かい、ぶつ……?」

 マリアは、掠れた声で呟いた。

「貴方も、なの」

 少女は呟いた。俺を見ながら。その目は、酷く同情的な目だった。


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