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白光の女神  作者: 空月 紫音
序章 
1/1

第1話 リーニャの泉で

 初投稿です。

 至らぬところもありますが、よろしくお願いします。

 優しい風が頬をなでる。


 ルナは、大きく欠伸をしながら目を開けた。すると、そこには澄んだ青い空が見えた。所々に浮かんでいる雲は、綿菓子の様でとてもおいしそうだ――って、青空!?


(何で青空が見えるの!?)

 

 あわてて飛び起き、辺りを見回す。


 濃い緑の木々。

 名も知れぬ色とりどりの花々。

 その中心にある、昏々と水の湧き出る泉。

 

 目の前に広がっているのは、信じられないほど美しく、神秘的な光景だった。


(…………そう、これは夢。絶対に夢だ)

 

 そう思い、自分の頬を思いきり抓る。


(……痛っ…………ということは、現実!?)


 ひとまず混乱している頭を総動員して、なぜこんなところに居るのか、昨日の夜のことを思い出そうとする。

 

(え~と、確か昨日は『ユアンゼイク』をして、ログアウトしたら……眠たくて寝てしまったはず…………だよね?)


 自分に問い掛けてみる。だが、どう見ても自分の部屋ではない。

 まさか――と、≪スターテス表示≫と唱える。

 すると、見慣れた自分のスターテスが目の前に現れる。案の定、ログアウトという文字はどこを探してもない。一応、自分の姿も見てみる。


 青いワンピースもどきの服に、腰に提げている短剣と茶色い袋。腰ほどまである藍色の髪。鏡がないのでわからないが蒼色には違いない瞳――を見て確信した。


「なんで私、『ユアンゼイク』の世界に来ているのーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」


 『ユアンゼイク』とは、創造神ユアンゼイクが創ったされる異世界が舞台のVRMMORPGだ。

 自分で武器や魔法、料理などを創造できるという自由度の高さから、数多あまたの熱狂的ファンと廃プレイヤーをつくり出した大人気ゲームで、ルナも毎日のように遊んでいた。なので、ゲーム内最高レベルである1000レベルまで育てて、転生も3回ほどしている。そんなゲームを熟知しているはずのルナでも、こんな場所は知らないし、聞いたこともない。


「ここは、どこ……?」


 思わず呟いてしまったが、誰もそんな問いに答えるはずもない。はずなのだが――


「ここは、私の泉です」


 突然、後ろから聞こえてきた声に思わず振り返る。

 

 ありえないほど整った目鼻立ちに、角度によって濃さの変わる金色の瞳。地面につくほどまで伸ばされた、緩やかなウェーブがかかった白金の髪。身体から発せられる、強大な神々しい力の波動。



 女神リーニャ


 

 それが、目の前に立っている人物の名前だ。

 数々いる神々の中で、創造神であるユアンゼイクをのぞいて最高だと言われる高位神であり、自然と魔法を司る神だ。

 ルナでも数えるほどしか会っていない神でもある。


(なんでこんなところに…いるの……?)


「それは、私がここに連れてきたからです」

 

 リーニャは微笑を浮かべる。

 花のように美しい笑みにルナはポーッと、見とれる。だが、聞き捨てならない事を聞いたような気がして正気に戻る。


(連れてきたーっ!?)


 その言葉による衝撃は相当なもので、頭を思い切りたたかれたような感覚に陥る。

 そんなルナの様子にリーニャは気付き、慌てて言葉を紡ぐ。

 

「私は、“異界の穴テプト”から落ちてきて、倒れているあなたをここに連れてきただけです」


(“異界の穴テプト”?)

 

 聞いたことのない言葉に首をかしげる。

 

「この世界にある、異世界へ繋がっている穴のことです。あなた方は昔、ここに来ていたときも“異界の穴テプト”を通って来ていたんですよ。そのときは体ではなく、魂だけでしたが」


(昔!? ていうか、魂!?)


 衝撃の事実に、ルナは驚きおののく。


「はい。700年昔ぐらいから“異界の穴テプト”を通り、“異界の穴からの勇者テプト・ラグンナ”と呼ばれるあなた方がやって来たのです。

あなた方は、この世界を巣食う、魔物達を倒してくれましたが、400年昔から来なくなってしまったのです。それからでしょうか、“異界の穴テプト”は暴走し、魔物などが通って来るようになりました。そして、あなたの様に、魂だけではなく体も引きずり込まれてしまう“異界の穴からの勇者テプト・ラグンナ”が続出してしまったのです」


 一息もつかずそういう言うと、リーニャはこちらを見てにっこりと微笑む。

 ルナはその笑みを見て、なぜか死刑宣告をされる囚人のような気持ちがした。そして、リーニャが言う次の言葉に身構える。







「なので、ルナ。神になってくれませんか」






「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ」


 ルナから放たれた素っ頓狂な声に同意するかのように、木々が身を揺らした。

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