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EP 8

制圧! マッハと爆炎の協奏曲コンチェルト

「ヴヴヴ……。脅威レベル修正。最大火力ニヨル殲滅ヲ推奨」

 全長5メートルの魔導ゴーレムが、ゆっくりと首を回した。

 その複眼が赤く明滅し、倉庫内にいる生体反応を次々とロックオンしていく。

「へっ、デカい図体しやがって! ただのデクの棒だろ!」

 最初に動いたのは、やはりイグニスだった。

 彼は自慢のグレートアクスに紅蓮の炎を纏わせ、正面からゴーレムに突っ込んだ。

「俺様の『イグニス・ブレイク(通常版)』で、スクラップにしてやるぜェェ!!」

 ドォォォォンッ!!

 凄まじい衝撃音が響き、火花が散る。

 だが、ゴーレムは一歩も退かなかった。

 斧の刃は、古代の魔導合金で作られた装甲の表面をわずかに削っただけで、弾き返されていた。

「なっ!? 硬ってェェ!?」

「ターゲット、近接物理攻撃ヲ確認。迎撃シマス」

 ゴーレムの巨大な腕が、人間にはありえない速度で振り下ろされた。

 ガァンッ!!

「ぐべらッ!?」

 イグニスがボールのように吹き飛ばされ、倉庫の壁に激突した。

 コンクリートの壁が蜘蛛の巣状にひび割れる。

「い、ってぇぇ……! クソッ、この鎧(ルチアナの横流し品)着てなきゃ、骨が折れてたぜ……!」

 イグニスはふらつきながらも立ち上がる。さすが竜人、タフさだけは規格外だ。

「ちょっとトカゲ! あんたが正面から行ってどうすんのよ!」

 キャルルが呆れた声を上げながら、マッハの速度で戦場を駆け抜ける。

「こういうのはね、関節とかの隙間を狙うのよ! 見てなさい!」

 彼女は残像を残しながらゴーレムの周囲を旋回し、膝の関節部分に狙いを定めた。

 安全靴の鉄芯が唸りを上げる。

「月影流・鐘打ちィッ!」

 キンッ!

 軽い金属音が響いただけだった。

 関節部分でさえ、隙間なく重厚な装甲板で覆われているのだ。

「嘘でしょ!? 隙間がない!?」

「高速移動物体ヲ検知。広範囲制圧兵器、使用」

 ゴーレムの胸部装甲がスライドし、無数の発射口が現れた。

 シュシュシュシュシュッ!

 放たれたのは、魔力で形成された誘導弾の雨だ。

「きゃあああ!? ちょっと、ズルいじゃない!」

 キャルルは悲鳴を上げながら、超反応でそれを回避する。

 だが、誘導弾は執拗に彼女を追いかけ、倉庫の床や柱を次々と爆砕していく。

 爆風でススだらけになったキャルルが、涙目で鮫島の方を見た。

「隊長ぉぉ! こいつ、物理が効かないし、すばしっこいし、どうにかしてよぉ! 残業代割増じゃなきゃやってらんない!」

「……チッ。厄介な代物だな」

 鮫島は物陰に身を隠し、Korthのリボルバーに弾を込めながら、冷静に戦況を分析していた。

(古代の遺物レガシーか。物理耐性、魔法耐性ともにSクラス。おまけに自動追尾システム完備ときた。まともにやり合えば、ウチの馬鹿二人でもジリ貧だ)

 ゴーレムを起動させた黒ローブの男が、瓦礫の陰で狂ったように笑っている。

「ハハハ! 無駄だ無駄だ! そのゴーレムは、かつて魔王軍の一個師団を単独で壊滅させた化け物だ! 貴様らごとき冒険者崩れに倒せるものか!」

「ヴヴヴ……。魔力充填完了。メインキャノン、発射体勢」

 ゴーレムの動きが止まった。

 その口にあたる部分がガシャリと開き、内部で莫大な魔力が渦を巻き始めた。

 戦略級の魔導砲だ。撃てば倉庫はおろか、港湾地区が消し飛ぶ。

「や、やべぇぞ隊長! あいつ、本気で撃つ気だ!」

「キャルル、逃げる準備! ……あ、でもまだ結婚資金が……!」

 部下たちがパニックになる中、鮫島は静かにタバコの火を揉み消した。

 リボルバーの装填は完了している。

「……イグニス、キャルル。聞け」

 インカム越しの鮫島の声は、氷のように冷徹だった。

「え? な、なに?」

「あのデカブツの注意を引け。……俺に、たった一発撃つだけの隙を作れ」

「はぁ!? 俺たちを囮にしろってのかよ!」

「そうだ。失敗すれば、全員ここで蒸し焼きだ。……やれるな?」

 SWAT隊長からの、絶対命令。

 イグニスとキャルルは顔を見合わせた。

 文句は山ほどある。だが、この男が「やれ」と言うなら、勝算があるということだ。

「……チッ、しゃーねぇ! やってやらァ!」

「もう! 今度タロウキングで一番高いパフェ奢りなさいよ!」

 二人が同時に飛び出した。

 イグニスが正面から最大火力のブレスを吐き、キャルルが側面から瓦礫を投げつけて視界を塞ぐ。

「ヴヴヴ……。撹乱行動ヲ確認。迎撃ヲ――」

 ゴーレムのセンサーが一瞬、二人の動きに気を取られた。

 そのコンマ数秒の隙。

 鮫島勇護は、遮蔽物から身を乗り出した。

 両手でしっかりとKorthを構え、息を止める。

 狙うのは、魔力光が渦巻くゴーレムの口腔内――その奥にある、微かな魔力炉の輝き。

「……時代遅れのスクラップが。現代の銃弾(鉛)の味を教えてやる」

 引き金が引かれた。

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