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26.大和魂


――……囮の役目を担いながら、勇は猛威を振い続けた。

次から次へと襲いかかってくるサザギミ兵を薙ぎ払い、時には敵から武器を奪い、馬を乗り換え、絶え間なく攻撃し続けた。

そうして、どれくらいの時間が経ったか分からない頃。

ぐらり。

「……!?」

勇の目の前が歪んだ。

突如として襲いかかって来た眩暈に驚き、勇は馬の手綱を操りきれずに落馬してしまった!

落馬した勇を見たサザギミ部隊長が声を上げる。

「今だ! 異世界人を殺せぇえ!」

サザギミ部隊長の命令を受けるまでも無く、勇を取り囲んでいたサザギミ兵達が勇に斬り掛かる!

しかし。

「ぐあぁあっ!」

斬り付けられる直前になって、勇は自身の周囲を取り囲んでいたサザギミ兵達を薙ぎ払った!

落馬したにも関わらず、変わらぬ猛威を見せる勇にサザギミ兵はたじろぐ。

しかし、そうして反撃した直後、勇はまたガクッと体制を崩した。

「っぐ……はぁ、はぁ」

その様子を見て、サザギミ部隊長の側近が言う。

「……どうやら、魔力切れを起こしている様です」

微かに聞き取れた、魔力切れと言う単語を聞き勇は舌を打った。

やはり、一度は限界を知っておくべきだった……!

カトレアに火の魔法の扱い方を教えている時に、魔力切れの症状を聞いた事があったが、これほどとは思わなかった。

この世界に来て以来、魔力切れなどと言う症状に見舞われた事が無かった為に、訓練後などに勇が魔法を使うのを危惧していたカトレアには疑問しか浮かばなかった。

しかし、限界を知っていなければ、いざと言う時に危険だと言う事は自覚していたのだが……それが今になるとは。

尤も、今の今まで全力で魔法を使って来て、ようやっと魔力切れを起こしたのであれば、平時で限界を知る事は難しかっただろう。

目の前がぐらぐらと揺れ、猛烈な吐き気を催しながらも、勇は立ちあがろうと踏ん張る。

しかし、上手く立ち上がれず、またもその場に崩れ込む。

その様子を見たサザギミ部隊長が、にやりと不敵に笑った。

「命運尽きたな! 異世界人! さあ! そいつを今すぐ、殺……」

そこまで言ってサザギミ部隊長は思い直して言葉を変えた。

「いや、生け捕りにしろ! 我が王国に連れ帰り、国王陛下に奴隷として差し出すぞ!」

サザギミ部隊長の言葉を聞き、勇は怒りで食いしばった。

冗談じゃない! 敵軍に捕まるなど、死よりも恐ろしい生き地獄に放り込まれるのと同義だ! 捕まってたまるか! 死んでたまるか!

勇を捕らえようと近付いて来たサザギミ兵の足を見て、手持ちの刀もどきを抜刀して斬り付けて抵抗した。

「死に損ないに何を手間取ってる! 早く捕らえろ!!」

苛立ちながら言うサザギミ部隊長と、恐る恐る勇を取り囲むサザギミ兵達。

体全体で呼吸をしながらも、勇は吐き気に堪えきれずに嘔吐した。

ぐるぐると回る視界の中、近付いてくるサザギミ兵の手から逃れようと、勇は刀もどきをブンブンと振り回す。

先ほどまでの猛攻と打って変わって、力無い攻撃を繰り返す勇を見て、サザギミ兵達は顔を見合わせて笑った。

「異世界人如きが俺達に歯向かいやがって……!」

それまでの鬱憤を晴らそうと、サザギミ兵の一人が勇に向かって思い切り足を振り上げた!

振り上げられた足の影を見て、勇は衝撃に備えて歯を食いしばる。

次の瞬間。

「突撃ー!!」

そう響いた声の直後にサザギミ兵が次々と斬り捨てられていく。

勇を取り囲んでいたサザギミ兵達も、状況の変化を感じ取り体勢を整え直す。

すると。

「カジロ殿を援護しろー!!」

街中でサザギミ部隊を相手取っていた筈の、部隊長の大尉が勇の居る場所までアロウティ兵を引き連れて現れたのだ。

ぼやける視界で辛うじて大尉達の姿を確認した勇は、ゆらりと立ち上がって、周囲に居たサザギミ兵を薙ぎ払った。

そうして出来た隙を突いて、大尉が勇に駆け寄って来る。

「カジロ殿!」

「大尉殿……っ。何故……!?」

「北口から侵入して来たサザギミ兵の殆どは討ち取ったため、

半数を残し、もう半数を引き連れて貴方の援護に来た!」

簡潔な答えを受けながら、勇は大尉の肩を借りて立ち上がった。

「怪我は!?」

返り血に塗れている勇の状況を心配した大尉が問う。

「軽いものばかりです……。どうやら、魔力切れを起こしたらしく……」

息切れしながら申し訳なさそうに答える勇の顔を見て、大尉は言う。

「良く持ってくれた!急ぎ離脱し、魔力回復に努めてくれ!」

労いの言葉を受けつつ、勇は大尉から別のアロウティ兵の肩へ引き継がれ、その場を急いで離れた。

離脱していく勇を逃さないとばかりに攻め入ってくるサザギミ兵に対し、勇を守る様にしてアロウティ兵達は反撃し続ける。

最前線から少し離れた建物の影に運び込まれた勇は、水の補給や怪我の手当てを受ける事になり、ごくごく短い時間、久々に意識を手放した。


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