20話:δ
Sceneδ
【七夜】と【七天】。
これは、二つの【原初】が紡ぐ神話。
七つの夜の全ては、ここから始まった。【夜鬼】と【天使】が奏でる【前奏曲】。
古の世界。まだ、世界が統轄される前。七つの家が世界で猛威を振るっていた頃。ある辺境に【夜鬼】が居た。
七つの夜を経て生まれたから【七夜】と名づけられた。生まれながらにして、金の瞳を持った夜鬼だった。【夜鬼眼】、その名は、それが由来となっている。
それと同じ頃に、辺鄙な地を見に【七天】の称号を得た【天使】がやってきた。
【七夜】と【七天】は、一目見たときに互いに惚れ、愛し合いました。
しかし、悲劇は起こる。【七夜】は、我を忘れた。
力の奔流に世界は歪む。
【七天】は、【七夜】を止めるために叫ぶ。
「もうやめてっ!!」
奔流は、収まらない。何人もの重傷者が出た。力の奔流に呑まれれば、助からない。次々に人を飲み込む奔流。【七夜】は、もう、【七夜】ではない。
「止まって、止まってよ。お願い。お願いだから止まってぇええ!」
【七天】の叫びに答えるかのように、彼女の「眼」は醒める。
「えっ。これは……」
「嬢ちゃん。儂等を喰らいなさいな。もう余命のない爺婆どもだが、嬢ちゃんの『眼』の生贄くらいにはなるだろうさね」
【七天】には、意味が分からなかった。
「さあ、早く、時間がない」
皆、一様に、力の奔流の中で、彼女の前に立つ。
そして、「眼」は開く。
「じゃあな。あの子を止めてくれよ、嬢ちゃん」
そして、消えた。
「これは、……。【――】。そう【――】。この『眼』で、止めないと。皆のためにも」
そして、「眼」を見開いた。
奔流は消えた。
ただ、残された少年と少女は、【夜鬼】と【天使】は、【七夜】と【七天】は、一度目の夜を終えた。
そして、幸せに、本当に幸せに、末永く、人生を謳歌したとさ。
βは抜かします




