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今日も花が咲きました。それでは、どうぞ  作者: アマテラスちゃん
8/10

文化部忘年会1

深緑の長い髪の少女「ラブ」と俺は向い合う。先ほどまでずっと眠たそうにしていたのが嘘かのように鋭い目つきが俺を突き刺す。少しの沈黙の後、


「タカマサね…。あんた何者?」

「…。それはお互い様だ。」


 ラブが先に口を開く。


「正直に話して。じゃないと四肢ぶった切る。」

「ちょ、それはやりすぎだろ??」


 急に物騒な事を言われ驚きを隠せなかった。


「別に嘘をつくつもりはねえよ。俺が正直に言ったらラブ、お前も言ってくれるな?」

「ええ。約束するわ。」


 ラブの目つきが更にきつくなる。恋からちらっとラブのことは聞いていた。同じ祖父を持つ親族で魔界の王女様。正直、俺の知ってる話にこんな少女は出てこない。このラブの存在は不確定要素すぎてどう接すればいいのかわからない。


「ラブ。俺はタイムリープしている。」

「ええ。そうだと思ったわ。じゃないとあのタイミングの電話は信じられないもの。まるでレンを助けるかのように...」

「そこだ。なぜお前はタイムリープする前の記憶を維持してるんだ?恋も美月もそれ以外の人も記憶はないはずだ。」


 クリスマスの日、恋が死んだのを知った俺はその瞬間にタイムリープを決意した。巻き戻る先はその日の0:00。そこから、恋と美月がI市にいるという事を知り、更に夕方2人が分かれて散策し、最終的に恋が身を乗り出して死ぬことを知った上でそれに対処するための行動しようとした。だが恋は、


「ラブちゃんっていううちの親戚の子が橋の上には絶対に行くなって言うから皆で河川敷を調べることになったのよ。」


 と言った。正直バタフライエフェクト的なものかと思ったが、過去数回同じことをしてこんなことはなかった。いや、ここまで積み重なった結果、とも言えるのかもしれないが。


「なぜって聞かれてもね…。あたしも知らないわ。あなたのその力が弱まってきてるとかいう可能性は??」


 ラブは机から降り、窓の傍により下を見る。俺もラブのそばに行き下を見ると同じオカルト部のみんなが歩いて文化ホールに向かってるのが見えた。


 能力が弱くなってきている。そんなことは考えたことがなかった。この力に代償が…まあ、今でも無いわけではないのだが。


 俺が無言で考え事をしているとラブが歩き出した。


「行きましょ?歩きながらでも話せるわ。それに遅くなったらレンが怒るもの。」

「さっきから思っていたけど、何で恋が関わってくるんだ?」


 俺の返事を無視してラブはスタスタと部屋から出て行く。俺は小走りでラブを追いかけた。


「レンがね。あなたの話ばかりするの。それこそ耳にタコができるくらい。いや、もうできてるかも...。」


 追いついた俺の方を振りも向かずラブが話す。恋が?あいつとはまあ仲はいい方だろうが、そんな話題になるようなことにはしてないはずだ。


「なんかね。タカマサがーとかうるさいの。ま、別にいんだけれどね。レン、あんたの話してる時すっごく幸せそうだもの。」

「??そうなのか?まあ幸せそうならそりゃいいことだけど...。」


 はっきり言うと内心は嬉しかった。メインヒロイン兼学校の人気者が俺の事を幸せそうに人に話している。恋が笑顔でラブに話している姿を想像するとこっちも正直嬉しかった。


「タカマサ、あんた今日うち来ない?って言ってあたしが誘っていいのかしら?レンに嫉妬されないかしらね。」


 立ち止まり俺の方を振り返るラブ。その顔は先ほど向けていた厳しい目つきが嘘のように優しい目だった。


「...いや、遠慮させてもらおうかな。俺みたいなやつが学園のアイドルの家に行けねぇよ。」

「おっけー。なら学校終わったら一緒に家に行くわよ。」

「俺の話聞いてたか?」


 ラブが両手で俺の右手を優しく包む。その手は柔らかくドキッとしてしまった。近くで見るラブは恋となんというかオーラや雰囲気のようなものが瓜二つだった。それだけでなく、顔のパーツや背丈などの体つきもそっくりだった。深緑の髪でなく今の恋と同じグレーだったらと間違えるかもしれない。それほどまでに似ていた。


「やれやれ。まあ、行くよ。そういえば何回か誘われてたけど行ったことなかったしな。」

「そうなの??」


 意外ね。とラブは口に手を当て少し目を丸くする。意外と言われて俺もたしかにそうだなと思った。恋には何度も誘われても断っていたのにな。今回は何かに誘われてるのか...?まあ、そんなことはないか。


「じゃ、あたしの部屋でそのタイムリープとかの話は詳しくしましょ。因みにあんたがうちに来ることはレンには内緒ね。油断してる時にあんたが来て顔真っ赤にして恥ずかしがるのが見たいもの。さ、行くわよ。タカマサ!」

「ちょっ...!!」

 

 微笑んだラブが俺の右手を掴み走り出す。その掛け声も恋が俺に良く言っているものと同じだ。走り出したのはいいものの、ラブの足がめっちゃ早く足がもつれ途中転けそうになったのだが、ラブが支えてくれて無事だった。


「足遅いのね...。ならもうちょっとゆっくり走るわ...。」

「すぐそばだし別に走らなくてもよくないか?」


 タッタッタッと軽やかなリズムを奏でながら小走りで俺の手を引き走るラブ。ここまで接してきて感じたのは、やっぱり恋にそっくりなんだよなー...。


 ……。ここまで割と普通にラブに接してきたが冷静になって考えてみたらラブって普通に部外者だよな...。だけどまあ、姫先輩が別にダメとは言ってなさそうだし、休み期間中はいいか...。


 ホールの入り口に着き、ラブがゆっくりドアを開ける。文化ホールはかなり広いのだが、忘年会、正確に言うと文化部の合同忘年会を行うとまあまあ一杯になっていた。


 文化部は計31くらいだったか。それぞれの部活にどれくらい部員がいるかは正確にはわからないが、合計したら1000人ちょっと、ちょうど在学生の半分くらいはいるだろう。


 ラブと手を繋いだままホールに入ると1人の男子生徒が手を振って人混みを掻き分けて寄ってきた。


「よう!高雅!相変わらずシケた顔してんじゃんよ!」

「簡単くん…。これは生まれつきだよ…。」

「簡単じゃねーよ!貫太だっ!」


 近寄って背中を軽く叩いてくる茶髪のリーゼント男貫太(かんた)。彼は俺や恋と同じ1年生でラジコン部の副部長だ。とりわけかっこいい訳ではないが、情に熱く性格がイイ男だ。


「なんだ?その恋ちゃんそっくりな子は?お前に彼女出来たら美花ちゃん悲しむぞ??」

「ねえ、ミカって誰?浮気してるの?」


 ハイライトの消えたラブの目が俺を睨む。


「怖いからやめてくれラブ。簡単くんも!こいつはラブって言って恋の親戚の子らしい。」

「親戚か!なら納得だな!マジでそっくりだもんな!」


 ハハハと笑う簡単くん。その簡単くんの言葉にラブは首を傾げる。


「ねえ、カンタンクン。ミツキにも言われたのだけれどあたしってそんなにレンに似てるの??」

「だから簡単くんじゃねえよぉ〜!って言うのはさておき、雰囲気がそっくりだぜ!」


 ウインクをしながらグッと親指を立てる簡単くん。しかし、ラブは納得がいかない様子。


「親戚ってだけで、そこまで似るものかしら?」

「うーん…まあ、そういうこともあるんじゃねーの!ま、細かいことは置いておいた!はよオカルト部の席に行ってこい!もうちょっとで始まるぞ!」


 簡単くんが、俺とラブの背中を軽く押す。じゃあ、行きましょとラブが俺の手を引きまっすぐにオカルト部のみんなが居る場所へ導く。初めての場所のはずなのに何でこいつは迷いなく俺を引っ張っていけるんだ?


 オカルト部のみんなが居る場所に着くと恋が腕を組みしかめっ面で俺を睨んで来た。


「高雅!遅いわよ。あなたはわたしの隣。で、何でラブちゃんと手ぇ繋いでるの??」


 トントン、と恋の隣の椅子を叩く。そして、俺とラブを交互に睨みつけてくる。するとラブが恋を挑発するかのように。


「レン、遅いのはあんたよ。」

「なんですって??」


 髪をサラッとなびかせ、自然と恋の横にラブが座る。


「タカマサ。あんたはあたしの隣。」


 ラブが空いている椅子をぽんぽんと叩く。恋がちょっとラブちゃん??と言いよるも、


「ふん。まあいいわ。別に私高雅に興味ないし。」

 

 とそっぽを向き、隣で恋の隣でクスクス笑っていた美月になに笑ってんの?と八つ当たりをする。


 そうこうしているうちに、ホールの電気が落ち真っ暗になる。それと同時に正面にスポットライトが当てられ1人の女の子が出て来る。


「みなさーん!ようこそ部長引き継ぎ会兼文化部合同忘年会へ!この会の進行役を務めさせていただきます。女子ダンス部の副部長美花(みか)です!よろしくお願いしまーす!!」


 わーっ!と拍手や口笛で盛り上がる。いよいよ忘年会が始まるようだ。

 

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