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Get the Dream   作者: nora
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第三十八話 白髪の風人

俺はどうかしていた。

相手を倒すことばかり考えていたら、いつの間にか全員殺してしまえ、なんて考えてしまった。

俺の本当の願いは恐一郎を倒すことか?殺すことか?

違う。

俺が本当にやりたいことは、咲を、悠樹を、楓を、みんなを、守ることだ!


「咲、ちょっと下がっていてくれ」

「うん」

「恐一郎、もうさっきまでの俺とは違うぜ。今度こそお前を倒す」

「フッ、そう簡単にはやられませんよ。私のペットたちよ、アイツを殺ってしまいなさい」


その瞬間、空間が裂けて真っ暗な闇の中から、数十体もの魂霊の群が次から次へと出てきた。


「どうです?私は魂霊を完全に支配する力を手にいれたのです」

「ザコが何体来ようと一緒だ!」


術式を展開。

炎の矢、一斉射撃。


凄まじい数の矢が一斉に放たれる。

ゴブリンやワームといった下級魂霊は一掃されてしまった。


「オイオイ、マジかよ」


が、まだヒュドラやキマイラが数匹、一番奥にドラゴンが一体、目を光らせている。


「真二、加勢するわ」

「楓、助かる」

「あいつら、どうやって倒す?」

「二対一で片っ端から潰していくしかねえだろ!」


二人いれば相手を倒すスピードも大幅に変わってくる。

霊刀に炎と風を纏わせ、一気に突っ込む。


「炎風一閃!」

「烈火桜塵-初式-!」


二つの太刀が次々に上級クラスの魂霊を斬り倒していく。

が、やはり戦力に差がありすぎる。


相手が一斉攻撃を仕掛けてくると、避けるしかない。

これではらちがあかない。


「クソ、こりゃやべーな」

「うん、キマイラとヒュドラはなんとかなるけどドラゴンが手強いわ」


「真二、お前の修業の成果はそんなものなのか?」


突然俺に向かって放たれた聞き覚えのある声にハッと振り向く。


「親父!?」


俺の背後にはいつの間にか親父が立っていた。


「お前はあの結界から出ることができたんだ。それがどういう意味か分かるな?」

「でも、あれは俺がおかしくなっただけで・・・」

「確かにそうみたいだったな。だが、もう正気に戻っている。今のお前ならできるさ」

「でも、どうやって・・・」

「お取り込み中申し訳ありませんが、あなたたちの敵はこっちですよ」


ふと気付くと何体もの魂霊が口をこちらに向けて霊力の塊を放とうとしていた。


「やばっ!!」


これは避けられない。

これを喰らったら死なないまでも戦闘不能は必至だ。

俺はここで倒れるわけにはいかない。

さっき誓ったじゃないか。

俺はみんなを、守るんだ!!


「うおぉぉぉおおお!!!」


霊力の純度をどんどん上げていく。

身体の奥深くでバチバチと火花が散っているのが分かる。


「咲!俺の後に隠れろ!」「え?」

「いいから早く!」


咲が俺の背中にしがみついたのを感じたとき、俺と咲は魂霊たちによって放たれた力の塊の中に呑み込まれた。



□■□■□



真二と楓ちゃんが魂霊の放った光線の中に呑み込まれてしまった。


「真二!」

「真二、楓ちゃん!!」


私と悠樹くんが叫ぶ。

衝撃で舞い上がった砂ぼこりで二人の姿をが確認できない。


「フフ、所詮はザコでしたか。風雲と言ってもやはり分家。私には勝てませんよ。フハハハハハ」

「それはどうかな」

「!?」


舞い上がっていた煙と砂ぼこりが一気に晴れる。

そこに立っていたのは髪が真っ白に染まった真二だった。


「え?真二、なの?」


手に持った刀も心なしか白く光っているように見える。

みんなが驚きを隠せない中、恐一郎だけ様子が少し違った。


「ま、まさか。いや、そんなはずはない。あいつは一分家の身。あいつにそんな血からがあるわけが・・・ないッ!!あなたたち、殺ってしまいなさい!」


魂霊が一斉に真二に雪崩れ込んでいく。


「烈風・塵の舞」


物凄い突風が魂霊に襲いかかる。

刃を孕んだ風が次々と魂霊の肉片を飛ばしていく。

たった数秒で魂霊を木っ端微塵にしてしまった。


「ばかな・・・、私の魂霊たちが意図も簡単に一掃されるなんて・・・」

「次はお前の番だ、恐一郎」

「このッ、おのれええぇぇぇぇぇ!!!」


恐一郎は全身に黒い風を纏い、目に求まらぬ速さで真二に突っ込んでいく。


「遅い」


次の瞬間には恐一郎が真二とは反対向きに吹っ飛んでいた。

その圧倒的な力の前に恐一郎はまさに為す術なしといった風であった。


「この力、白い髪・・・まさか本当に、お前が真の継承者だというのか!?分家であるお前がぁああああ!!!」

「そうだ。本家のお前ではなく、うちの真二が御六風神家の継承者だ。憑魔に身体を売るような奴は継承者たりえん」


真二のお父さんが真二の隣に並び、答えた。


「私の求めるものは力。絶対的、圧倒的力。御六の力なんぞに我が崇高なる魔の力が屈してたまるものですか・・・!」

「無駄だ。お前は俺に勝つことはできない」


そう言った直後、真二は恐一郎の背後に移動していた。


「ヒィッ!!」

「終わりだ」


校庭に今までにない強力な風が吹き荒れた。


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