表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/13

EP 9

357マグナムは魔法を貫く

「へっ、デカブツが! 俺様たちの邪魔をするなら、スクラップになる覚悟はできてんだろうなぁ!」

 鮫島の合図と共に、イグニスが吠えた。

 彼は口から紅蓮の火炎を吐き出し、それを自らの両手斧グレートアクスに纏わせる。

 さらに全身の毛穴から、真紅の闘気が噴き出した。

「舐めんじゃねぇぜ! これが俺様の……俺流! 必殺! 『大火炎旋風ダイ・カエン・センプウ』ッ!!」

 ゴォォォォォッ!!

 イグニスは炎のコマのように高速回転しながら、ゴーレムの懐へと突っ込んだ。

 遠心力と重量、そして爆発的な熱量が乗った連撃。

 ガガガガガッ!

 先ほどまでは傷一つ付かなかった古代の装甲が、飴細工のように斬り刻まれ、溶解し、剥がれ落ちていく。

「ヴ、ヴヴ……装甲破損。近接防御、突破サレ――」

 ゴーレムが体勢を崩したその瞬間。

 倉庫の壁を蹴る音が響いた。

「私の本気、見せてあげる!」

 キャルルだ。

 彼女はクラウチングスタートの姿勢から、瞬発力だけで音速の壁を突破していた。

 キィィィン!!

 衝撃波ソニックブームが遅れて響く中、彼女は倉庫の壁を三角飛びで蹴り、さらに加速する。

 その足元、鉄芯入り安全靴のソールに仕込まれた『雷竜石』が、バチバチと激しいスパークを放った。

 全闘気を右足一点に集中させる。

「必殺! 『スーパー・ライトニング・メテオ・ストライク』ッ!!」

 稲妻を纏った流星の如き飛び蹴りが、イグニスが削り取った装甲の隙間――ゴーレムの胸部装甲の真ん中に突き刺さった。

 ドッゴォォォォォン!!!!

 轟音。

 5メートルもの巨体を持つ鋼鉄の怪物が、まるで紙屑のように宙を舞い、倉庫の奥の壁へと叩きつけられた。

「ガ、ガガ……システ……ム……エラ……」

 ゴーレムの動きが止まる。

 だが、その胸部の奥、露出した魔力炉コアは、まだ不気味な光を放ち、自爆シークエンスへ移行しようとしていた。

「……上出来だ、馬鹿ども」

 硝煙と粉塵が舞う中、鮫島が歩み出る。

 その手には、愛銃『Korth』が握られていた。

 部下たちがこじ開けた、ほんのわずかな装甲の亀裂。その奥にあるコアだけを、鮫島は見据えていた。

 狙いは一点。

 引き金に指をかける。

 ドゥン! ドゥン!

 重厚な発砲音が二度、倉庫に響き渡った。

 放たれたのは、女神ルチアナ直通の『神気コーティング弾』。

 弾丸は正確無比にコアを貫き、内部で炸裂した。

 パシュン……。

 ゴーレムの赤い瞳から光が消え、巨体が完全に沈黙した。

 圧倒的な質量が崩れ落ちる音が、戦闘の終わりを告げた。

「ひ、ひぃぃぃ! 化け物だ! こいつら人間じゃねぇ!」

 ゴーレムを失った黒幕の男が、腰を抜かして逃げようとするが、すぐにイグニスに首根っこを掴まれた。

「……ふぅ。終わりだな」

 鮫島は銃をホルスターに戻し、周囲を見渡した。

 敵は壊滅。証拠品も確保。作戦は成功だ。

 ……しかし。

 メラメラメラ……。

 イグニスの『大火炎旋風』の余波で、倉庫内の木箱や壁が景気よく燃え上がっていた。

 さらに、キャルルの『スーパー・ライトニング・メテオ・ストライク』の衝撃で、倉庫の屋根と柱の大半が消し飛んでおり、建物は半壊どころか全壊に近い。

「…………」

 鮫島は燃え上がる倉庫と、夜空が見えてしまっている天井を見上げた。

 懐から赤マルのソフトパックを取り出し、一本くわえて火をつける。

 深く吸い込み、紫煙を吐き出す。

 脳裏に浮かぶのは、リベラが持ってくるであろう、天文学的な数字の請求書。

「こりゃあ……俺の給料から差し引かれるか?」

 鮫島は燃え盛る炎を見つめ、自嘲気味に呟いた。

「……まさかな」

 そう自分に言い聞かせなければ、やっていられなかった。

 T-SWATの夜は、まだ明けない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ