表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂った世界で  作者: 桃姫
プロローグ
11/82

11話:血色の眼

 俺の「眼」は、危険すぎる。【縛鎖】の眼よりも遥かに危険だ。

「レベルが、違う……?」

「どう言う意味なんですか?そ、そもそも、怪物って……」

 マリアも居たんだったな。まあ、いい。コイツも巻き込まれた身だ。俺のことを説明してやらないでもない。

「いいか、マリア。お前に分かりやすく説明してやる。この世には、不思議な力ってのがある。異能、魔法、超能力、妖力。様々な呼び方はあるが、まあ、要は、不思議な力だ」

 俺は、手早く的確に説明する。

「それは、危険な力だ。何種類かに分けられるんだが、そっちのなんかは、【縛鎖】の眼っつって、金縛り程度の効果しかないあまり危険じゃない能力だ。俺のは、大規模殺戮が可能な危険極まりない能力。つまり怪物」

「大規模殺戮って、第一級危険能力者じゃない!」

 少女が言った。

「なっ、何で、そんな危険能力を持ってる奴が、普通に生活してるの……?」

 その後に、慌てた声で、

「いえ、何で、普通に生活できるの?」

 それは、「眼」を持っているのに何故、普通の生活を送れるのか、と言うことなのか、それとも「眼」を持っているのに何故、施設に連れて行かれていないのか、と言うことなのか。どちらにしても、かまわないのだが。

「施設から逃げたからな。軍からも。全部からな」

「に、逃げた?そんなことって」

 俺は、にやりと笑って、少女に言った。

「できるさ。土台無理なことなのさ。怪物を捕らえておくなんてことは」

 その言葉に、マリアは、震えながら言った。

「し、施設、ですかぁ?」

「ああ、施設だ。別の言い方をするなら牢獄や実験場だな」

 俺の言葉に、マリアは聞いた。

「そ、そそ、そんな場所が、日本に存在するんですか?」

「あるのよ」

 少女の言葉に頷きながら俺は言う。

「あるんだよ。そんな人権なんて関係ない、非人道的な施設やら組織が、わんさか日本の地下に」

 俺の言葉に、マリアは不思議そうな顔をした。

「そんなものが国に認可されるんですか?」

「されるさ。所謂、国の裏側ってやつさ」

 そう、施設もその他組織も、実在している。

「俺は、いや、俺たちは、そこで飼われている怪物なんだよ。目的は様々。管理、実験、軍用、殺人。そんな目的のためにずっと、捕らえられているんだよ。俺たち怪物は」

 その言葉にマリアは、

「謳さんは怪物なんかじゃないです!」

 そう叫んだ。それは同情か。それとも……。

「お前は、俺の『眼』を知らない。だから、そんなことを言える」

 そう、俺の「眼」は、人間を一人消した程度では。片鱗も見せていない。

「だったら、その眼を見せてください」

 ……コイツは、何を言っている。死にたいのだろうか。

「死ぬ気か?」

「大丈夫です!」

 俺は、深い息をつきながら、「眼」を開けた。

 血色に染まった瞳が、マリアを見つめる。

「そ、それが、眼、ですか?」

 マリアは生きていた。消えない。そして、認識した背景が消えた。なのにマリアは消えない。壁も窓も消えたのに、マリアだけ消えない。俺は、思わず呟く。

「お前、何だ……?」

 その声がきちんとでていたかは分からない。ただ、マリアはそこに立っている。

「綺麗な眼ですね。真っ赤な」

 そう言って、俺の前まで来て、俺の頭を撫でた。

「謳さんは、怪物じゃあありません。立派な人間さんです。それも飛びっきり優しい」

 そんな恥ずかしいことを言われ、俺は「眼」を閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ