第七話 決着
ズドオオオオン!!
俺はキマイラの炎に焼かれ、吹き飛ばされ、そのまま壁に突っ込み、穴を開ける。
「がはっ!!」
立ち上がろうとすると体中が痛む。なんか、骨が折れてそうな気もする。ギリギリのところで防御系術式の展開ができたから部分的な火傷で済んだものの、まともに受けてたら全身火傷で焼死体と化してるレベルだ。
痛みをこらえ、何とか立ち上がるものの、まともに戦える状態とはいえない。
さっきのダメージで、相当霊力を持ってかれた所為か、霊術も使えるのはあと大技一回程度。
吸収された炎の矢と炎華。通常道理当たった風刃。どうやらキマイラは炎の攻撃を吸収して、自分の力にできるらしい。となれば、手段は一つ。
一撃。この一撃で決めなければ俺の負けだ。
体中の残りの霊力を両手に集中させる。
「集え、冷たく重い、沈静なる水の精霊よ」
俺の右手が青く光りだす。
「集え、速く激しい、狂乱なる風の精霊よ」
やげて、左手も白く光りだす。
「我に集う精霊たちよ。我にその大いなる力を分け与え給え」
俺はよりいっそう光を増した両手をキマイラへと向ける。
「激水爆風槍!!!」
手の前に大きな陣が出現し、風を纏った水が勢いよく放たれる。
はじめは形をとらないその水も、その荒れ狂う風によって鋭利になり、より勢いを増す。やがて、渦を巻き始め、竜巻の中を鋭く尖った水が流れる巨大な槍となる。
強大な威力を誇る二つの技によって生まれた衝撃波が病院を襲う。
「うおおおおおおおお!!!!!」
「グオオオオオオオオ!!!!!」
壁が吹き飛び、屋根が落ちてくる。衝撃波は俺とキマイラをも襲い、両者ともに体中の傷が刻み込まれていく。
やがて、拮抗していた二つの技のバランスが崩れ始める。技の相性もあったのだろう。消火する槍が蒸発させる炎を上回り始める。そうなれば後は速い。勢いに乗った激水爆風槍が炎を蹴散らしながらキマイラへと迫る。
俺は更に霊力をこめる。
「はあああああああああああ!!!!!!」
威力を増した激水爆風槍がついにキマイラの体に突き刺さる。更に、竜巻と化した暴風がキマイラの体を抉る。深紅の液体が飛沫を上げ、病院が血の海と化す。
命を絶たれたキマイラはその場にズドォォォォォンと音を立て倒れこむ。そして、流れ出た血とともに小さな白い光となって天へと消えていく。
そこには激闘の爪痕こそ残っているが、魂霊の存在は完全に消えていた。
「はあ、はあ、はあ、はあ、やっと・・・・倒せた・・・か」
霊力をかなり消耗した俺はその場に膝を着いた。
「やべえ、こりゃ帰るのにかなり時間かかりそうだな・・・・」
■□■□■
現在時刻二時半。私はリビングでソファに座っていた。本当は寝てしまうつもりだったのだが、真二が心配で寝つけず、結局真二が帰ってくるのを待つことにしたのである。
「真二、遅いなぁ」
そう思っていると玄関でガチャッという音が聞こえた。
急いで、玄関に向かうとそこには体中傷だらけでボロボロの見ていると痛々しい姿の真二が立っていた。
「真二!?ど、どうしたの!?」
どうしたかなんてことはわかっているのだが、つい聞いてしまう。
「はは、咲。まだ・・・・起きてたのか。ちょっと・・・霊魂とな・・・・」
「霊魂って・・・・なんでそんなに無茶したのよ!!」
「ちょっとかなり体が・・・・やばそうなんだ。ここに・・・・電話してくんねえか」
そう言って私に電話番号の書かれた一枚の名刺を渡す。
次の瞬間、真二はその場に倒れこんだ。
「ちょ、ちょっと!!真二!?真二!!!!」
私は無我夢中で渡された名刺に書かれた電話番号に電話をかける。
トゥルルルルルル トゥルルルルルル
早く出て、早く出て!
すぐに電話に出ないことに焦り不安だけでなく怒りすら感じる。
トゥルルルルルル トゥルルルルルル
『はい、竹中です』
「大変なんです!真二が!真二が!!」
『落ち着いてください。いったいどうしたんですか?』
「真二が・・魂霊に!!すごい怪我なんです!!助けてください!!」
『・・・わかりました。今行きます。住所は?』
「えっと、○○県××市△△△-□□□□番地です」
『了解しました。そこにいてくださいね』
「はい」
受話器を置いて息をつく。そして真二の様子を見に玄関へ行くと、急に床に黄緑色に光る魔方陣のような円が現れたと思った次の瞬間、その中から人が現れた。
白衣の下に、ジーパンにワイシャツというラフな格好をした男の人だ。
「え、ええ?ど、どうなってんの??あなたは・・・だ、だれ!?」