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狂った世界で  作者: 桃姫
蒼空編
34/82

34話:γ

Sceneγ

 これは、遥か昔。まだ、七つの夜の三つ目の頃。

 狂った聖女の母の物語。


 神醒存在。【神】に目【()】めし存在。

緋奏(ひそう)。貴方は、」

(ひじり)。分かっていますわよ。人と交わることが、わたくしたちには、不可能だということは」

 艶のある長い黒髪と黒の瞳。圧倒的美貌と大きく実った胸を持つ女性。それとは対照的に短髪の蒼髪と蒼い瞳。圧倒的な美貌だが、全体的に小柄な少女。

「聖。わたくしは、それでも彼と……謳魏(おうぎ)さまと、結ばれたいのです」

「別に私は、それを否定しないわ」

 蒼髪の少女は、笑う。

「私たちが人といれる可能性がないわけではないわ。私も昔、家族と、暮らしていたもの」

 少女は遠い目で、空を見上げる。七人の少年少女頭に浮かべながら。

「ですが……。わたくしは、第一典です。貴方のような第六典とは……」

「私たちに差は、ないでしょ?私も貴方も、神の曲に目【()】めてしまっただけ。同じ、人の道を外れ、数段上の位に上がってしまった者」

 彼女は笑う。

「だから、同じよ。同じ【神醒存在】なのよ……」

 緋奏は、言った。

「聖。貴方は、名前の通り、優しい慈愛の聖なる光のような方ですね。……そうですわね。もし、もしも、わたくしと謳魏さまの間に、子が出来たときは、貴方のような子になるようにと、聖なる名を名づけましょう。そう、その名は、」

 緋奏は、笑う。

「マリア。狂ヶ夜マリア。ね、いい名でしょう?」


 これから、数十年の時を経て、ある一人の少女が生まれた。

 その少女は、母の面影をしっかりと継ぎ、聖の優しさをしっかりと受け継いだ、心優しき聖女が生まれた。そう、狂った聖女が生まれた。


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