第三十話 友のいない世界
真二が学校を休み始めて数日が経った。
「ったく、大谷はいつまで休んでるのよ」
「そんなもん知るかよ」
「ねぇ、あんたは大谷のこと気にならないわけ?」
「・・・そんなわけねえだろ」
真二の奴、親友の俺にくらい連絡しろよ。
俺はお前を支えるにはまだ力不足だってのか?
「あのバカ・・・」
真二の家ではあんな風に言ったが、正直、真二が何を隠しているのか気になってしょうがなかった。
真二が休み出してから一週間が経とうとしている。
この一週間、苛立ちが募る一方だ。
「俺、もう帰るわ」
「え、悠樹君また帰っちゃうの?」
「・・・」
「ああ、悪いな」
授業なんて受ける気分じゃない。
俺は鞄をもって教室を出た。
今は咲ちゃんも霧島も俺が授業をサボることに文句は言わない。
きっと俺が真二のことでイライラしていることに気を使ってくれてるんだろう。
咲ちゃんも辛いはずなのに。
俺は弱いな・・・。
■□■□■
「え、悠樹君また帰っちゃうの?」
「ああ、悪いな」
悠樹君はここ最近ずっと早退している。
いつもイライラしてるみたいだけど、ちゃんと毎日登校はしてる。
きっと、真二が学校に来るのを待っているんだ。
でも、もう来ないと分かるとすぐに帰ってしまう。
「そういえば咲は落ち着いてるわよね」
「え?そんなことはないよ・・・まあ、悠樹君よりは落ち着いてられるかもだけど」
別に私が真二の心配をしていない訳ではない。
すごく心配だし、真二が大変な怪我をしているかもしれないっていう不安だってある。
「知ってるからね、理由」
「え?理由を知ってるって、大谷が休んでいる理由?本当に?」
「詳しいことはわからないけどね」
「相川には教えてあげないの?」
「うん・・・事情が事情だし、それに悠樹君も真二が直接話してくれるのを待つって」
「そっか」
さすがにホイホイと霊術師だ魂霊だなんて話はできない。
それに話しても信じてもらえないかもしれないし。
「待とうよ。真二が学校に戻ってくるのをさ」
私は笑ってそう言った。
□■□■□
俺は家に着くなりベッドに身を放り投げた。
安っぽいベッドがギイィと悲鳴をあげる。
このまま寝てしまおうとも思ったが、なかなか寝付けなかった。
しばらく何も考えずに呆けていると、だんだん腹が減ってきた。
時計を見ると12時ちょっと前。
どおりで腹が減るわけだ。
俺は家に買い置きしてあったカップ麺を特に味わうこともなく食べた。
そのあとは先月買ったテレビゲームをプレイしてラスボスをなんとか倒した。
その後もしばらくプレイしたが、ゲームなんてものはクリアしてしまえば後は退屈なもので。
本棚にズラリと並んだマンガを読むことにした。
何年も前から集めているマンガの一巻を手に取ると、ベッドに横になってページをめくり始めた。
ふと気が付くと俺はベッドに横たわっていた。
どうやらマンガの続きを読んでるうちに眠ってしまっていたようだ。
現在時刻9時。
「ちょっと寝過ぎたな・・・」
飯を食って風呂に入ってテレビで時間を潰した後も全然眠くならない。
まあ、昼間あれだけ寝れば寝れるはずもないのだが。
俺は少し散歩に行くことにした。
なんとなく夜の秋風に当たりたいと思った。
コンビニでジュースを買ってから近くの高台に向かった。
あそこからはこの町が一望できて、夜景もキレイだったりする。
けっこうカップルがいたりすることも珍しくはない。
高台まで行く間は誰にも会わなかった。
深夜12時
当たり前といえば当たり前だ。
高台から北泉市をしばらく眺め、さっき買ったジュースを少し口に含むと、炭酸が口の中で暴れ回る。
ベンチに横になって空を見てみると星がポツンポツンといくつか光っていた。
どのくらい経ったのだろう?
ぼーっとしていると、流石に体が冷えてきた。
そろそろ帰ろうと体を起こすと・・・
「・・・っ!?」
あまりの驚きに声も出なかった。
俺の目の前に巨大なカブトムシの幼虫みたいな化物が湧いていたのだから。
それも一匹や二匹じゃない。
ざっと十二、三匹はいるだろう
・・・嘘、だろ!?