57話:二人きりの夜
俺が部屋で漫画を読んでいると透が風呂から上がったようだ。
「おう、上がったの、か」
思わず声が小さくなってしまった。
風呂から上がったばかりで、水が滴る艶やかな髪。赤みと艶を帯びた体。濡れた体をきちんと拭いてないためか、無地の白いシャツが透けて黒い下着と胸が浮かび上がってしまっている。さらに小さいため、へそが見えている。少し小さいのかズボンから下着がはみ出てしまっていて見えている。ズボン、と言うよりデニムの短パン(?)から伸びる太ももは、柔っこいしなやかな足。普段とは違い、下ろした髪。いつもとは違う外観に、新鮮味を覚える。
「なっ、なによ……?ジッと見て」
眠気の所為か、少し潤んだ眼で俺を見る透。俺は、思わず見惚れてしまう。
「いや、いつもと違うお前も綺麗だなぁって」
ん?今、頓珍漢なこと言わなかったか?俺。
「ばっ、馬鹿!」
タオルの塊が飛んできた。先ほどまで乾ききっていない髪を痛まないように湿りを拭っていたものだ。透の匂いが染み付いている。
「って、嗅ぐな!」
ぬいぐるみが飛んできた。黄色い良く分からない生物を模したぬいぐるみは、俺の脳天に的中する。
「ふごっ」
「もう、あんたは!……それで、泊まってくの?」
突然聞かれたが、俺は、
「ああ、まあ、そのつもりだけど?」
「じゃあ、もう、寝るわよ。時間も時間だし」
俺は、何時だろうと時計を見ると、十一時半を過ぎていた。
「え?寝るのか?」
「明日も学校よ?」
「それもそうか」
俺は、透の布団に入ると寝る準備をした。
「ちょっと、もうちょっと詰めてよ」
「は?何で」
俺は、言われたとおりに奥に詰めながら聞いた。
「何でって布団一個しかないのよ」
ちょっと待て、二人で寝るのか?このベッド、シングルだぞ。まあ、いいか。
俺の意識は柔らかい感覚に包まれながら、まどろみに身を委ねた。
Scene透
はぁあ。思わず溜息をついてしまった。もう、寝てるじゃん。ったく、可愛い乙女とベッドを共にするってのに、もう寝てるなんて……。
あたしは、謳を後ろから抱いた。胸を押し付けるように。それでも寝たまま。
「馬鹿っ……好き」
あたしは、小声で呟いた。そして、抱きしめながら寝た。




