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22.日本男児

「まぁ……イサムが戻って来たんだ! 我々にもまだ勝ち目はある!はっはっは!」

勇の心情を察してか、ケリーは大らかに笑い飛ばした。

根拠の無い自信を聞かされた上、それが自分の存在有りきの自信である事に勇は呆然とする。

「駆け付けて来ておいてなんだが、俺一人の力が加わった所で、

笑い飛ばせるほどの余裕があるとは思えないんだが?」

そう言いながら呆れる勇を見てケリーは不敵に笑った。

「それが、そうでもないかもしれないぞ?」

「え?」

ケリーの言葉に怪訝な顔をして勇は頭の上に疑問符を浮かべた。

「奴らが今この時期に攻めて来た理由が分かるか? 冬の海は、奴らにとっても過酷だ。それでも、今の時期に攻めて来たのは何故か?」

ケリーの問いに答えられず、勇は顔をしかめる。

答えられない勇を指差してケリーは言った。

「お前がここを離れたからだ」

「……何だって?」

信じ難い答えを突きつけられ勇は聞き返す。

ケリーは続けて言う。

「カトレアの嫁入り日が決まったのが、ほぼ二ヶ月前で、お前が同行する事もその時点で決まっていた。そして、その頃、既に領内に間者が入り込んでて、サザギミ軍にお前が居なくなる日取りが伝わり、今回に至った……と言うのが、私の推測だ」

最後に付け加えられた言葉で勇の肩の力が急に抜ける。

「ただの推測じゃないか」

しかし、そう言いながらも妙に説得力があって嫌に汗ばむ。

自分の存在が、今回の戦争を引き起こしたとは考えたく無い。

だが、戦争が始まった四年の間に、ここまでの兵力が差し向けられた事がない事を、カトレアに教えられて勇は知っていた。

殆どの攻撃を西方の地で防御していたからと言うのもあるが、

それでもサザギミ王国軍はじわじわとアロウティ神国を責め立てる様に、四年間攻撃し続けてきていたのだ。

そこには並々ならぬ恨みを感じたが、異世界人の勇にとっては正直どうでも良いと思える様な事だった。

にも関わらず、今回で手法をガラリと変えてきたのは、別の要因があるからとしか思えない。

まさか、自分が召喚されたせいで、ケリー領もジアンダ領も……。

「それだけお前の存在を奴らは恐れてるって事だ!」

自責の念を心の中で唱え始めた勇の意識を戻す様にケリーが笑って言った。

「無理もない! お前は私たちを勝利に導きに来た、ニッポンの軍人なのだからな!」

またも根拠の無い事を言って笑い飛ばすケリー。

しかし、軍神でも化物でもなく、〝日本の軍人〟と言われた事が勇は嬉しかった。

これまでの何よりも認められた気がして、勇は目頭を熱くする。

こんな状況で泣けるものか。

ぐっと涙が出てくるのを堪えて、勇は顔を引き締めて言う。

「おう。日本男児の意地、見せてやる」

完全に覚悟を決めた顔で言った勇を見て、ケリーは心底嬉しそうに笑った。

「おお! 頼りにしてるぞ! イサム!」

こうして、勇とケリーはミモマに向かいつつあるサザギミ王国軍、約五千人を相手取る策戦を立て始めた……――


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