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10.訓練


十日後。

黙々と自主訓練をこなしていた勇の目の前に、宿敵や元凶と呼びたい存在が現れた。

「――……ご無事で何よりです。イサム殿」

大量の護衛を引き連れて、爽やかに微笑みながら現れたアーノルド皇太子の言葉に勇は嫌味で返す。

「あぁ、皇太子殿下とケリー侯爵のお心遣いのお蔭様で何とか」

一切の感謝の気持ちもないトゲトゲとした言葉を受け、アーノルドは苦笑した。

「はは……。本当にお元気そうで安心しました……」

怒鳴り散らされて追い返されないだけマシか。と思いながら、アーノルドがそう言うと勇は盛大に舌を打って自主訓練に戻ってしまった。

その様子を見守りながらアーノルドがその場で立っていると。

「――……おぉ! 殿下! ご到着されたのですね!」

ケリーがアーノルドの存在に気が付き、嬉しそうに歓迎した。

勇の訓練の様子を見ていたいと言ったアーノルドの要望に応え、ケリーは観賞用の席を用意させた。

ケリーに礼を言いながら席に座り、出されたお茶を飲みながら、アーノルドは勇の訓練を見る。

自主訓練しながら横目でチラチラとアーノルドの様子を見ていた勇は無性に腹が立った。

俺は見せ物じゃない……!

歓談するケリーとアーノルドを見て、勇は怒りの赴くままに地面に転がっていた小石を二人目掛けて発射した!

しかし、勇の殺気に気が付いたケリーがアーノルドの目の前に立ち、発射された小石を薙ぎ払った。

目を丸くして驚くアーノルドと、わたわたする護衛の騎士達の様子を見て、勇は更に腹を立てる。

戦争中に気安く出歩きやがって……。その上、護衛は役立たずなのか?

そう思う勇に対し、投石攻撃を薙ぎ払ったケリーはと言うと。

「はっはっは! イサム! 殿下に嫉妬かー!? 見た目通り、子供のやり口だなー!」

アーノルドと歓談していた事に嫉妬した犯行だと決め付け、ケリーは大らかに笑って言った。

的外れな指摘を受け、勇はぶちっと頭の血管が切れる勢いで激怒した。

「誰が嫉妬だ! 子供だ! ふざけるな!! 人を見せ物にした事に抗議したんだ!!」

勇の怒声を受けたケリーだったが物ともせずに爆笑した。

本気の抗議だと分かってないのか、分かってて笑って誤魔化してるのか分からないケリーの態度に、勇は更に怒った。

そんな勇を見て、アーノルドが慌てた様子で椅子から立ち上がって言う。

「もっ申し訳ない! 決してイサム殿を見せ物にしたつもりは無く、ただ、イサム殿の訓練から学ぼうと思っていただけで……!」

アーノルドの主張を聞いた勇だったが、それでも納得出来ない様子で言う。

「学ぶつもりがあるなら呑気に椅子に座って見てるな! 自力で動いて習得しろ!」

どうせ人に任せきりの、へなちょこ皇太子なんだろうが。

勇は心の中でそう毒気付く。

しかし、勇の言葉を受けアーノルドは一瞬目を丸くさせたが、直ぐに嬉しそうに笑った。

「良いのですか!?」

「……え?」

キラキラと目を輝かせながら言うアーノルドの反応を受け、勇は意外に思った。

お互いに予想だにしていなかった反応を見せた結果、皇太子と転移者の合同訓練が始まった。

元素魔法使いだったアーノルドは、十日前に起こった戦での勇の活躍を聞き、どのように元素魔法を扱ったのか知りたくて足を運んだらしい。

アーノルド自身が元素魔法使いに長ければ、もっと戦争を有利に運ぶ事が出来る筈だと言って、喜んで勇の真似をして元素魔法の訓練を行う。

その様子を見た勇は口だけの皇太子では無いのか? と疑念を持ちながらも、目を輝かせながら教えを乞うアーノルドを邪険に出来ず、

自分の言葉に責任を持つつもりで訓練に付き合った。

その後、数日間、ケリー侯爵領に留まる事にしたアーノルドは毎日、勇と訓練を重ねた。

実践訓練も兼ねて、模擬戦も何回か行い、ケリーから勇とお揃いだと称して刀もどきを渡されるなど、充実した数日間を過ごし首都へ帰って行った。

見送る時にアーノルドは勇に対し礼を言いつつ、また来る事と宣言したが、

もう来るな。と勇は返した。

しかし、その口をケリーが無理やり抑え込み、いつでも歓迎します。と笑顔で返答しアーノルドを見送る。

それから、ケリー領で戦闘が起こる度にアーノルドは訪れる様になって行った。

戦時中に何とも呑気な事だ。と心の中で思いながら、勇はアーノルドとアーノルドの護衛騎士達に訓練をつけて行った。

白兵戦の腕前はともかくとして、魔法の使い方が転移して来たばかりの勇よりも未熟というのが理解出来なかった。

言葉が通じないもどかしさに似ていて、どう解決したものか悩んだが、人に訓練をつける事自体が初体験だった勇にはどうしようも出来ないと悟った。

自分の動きや、魔法の使い方を真似させれば良い。と思い立ち、

とにかく魔法を使っている所を見本として見せ続け、訓練を進めていった。

だが、思う様な結果は得られず、護衛騎士の何人かが少し魔法の上達を見せたくらいだった。

それでも、以前よりも戦闘能力が向上したと言う評判を受け、

ケリー領に常駐してる騎士団が、勇に教えを乞いに来る様になり、

追い返すのも面倒に思った勇は同じ方法を取って、訓練をつけ続けた。

そんな日々が繰り返され、勇がイモンディルアナに転移して来て約半年が過ぎた。


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