4話:血の走狗
【血の走狗】。金持ちや政治家を狙った犯罪集団。かつて、と言っても数年前だが、俺が所属していた組織だ。
構成メンバーが十人と少ない組織だったが、それなりの額を巻き上げることができた。しかし、仲間の一人がある組織の勧誘に乗っかり、一人の政治家の娘を誘拐するも失敗。その後、【PP】に俺を含め全員逮捕されたのだった。
だが、確か、逮捕に来たのは、長年【PP】に所属している凄腕の女だったし、そのときに紀乃はいなかったはずだ。【幹部】は三人いたはずだが、三人とも出向中。しかし、その構成メンバーの中にも紀乃はいなかったと記憶している。
自己紹介の後、連絡事項が終わり、実質解散となった……のだが、俺は、紀乃に呼び出され、教室に残っていた。
「貴方、【血の走狗】の生き残り?」
生き残り、と言う表現は、正しくないのだが、
「いや、俺は、一回捕まった身だぞ」
素っ気無く言い返す。
「嘘、でしょ。だって、彼らの経歴から考えて、あと数年は絶対にでられないはず」
「いや、俺は、特別だ」
そう、特別で特殊だった。異質で異物だった。人間であり人間でなかった。「怪物」だった。
「特別に出所って言うことはないと思うけれど?」
「出所はしてないな。刑務所じゃないところに放り込まれただけ、さ」
そう、俺は刑務所には放り込まれない。俺が「眼」を持っている限り。普通の刑務所からは、簡単に抜け出せてしまうから。
「刑務所じゃない……。まさか、危険能力保持者収容施設?」
十数年前に突如現れた異能の中でも危険な異能を収容する施設。だが、俺は、そこには行かなかった。
「確かに、昔は、そこにいたが、あの時は、第一級危険能力保持者収容施設に入れられたんだ」
「一級?!大規模殺戮可能な能力者なの……?」
異能力者には、政府や科学者どもが分かりやすいように、勝手な区分を作る。
普通能力者、危険能力者、第三級危険能力者、第二級危険能力者、第一級危険能力者。その区分は、明確に分けられている。
普通能力者とは、私生活に害が出ないほど微弱な能力。現在、取り締まり対象外。
危険能力者とは、私生活で害がでるほどの能力。一般に目視できる能力は、基本的にここに分類される。
第三級危険能力者とは、その能力の応用しだいで、人間を殺害できるもの。
第二級危険能力者とは、その能力で複数の人間を殺すことができるもの。
第一級危険能力者とは、一撃で、大規模な殺戮を行うことができるもの。
そして、俺の「眼」は、第一級危険能力に指定される。一撃で大規模殺戮ができる能力。
「その通り。殺そうと思えば、あんただって、ここから動かずに一瞬で殺せる」
本当に殺せる。
「どうやって第一級危険能力保持者収容施設から抜け出したのよ」
「色んなところに引っ張りだこだよ。上の奴らが何を考えているかは知らないが、能力者を使って軍でも作りたがってるらしい」
俺も一時期、軍にいたしな。銃の成績は、あまりよくなかったが。
「そんなことが……」
「実際に起きてるからな。まあ、俺は、逃げ出したが……」
そう逃げ出したのだ。全てを捨てて。全てを忘れて。
「逃げ出した……って大丈夫なの?それは」
「大変かもしれないな。あの偏屈な科学者どもから逃げ切るのは」
「だったら、私の側に来ない?」
それは、【PP】に付けということだろうか。
「嫌だね。俺は普通に過ごしたいもんで」
「あら、だったら、入学早々、喧嘩なんてしないことね」
確かに、と笑いながら、俺は、教室を出た。
「ホントに、俺は、普通の生活を、望んでいるのか……」
そんな独り言を呟きながら。