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また一人、運びました
カーナビの時計が深夜2時を指す頃、梶原ユウジは大型トラックの運転席でため息をついていた。
「……今日は、いねぇといいけどな。飛び出してくる若者」
彼はもう、数えきれないほどの「事故」を起こしていた。
もちろん、どれも不思議なほど“事故処理”されない。警察も、記録も、すべて無かったことになる。
代わりに――
「また運びましたね! お疲れさまです、ユウジさん!」
助手席にいつの間にか座っていたのは、金髪ロングに白いローブをまとった謎の女神・レティア。
「今回は“死にかけ勇者候補No.43952”。現代での使命に疲れた系男子です。ちょうどいいです!」
「お前な……せめて歩道で転ばせろよ。ブレーキ痕、毎回怖いんだよ」
「えへっ、でも“異世界送致システム”はユウジさんの運転じゃないと発動しないんですもん!」
ユウジは目を閉じ、頭を抱えた。
「俺……トラックで、何人転生させてんだろうな……」
彼はまだ知らなかった。この“運び屋”という役目の裏に、異世界を統べる神々の企みが隠されていることを――
そして、自分自身が“最終トリガー”であることを。