第八話 専門医到着
「だ、誰!?はっ!もしかして電話の!?」
「ああ、術師専門医師、仲内秀二だ」
「あ、はい。どうも。ってそうじゃなくて真二は大丈夫なんですか!?」
すると仲内先生はしゃがみ込んで真二に右手を向けた。
「病傷透視」
先生の右手が緑色に輝き、真二の体を包み込む。
やがて光が消え、先生が口を開いた。
「傷がかなり深いな。しかも、霊力をかなり消耗している」
そういって再び右手をかざす。
「治癒加速」
さっきよりも明るく右手が光り輝く。緑色の温かい光。
しばらく光を当て続け、その後に体中に包帯を巻きだした。体中傷だれけというのもあるかもしれないが、包帯を巻き終えると首から下はミイラと何ら変わらない気がする。
もちろん、本物をみたことがあるわけではないが。
・・・なんていうか仲内先生、包帯巻くの下手?
「よし、これで傷は5日もあれば完治するだろう。それまでは、まあ、歩くくらいならできるだろうがそれ以上の運動は避けた方がいい」
「じゃあ、しばらく安静にしていれば普通に生活できるんですね」
「ああ、早ければ明後日には難なく動けるだろう。でも、霊力はそう簡単には戻らない。少なくても2週間は霊術を使わないように伝えてくれ」
「はい。わかりました。ありがとうございました」
「それでは俺は戻るよ。仕事が山積みだからな。お大事に」
そういうと、先生は足元に魔方陣?みたいなのを発生させ、光の中に飲み込まれていった。
私はその場にペタリと座り込み、息を吐きだす。
「先生、出番短かっゲフンゲフン・・・真二、運ばなきゃ」
私は目の前で気絶している真二を運ぼうとするが、体は普通に大人になっている真二を二階にある部屋まで連れていくのは当然無理だった。かといって、怪我人をソファーに寝かせるわけにもいかない。
仕方がないので一階にある自分の部屋に寝かせることにした。床に布団を敷いてそこに寝かせた。私はすぐとなりにあるマイベッドに潜り込む。
「おやすみ、真二」
□■□■□
俺は窓から降り注ぐ太陽の光で目を覚ました。
気持ちいい朝だ。なんだかいい香りもする。ふと、横を見るとなんと幼馴染みの美少女が気持ちよさそうに眠っていた。
「うお!?咲!!」
俺は素早く飛び退いた。が、それと同時に激痛が身体中に走りその場でうずくまる。
「んん~、しんじ~?」
目を擦りながら起き上がる咲。
「わっ!真二!何で!?」
どうやらビックリしているようだが俺の方が何倍ビックリしたことか・・・
目を覚ましたら今までにないくらいの超至近距離で咲の寝顔が目に飛び込んできたのだから。
そして次の瞬間に身体中に激痛が走るというなんとも痛くも嬉しい目覚めを迎えた俺に咲が慌てて声をかける。
「そ、そうだ!真二、あんまり動いちゃダメだよ!まだ、傷が治ってないんだから」
ああ、そうだ。昨日はキマイラと戦ってなんとかここまで帰って来たんだっけ。そのあとは・・・
「あのあと真二が急に倒れちゃうからビックリしたよ。すぐに先生が来てくれたから良かったけど、そのあと真二を運ぶの大変だったんだから」
俺、あのあとぶっ倒れたのか。そんで仲内さんが治療をしてくれた後、ここに咲が運んできたと。
「咲、なんか、悪いな。迷惑かけて」
咲は真剣な面持ちになって言った。
「それは別にいいんだけどさ。お願いだから無理だけはしないでね。私、真二にまた今回みたいなことがあったらって思うと心配で・・・」
「咲・・・わかった。もう、お前には心配かけねぇよ」
「・・・うん」
しんみりした話が嫌いな俺は話題を変える。というか気になっていることを聞く。
「ところでよ、何でお前は俺の横で寝てたんだ?」
「へ?うーん、何でだろ?たぶんだけど、ベッドから落ちたんじゃないかな?」
「・・・マジか?」
「てへ☆」
・・・こいつは本気で天然への道を突き進んでいるらしい。
「よし、お前はそのまま我が道を突き進め。ゴーイングマイウェイだ!」
「・・・意味わかんないよ、真二」
その後、俺は咲から俺の体について詳しい説明を受けた。
「そんじゃあ、しばらく魂霊狩りはお預けだな」
「うん。仲内先生がしばらくしたら見に来てくれるらしいから」
「わかった。じゃあ俺は部屋に戻ってるから」
「大丈夫?一人で階段上がれる?」
「ああ、それくらいならできるさ」
「ホントに?大丈夫?」
「大丈夫だって。痛みも昨日よりひいてるし」
「じゃあ、朝ごはんできたら呼ぶね」
「おう」
5分後
俺は自分の部屋の床に座っていた。
「よく考えたらこんなに包帯巻いてあったらなんもできねえな」
仲内さん、前から思ってたけど包帯巻くの下手すぎるだろ。
外しても大丈夫だろうか?
とりあえず、痛くないところは外してもいいよな。
俺は痛みの無い右腕と左足、顔に巻いてある包帯を外した。見ると、昨日は確かにあった傷が跡形もなく消えていた。
「すげぇ!もう治ってやがる!」
仲内さん、なかなかやるじゃねぇか。(包帯がうまく巻けないのはどうかと思うが)これなら5日で治るってのも嘘じゃなさそうだな。
「真二ー、ご飯できたよ~」
「はいよ~」
台所に行くと咲が野菜ジュースを持って待っていた。
「あっ!真二もう包帯そんなに外しちゃっていいの?」
「ああ、見ての通り傷跡ひとつねえ」
「ホントだ!!もう治ってる」
「そんじゃあ、冷めねえうちに飯食おうぜ」
「そうだね」
俺、今思ったんだがこれってなんか夫婦みたいじゃね?
・・・いかんいかん。きっと咲には好きな人いるだろうし、変なことは考えるもんじゃねぇな。