51話:「お嬢様」
世界が狂った原因。それを聞いたことで、俺の中の何かが、弾けた。
「狂った原因?」
「ああ。やつが現れてから世界各地で点々と異能が生まれていたらしい。そして、やつが、消えた戸同時に、異能が一気に増えた。これで、奴が原因と考えないほうがおかしいってさ」
誰かに言われたかのような口調だ。
「それにしてもこの学園、呪われてるのかしら。かいちょっ……じゃない、先輩の時代からそこまでひどい異能学園だったなんて」
廿楽の言葉に青年が、やれやれと肩を竦める。
「まあ、な。今も今だが、あの頃は……」
と、青年の方から「ヴヴゥッ」とバイブ音が聞こえる。
「ん、すまん。電話だ。もしもし、」
青年が席を外しながら電話に出る。
「お嬢さ、あっ、いや、静刃先輩」
まるで、「かいちょっ……、あっ、いえ先輩」と言っている廿楽のようだった。
「えっ、今からですか?ええ、構いませんが……って、え?いえ、敬語は、警護の時の癖で、なかなか抜けなくて……、え?掛詞?何のことですか?」
なかなか長い会話だ。
「まあいいです。分かりました。今からそちらへ向かいます。え?できれば、学園で回収してきて欲しい人がいる?ええ。まあ、いいですけど。どうせ今、生徒会室ですし」
通話が終了したらしい。
「廿楽。蓮条崇音さんって、どこに居るか分かるか?」
「そこですけど」
廿楽が、指で、蓮条のほうを指す。
「え?あ、ああ。まあ、いい。お嬢様……、朱野宮静刃お嬢様が呼んでいる。一緒に来てもらえるか?」
青年の言葉に、蓮条は言いよどむ。
「え、ですけど」
そのとき、扉がノックされる。
「お嬢様。まだ、こちらにいらっしゃいますか?」
扉が開かれる。
「やはり、まだ、こちらに居られましたね」
そう言ってから青年のほうを睨むように見る。
「お久しぶりですね、漣信也さん」
「あっ、お久しぶりです、七峰さん」
どうやら、蓮条の付き人らしい人と青年が知り合いらしい。
「えっと、お嬢様から、彼女を連れてくるようにと申し付けられたのですが、同行を願えますか?」
「朱野宮本家に、ですか?」
「ええ」
朱野宮……。確か、歴史ある名家じゃなかったか?
「それでは、皆さん。ウタイくん。お先に失礼します」




