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EP 10

請求書とカツ丼の宴

 夜が明け、港湾地区には王都警備隊のサイレンが鳴り響いていた。

 半壊……いや、ほぼ全壊した第4倉庫の前で、黒犬傭兵団の生き残りと、ギルバート商会の幹部たちが次々と連行されていく。

「は、離せ! 俺は知らない! 勝手にゴーレムが暴れただけだ!」

「弁護士を呼べ! 優秀な弁護士を!」

 往生際悪く叫ぶ幹部の前に、一台の高級馬車が滑り込んだ。

 降りてきたのは、朝日を浴びて輝くハニーブロンドの美女、リベラだ。

「お呼びですか? 優秀な弁護士なら、ここにいますわ」

「おぉ、リベラ先生! 助かった、弁護を頼む!」

 幹部がすがりつくが、リベラは冷ややかな瞳で眼鏡の位置を直した。

「お断りします。……今回の私の依頼人は、貴方がたではなく『太郎国』ですので」

「な、なんだと……!?」

「貴方がたが隠していた裏帳簿、および魔導兵器の密輸ルート。全て証拠は揃っていますわ」

 リベラは優雅に扇子を開き、口元を隠して微笑んだ。

「それに、子供たちに薬物を売るような外道……私の美学に反しますの。塀の中で、たっぷりと反省なさい?」

「き、貴様ァァァ!!」

 絶望の悲鳴と共に、幹部は護送馬車に押し込まれていった。

 それを見届けたリベラは、瓦礫の山に腰掛けてタバコを吸っている鮫島の方へ歩み寄った。

「お疲れ様です、鮫島隊長。……相変わらず、派手にやりましたわね」

「証拠品(魔導ゴーレム)まで壊しちまったがな」

「あら、構いませんわ。アレが動いていたという『事実』と、破壊された『残骸』があれば、法廷で十分に立証できます」

 リベラは瓦礫の山を見上げ、ふふっと笑った。

「今回は貸しにしておきますわ。……次は、私が弁護したくなるような『マシな悪党』を捕まえてくださいな」

「……善処する」

 ***

 数日後。

 T-SWAT本部(汚い倉庫)。

「……おい隊長。給料日はまだかよ。腹減って死にそうだ」

「私の残業代は? ボーナス査定はどうなってるの?」

 ドラム缶のテーブルを囲み、イグニスとキャルルが詰め寄ってくる。

 鮫島は無言で、王宮から届いたばかりの『報酬明細書』をテーブルに広げた。

「今回の報酬金は、金貨50枚だ」

「おおっ! 50枚! 大金じゃねぇか!」

「やった! これで安全靴の新モデルが買える!」

 色めき立つ二人。

 だが、鮫島は静かに、その下の『控除項目マイナス』の欄を指差した。

「……だが、ここを見ろ」

* 第4倉庫 再建費用(全壊のため): -金貨30枚

* 港湾地区 道路修繕費(落下衝撃による): -金貨10枚

* 特殊弾薬・装備補充費(ルチアナ商会へ支払い): -金貨15枚

* 情報提供料(リーザ様飲食代・タロウキング他): -金貨3枚

「……合計、マイナス金貨8枚だ」

 シン……と静まり返る倉庫。

 イグニスの口がポカーンと開き、キャルルのウサ耳がヘナヘナと萎れる。

「は、はぁぁぁ!? マイナス!? 俺様たちの働きがマイナスなのかよォ!?」

「嘘でしょ!? 私の結婚資金が遠のいていく……!」

「倉庫を燃やすなと言ったはずだ。屋根を蹴り抜くなと言ったはずだ。……これはお前らの給料から天引きだ」

 鮫島は淡々と告げたが、実際には彼自身の貯金も切り崩さなければ足りない計算だ。

「そ、そんなぁ……。今日の飯はどうすんだよ……」

 絶望するイグニスに、鮫島はビニール袋を放り投げた。

 中に入っていたのは、タロウソン(コンビニ)の『のり弁』が3つ。

「……今日のところは、これで我慢しろ。俺の奢りだ」

「た、隊長……!」

「ちくしょう、次はもっと稼いでやるからな!」

 三人はドラム缶を囲み、黙々とのり弁を食べ始めた。

 ちくわの磯辺揚げを齧りながら、鮫島はふと、悪くない気分だと感じていた。

 金はない。部下は馬鹿だ。装備は高い。

 だが、背中を預けられる仲間はできた。

「……悪くないチームだ」

 鮫島が呟くと、イグニスとキャルルは口いっぱいにご飯を頬張りながら、ニカッと笑った。

 その時。

 倉庫のFAX(魔導転写機)が、ギーギーと音を立てて一枚の指令書を吐き出した。

 鮫島がそれを手に取る。

 そこには、新たな凶悪犯罪組織の名前が記されていた。

『通達。特殊能力者集団【ナンバーズ】の活動が確認された。至急、調査せよ』

「……ナンバーズ、か」

 鮫島は指令書をくしゃりと握りつぶし、新しい赤マルに火をつけた。

 紫煙の向こうで、彼の瞳が狩人の色に変わる。

「休憩は終わりだ。……行くぞ、野郎ども」

 T-SWATの戦いは、まだ始まったばかりだ。

 法で裁けぬ悪がある限り、357マグナムの火が消えることはない。

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