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Il Dilust

「あぁ、またやっちゃった〜」


女性が横たわるベッドの縁で、ため息混じりに煙草の煙を吐く。俺の人生、こんなことばっかだ。


「ま、いっか!俺、ビジュ良いし!こいつも俺に殺されて本望だろ」


幼い頃、母親に育児放棄されて、餓死しそうなところを児童相談所に見つけられて、叔母のところに預けられた。もう記憶にないくらいの幼い頃だったから、後でそれを叔母から聞いた時に「へぇ、酷い母親がいたもんだな」と他人事のように思った。けれど、その叔母に預けられたことこそが俺の人生最大の間違いだったかもしれない。叔母は初めこそ優しかったが、俺が小学五年生になった頃ぐらいから、俺への性的虐待が始まった。初めは何をされているか分からなかったし、これが正しい教育でみんな通るものだと思っていた。けれど、違和感に気づいたのは中学生の頃、クラスメイトとそうゆう話になって、自身の話をした際に誰かが「おかしいよそれ」とはっきり言ってくれた。その他に羨ましがるような声も聞こえたが、俺の脳内は叔母とそうゆうことをするのはおかしいことなんだっていっぱいいっぱいになった。そして、その夜から叔母とそうゆう雰囲気になった瞬間、叔母への嫌悪感が止まらなくなって、その嫌悪感が募りに募った時、俺は叔母の首を絞めていた。けれども叔母は、始めこそ抵抗する素振りを見せたが、最終的にそれを笑って受け止めた。俺が叔母の首を初めて絞めた日、叔母は俺にご褒美を渡すように一粒のチョコレートをくれたんだ。俺は叔母が恐ろしくて、そのチョコレートを口にした。それからというもの叔母は過激なプレイを俺に教え込んでは、それで満たされ、俺にご褒美をくれた。俺は叩いたら喜ぶ首を絞めたら喜ぶ叔母を見て、何処かおかしいと思いながらも、俺自身もそのおかしさに狂わされていった。気付けば近所の猫を殺していた。もちろん警察沙汰になったが、俺が殺した証拠もないため、特に何も言われなかった。ただ俺は生き物は何処まで首を絞めたら死ぬのかを調べたかっただけだった。俺は猫を殺したはずなのに、度が過ぎて叔母も殺してしまった。殺すつもりはなかった。けれど、気付いた時には叔母は冷たくなっていた。俺は母親と最愛の女性の二人を亡くした気分だった。だが、これで叔母からの性暴力から解放されると思えば少し清々しかった。さすがに今回は俺が殺したという証拠がありすぎて、俺は少年院送りになった。少年院では罪を償おうと一生懸命に日々の業務に努めたが、今までの習慣とは怖いもので、相手を支配して服従させたいという欲望がずっと俺の中で燻っていた。それができなくてニコチンが切れた時みたいに四六時中何に対してもイライラしていた。そしてその欲望が爆発した時、俺は教官を殴っていた。幸い謹慎処分で済んだが、こればっかりは欲望に支配される自分が嫌になって、独房の中で殴った教官に涙が枯れるまで謝った。教官から「お前は劣悪な環境で育っただけで、根は良い子だよ」という優しい言葉をかけてもらって、俺は「あぁ、俺がこうなったのは俺のせいじゃなく環境のせいなんだ」と責任転嫁を覚えた。そんな優しい教官の元、大人になった俺は少年院を出て、工場で働き始めた。軽作業の工場だったから、案外若い女の子がアルバイトとしていて、俺に初彼女ができた。彼女はとても可愛くて嫌がる素振りも愛らしくて、とてつもなく愛おしくて、俺は彼女を殺してしまった。俺は支配する愛情しか知らなかった、というか、支配する愛情が俺の性癖だった。だから、今でも仕方のないことだったと思う。けれど、彼女のことはとっても好きだった。でもそれで刑務所に入るのは嫌だったから、俺はなけなしの金で海外へと逃げて、路上生活を始めた。お腹が空いてゴミ箱を漁って生きていたある日、俺は名前もわからない金持ちそうな貴婦人に拾われた。彼女は俺とそうゆうことがしたくて俺を拾ったらしく、俺もその生活は叔母との暮らしで慣れていたので、特に嫌でもなかった。性欲が満たされれば俺自身、誰でも良かった。こんな暮らしが長く続けばいいな、と呑気に思っていたある日、彼女が俺のことを飽きたらしく、家から追い出そうとしてきたので、俺はそれに腹が立って、彼女をナイフで滅多刺しにしてしまった。俺はまたやっちゃった。って思いつつも、もう人を殺すのも三度目なので、特段強い罪悪感もなく、死体を川に捨てた。血だらけの部屋は心底居心地が悪かったので金品だけを奪って、その部屋から出ていった。部屋を出た瞬間、何とも清々しい気分になったのを今でも覚えている。それからはその金品を売り捌いた金で豪遊して、持ち前の顔の良さから金持ちの女に付け入っては、殺してしまうループを繰り返していた。みんなみんな、俺に愛されて死んでいく。俺は愛のある死神だった。イル・ディラスト(Il Dilust)という偽名は瞬く間に全国に広まった。俺は国際指名手配された。それでもなお、人々が俺に近寄るのは、愛ある死という魅力に抗えないからだ。

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