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学園のアイドル「じゃない方」の女の子と友達になった俺は、彼女の見た目が偽装であることを知っている  作者: 滝藤秀一


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作戦

 物語後、ホールはしばし静寂に包まれた。

 唯さんと目があえば、互いにほっとしたように肩をすくめ自然と口元が緩む。

 気づけばこぶしを握り締めていた。


 この前の悔しさとは違う。

 こうなってよかったと手ごたえを感じていたからこそのそれだ。


「では、この物語の先はお二人がまた作っていってください」

「「はいっ! ありがとうございました!」」

「おお、二人とも元に戻ったね。落ち込んだりするのはしょうがないけど、なんからしくないから余計なお節介をまた焼いちゃった……」

「そんなこと……夏妃さんのおかげで、その、ありがとう」

「私も、感謝しかないです」

「そんな改まって言わなくてもいいよ。二人は大事な友達だし」




 夏妃さんはこの後仕事の打ち合わせがあるということで、物語後俺たちは二人で帰ることとなった。

 来たときとは違い、心は晴れ晴れとしていて足取りもなんだか軽く感じる。


「あの、樋口くん……ああなったのは、やっぱり舞が関係してるんですよね……」

「うん。断定はできないけど、その可能性は限りなく高いと思う」


 質問というよりも、確認に近い感じで唯さんは聞いてくる。


「私も何か変だなって思ってたんですけど、舞が私の影武者みたいに行動していたのなら合点がいきます」

「ちょっと確認したいことがあるんだけど……」

「何ですか? 何でも聞いてください」

「その、舞さんと仲って悪いの? 俺が見ている限りとてもそんなふうには見えなかったから」

「い、いえ、悪いなんて私自身も思いません。あっ、でも、舞が実際にどう思っていたのかはわかりませんけど……」

「うーん、仮の話だけど舞さんが本当に裏で動いていたとして、その目的は唯さんが元の姿に戻ること、だと思うんだよ。現にそのあとからは何の嫌がらせもないし、それは目的が達成されて裏で動かなくなったんだと思うんだ。だけど……」

「そうする動機がわからないですよね」

「その通り……」

「このままにはしておけないですね。私、もやもやしますし。なんでそうしたのかはちゃんと直接聞きたいです。樋口君には何かいい案がありますよね?」


 唯さんは俺をキラキラした瞳で見つめる。

 もう俺も覚悟は決めたし、迷いはない。


「はぁ、唯さんらしくなったね。それじゃあ、作戦がある」



 ☆☆☆



 週明け、教室内はいつも以上に明るい雰囲気に包まれていた。

 その見た目、雰囲気、明るい話声。

 再び、イメチェンした姿に戻った唯さんは朝早くに登校し、クラスメイト達を待ち受けていればすぐに周囲に人が集まり、


「戻ってるじゃん。やっぱ唯っち、そっちの方が断然いい!」

「そうですかね、ありがとうございます」

「よっしゃー。やっぱり垢ぬけている方がいい。目の保養に」


 以前よりもより和やかな感じで話をしている。

 俺はそんな彼女の様子を見守るように視線を向けていた。

 内心ではお調子者の男子と思っていることは変わらない。


 本当に戻ってよかった。


「やっぱり、そっちの方が似合ってるよな……」


 聞こえないくらいの小声だったにもかかわらず、唯さんの耳には届いたようだ。

 ちょっと顔を傾け、微笑んでくれる。


 思わずドキッとしてしまうような魅力的な表情だ。

 目に焼き付けておきたいけど、浮かれているわけにもいかない。

 もう作戦は始まっているんだから。


「っ! なっ……ちょ、ちょっと、お姉ちゃん!」

「舞、おはよう」


 登校してきた舞さんに、唯さんはみんなと同じように笑顔で明るく声をかける。


「な、なんでまたあか抜けてるの? そんなことしたらまた……」

「今度はもう大丈夫。樋口君が助言してくれたし、樋口君が守ってくれるし……それに」


 そう耳打ちしているのを唯さんの隣にいた俺には聞こえた。


「だ、だからって……」


 舞さんは唯さんの話を聞いても納得していない様子だ。

 その舞さんを前に、さらに唯さんは付け加える。


「それに、絶対に助けてくれるって私信じてるから」


 ちょうど登校してきた菊地は唯さんの姿に、その言葉にびっくりした様子だった。



 授業が始まれば、今日の俺はいつも以上に唯さんに問題の解き方や、課題の確認などを積極的に聞いたりする。

 あちこちから羨むような視線が飛んできているような気がするけど、気にしている場合じゃない。


 お昼休みは唯さんや菊地と一緒にお昼。

 他愛のない話題でもいつも以上に楽しく感じた。


 舞さんがこちらを伺うように見ていることに気づきながら、


「あ、あの、樋口君。放課後に久しぶりにマダミスやりませんか……?」

「うん。また遅くなっちゃうかもだけど、もうテストも終わったし、やろっか」


 唯さんの提案を受け入れた。

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― 新着の感想 ―
言ってしまえば、教室で真実を暴いてしまう選択をしたのが過去の敬大さんなんですよね。今回の件で重要なのは動機であって、断罪が目的ではないのだから。
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