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Get the Dream   作者: nora
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第六話 対キマイラ

俺は今、食器を洗っている。


ゴシゴシ

ジャー

フキフキ

ガチャ


上から効果音の説明をすると、

スポンジで皿を擦る音

泡を洗い流す音

皿をふく音

皿を重ねる音 だ。


「真二~、終わった?」

「ああ、今終了したところだ」

「それじゃあ私は部屋にいるね」


そういった咲は自室へと戻っていった。


廊下でドン!という物音と共に「いてててて・・・」という声が聞こえるが、スルーだ。

本格的にドジっ子への道を歩んでる奴を、俺は止めはしない。

なんでかって?可愛いからに決まってるだろっ!


俺も自室(借り物)に戻りベッドに布団に横になる。魂霊との戦闘に備えて仮眠を取っておかなければ身が持たない。

ただ、最近は出現してないから寝過ぎな感じもするけど。

やがて、俺は睡魔に襲われて意識を手放した。




「ん~・・・・今、何時だ?」


仮眠にしては深い眠りから覚めた俺は携帯で時間を確認する。現在時刻12時15分。寝たのが確か9時過ぎだったから三時間ほど寝ていたことになる。

とりあえず、のどが渇いたので俺は台所に水でも飲みにいくことにした。


台所に入ろうとしたら、ちょうど咲が出てくるところだった。ピンク色の生地に小さなクマのイラストがプリントされているパジャマを着ている。


・・・・可愛い


「あ、真二どうしたの?」

「え、あ、えーっと、ちょっと水でも飲もうと思って」


ついつい見ほれてしまっていた俺は声をかけられたことによってどもり気味だ。


「それだったら、やかんに麦茶作ってあるからそれ飲んだら?」

「ああ、そうさせてもらうよ」

「あと、寝る前にはちゃんとお風呂入ってね」

「え?ああ、そういえばまだ入ってなかったな」

「ちょっと、しっかりしてね。じゃあ、私はもう寝るから。おやすみ」

「おう、おやすみ」


咲は眠そうに目をこすりながら自室へ戻っていく。


コップに注いだ麦茶を一気に飲み干した俺は着替えを持って、浴室に向かう。


その瞬間、体全体に衝撃が走る。体を震わせるような強い邪気。もし、普通の人間がこの邪気を感じ取ったなら、体中が震えて、立っているのがやっとだろう。

久しぶりの感覚だ。これは・・・・魂霊!!

「そろそろ寝過ぎで頭がゆるくなりそうな頃だったんだ。ちっと風呂の前に汗でも流してくるかな」


手に持っていた着替えが床に落ちる。

家を飛び出した俺は一気に音速まで加速して邪気の気配をたどる。

目的地までの距離は3kmくらいだろう。

まあ、音速で移動してるから数秒で着いてしまうのだが。


恐ろしい速さで邪気の中心に近づいていく。

気づけば俺は既に使われなくなった病院の中にいた。


「な、なんでこんな気味悪いとこに現れるんだよ」


正直俺は幽霊とかは大の苦手だ。

そんなので魂霊とまともに戦えるのかという声が出てきそうだが、問題無い。

・・・・

・・・・

・・・・

・・・・あんまり話したくないんだよ!!恥ずかしいから!!


「さ、さ~て、魂霊はどこに隠れているのかな?」


俺は軽く怯えながらも目を閉じて身体中の神経を研ぎ澄ませる。

この建物全体に邪気が充満していて相手の位置が分かりにくい。が、一ヶ所だけ邪気が若干強いところがある。


「そこか!」


叫ぶと同時に炎の矢を放つ。爆発音と共に積まれていた段ボールが炎上する。

しかし、次の瞬間。激しく燃えていた炎が一瞬にして消えた。


「!?」


どういうことだ?炎があんなに早く消えるなんて。


魂霊が煙からその姿を現す。頭が2つあり、片方の頭と前足は獅子。もう一方の頭と胴体から後ろ足にかけては山羊のそれを持ち、竜の尻尾を引きずっている。


「・・・キマイラか。戦うのは初めてだが、さっさと終わらさせてもらうぜ!」


「グワワアアアアア!!!」


俺の声に答えるかのように雄たけびを上げたキマイラは獅子の口から炎を吐き出す。

それを高速移動でよけた俺は一気にキマイラの背後に回る。


「風刃」


刃となった無数の風が飛んでいく。風刃がキマイラの身体を切りつけ、深紅の液体が飛沫をあげる。


キマイラが怯んでいる隙にいっきに距離を縮める。そして術式展開。


「炎華!!」


激しく炎の華が咲き乱れる。キマイラの身体がその美しい華に焼かれる。そう思われた。が、炎はみるみるその身体に吸収されていく。


「な!?俺の炎華が吸収された!!」


自分の攻撃が効かないことに驚きを隠せないでいると、二つの頭が口を開けた。次の瞬間には灼熱の火炎が両方の口から吐き出される。

どうやら、俺の炎の矢と炎華を吸収した分だけキマイラの炎の威力が増しているようだ。

さっきの炎とは比べ物にならない熱量と圧力を近くで感じた瞬間、俺は炎に飲み込まれていた。



■□■□■



私が部屋の電気を消して寝ようとしたとき、玄関のほうから物音がした。

どうしたのだろう?と私は瞼をこすりながら玄関に向かう。

すると、台所の前に真二のものと思われる着替えが落ちていた。玄関を見ると、ドアが開けっ放しになっている。


こんな夜中に、しかも下着をその場に捨てて出て行くとしたら理由はひとつしか考えられない。


「また、魂霊が・・・・?」


魂霊・・・術師・・・・なぜ真二があんな化け物と戦わなきゃいけないのか。

理由なんか初めからわかっている。真二の家が代々術師の家系だから。真二の霊力は並外れているから。

でも・・・・それでも真二に戦ってほしくないと心から思う。それが、私の我侭だということはわかっているのに。


今の私にできることは真二を応援することしかない。


「・・・・・真二、頑張って」





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