45話:落ち羽
俺が消した【空の欠片】。その消え方は、いつもの消え方とは違っていた。
「なんだよ、これ」
散るように、舞うように、上に上がっていく。
「ん?どうしたのよ、何もないとこ見つめて」
何も、ない?
「ちょ、何、反応しろ!」
透のチョップを見ずに避ける。
「もう、なんなのよ!無我の境地にでも至ったの?」
無我?いや、我を失ったわけじゃないが……
「これは驚きっす。まさか、見えてるっすね?」
「なんなんだよ、これ」
俺の言葉に、刃奈は、いつもの口調を変えた。
「これは、【欠片】の沁流と私が呼んでいる現象ですわ」
「いや、何で口調変えたし」
俺の疑問には、スルーした。
「この現象を観測したあとの空は、」
そう言って、窓の外を見上げる。
「煌きますわ」
眩い光が空を渡っていた。俺は、思わず窓を開け、身を乗り出し、見る。
そして、開いた窓から風が入り込む。
刃奈の髪が巻き上がる。
「あら、少し、風が強いですわね」
見えたのは、美しい顔。そして、その双眸は、紺に染まっていた。
「お前、」
「ふふっ、その話は、貴方には関係ありませんことよ」
コイツも「眼」持ちか?
「では、皆さん、目的を果たしたのなら、お帰りいただけますか」
笑う刃奈。
「私には、今、やることができましたので」
篠宮家を出た俺たちは、勇音家に戻った。
「そういえば、君のこと、よく聞いてなかったわね」
透の姉が聞いてきた。
「あ~、そういえば。俺は、響乃学園、一年三組の雨月謳。部活は所属してなく、生徒会役員だ」
「あっ、あたしも生徒会役員ね」
俺と透の言葉に、二人は、
「えっ、二人とも生徒会なの?」
「まあな。俺の場合、廿楽に無理矢理入れられたがな」
俺の言葉に、透が、
「そういえば、生徒会って異能関係者ばっか」
まあ、廿楽、黒羽、透、俺、は異能関係者だし、蓮条は、関係者かもしれない。
「そうだな」
一通り話がまとまったところで、俺は、学園に帰れるよう透の姉に金を貸してもらい、タクシーに乗った。
「じゃあな。一足先に帰らせてもらうぜ」
「うぃ~」
こうして、俺、一羽の鳥が、青い空へと羽ばたく物語は、終わりを告げた。だが、これは、新たな物語への序章に過ぎなかったことを、俺は、知らなかった。




