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学園のアイドル「じゃない方」の女の子と友達になった俺は、彼女の見た目が偽装であることを知っている  作者: 滝藤秀一


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対策強化

「親密そうな話みたいだけど、ちょっとごめんなさい」

「っ! えっ、佐久良舞、さん……」


 突然現れた舞さんの存在に、唯さんと対面していた男子生徒はたじろぐ。

 廊下にいた野次馬の人たちもざわつきだした。

 クラスメイトの雑談を聞いている限り、舞さんは入学した時からの人気者だ。

 唯さんと双子ってことはすぐに校内に知れ渡り、イケてる方とじゃない方なんて呼ばれだした。


 当然のことのように、イケてると言われる舞さんには今みたいに呼び出しやラブレターをもらったりしていた。

 その子を前にたじろぐような反応はわからなくはない。


 俺はどうしようか少し迷ったものの、一歩後ろへ下がる。

 舞さんがどう出るのか、ここはお手並み拝見と行こう。


「お姉ちゃんにしつこく言い寄っても無駄よ。こう見えても付き合う人の条件、すっごくハードル高いんだから」

「えっ……」

「背が高くて、一芸に秀でていて、思いやりのある人。残念だけど、あなたはその条件に当てはまらないって。お姉ちゃんは思っています」

「そ、そんな……」

「だから粘っても無理なものは無理でしょ。ごめんなさい」


 まだ現実を受け入れられない男子生徒は駄々をこねたようにその場を動かない。

 そもそも唯さんは何度も言葉を変え、お断りしたはず。

 最終的には夏妃さんから伝授されてた氷のような女の子にも憑依したはずだ。

 あれを見て絶望しない精神は大いに感服する。

 絶望してて動けないのならわかるが、普通の人なら声も出なくなりそうなものだが。


 唯さんは妹の言葉に目を見開きながらも、うんうんと最後は肯定して、


「あ、あの、そういうわけですから。私、まだお昼の途中なので失礼します」

「行こ、お姉ちゃん」


 冷たい瞳を宿したまま、それでも一礼は忘れず、舞さんに背中を押され教室へと戻っていく。

 男子生徒は両手を握りしめ未練がましく唯さんを見ていたが、やがて肩を落としたように去っていった。

 あの感じならもう次は来ないだろう。


 彼の背中を見送って教室に戻ろうとしたとき、すれ違うように現れた夏妃さんに横っ腹を軽くたたかれる。

 くすぐったい。そんな親しそうにスキンシップを自然にしないでもらいたい。


 夏妃さんも、校内の人気者の一人なんだ。

 変な噂がたったらお互い困るだろ。


「おいっす」

「お、おいっす……」

「さっきの人、唯ちゃん目当てできて、玉砕した感じ?」

「まあそうなんだけど……結構しつこかったみたいな感じだったと思う」

「ふーん……異性関係のトラブルはかなり対策講じてたけど、あれでもまだ足りなかったかな……」

「どうなんだろ……本来なら十分だと俺も思ったんだけど」


 断られてもあきらめきれなくて。

 意地になって。

 好意を抱いた気持ちが強すぎて。

 鈍感力が高くてなのか、いずれにしろああいう人もいるんだということを頭に入れておかないといけないだろう。


「敬大君がフォローしたの?」

「い、いや、今のは俺じゃなくて、唯さんの妹が」

「佐久良舞さんか……」


 教室をのぞき込み、夏妃さんは唯さんと舞さんの姉妹を見つめる。


「うん……舞さんのことは知ってる?」

「有名人だからね。噂くらい。といっても悪いうわさは聞かないね……次、移動教室なんだ。あたしもう行かないと……ちょっとさ、敬大君が見てた範囲での出来事を送っておいて。それを踏まえて2人で対策強化考えておこうよ」


 夏妃さんもこのままじゃいけないと思ったのだろう。

 俺も同意見だった。


「オーケー」

「それじゃあまたね」


 廊下にいた男子たちは夏妃さんの後ろ姿を目で追っていた。

 自分だって十分有名人じゃないかと思いながら俺は教室へと戻る。



 ☆☆☆



 その日の夜。

 夕食後、俺は自室にて唯さんと夏妃さんとマダミスをプレイしていた。

 あのイベント後から時間がそろう時だけ、こうして一緒にシナリオを遊んでいる。


「お疲れ様、さっきのシナリオも面白かったね。唯ちゃんは相変わらず演技凄いし、敬大君は事件の真相早くわかりすぎだよ」

「「……」」

「こらこら、無言禁止。全く二人とも油断するとすぐ無言になっちゃうんだから」

「面目ない。まだ喋りなれてないし、特にこういうメッセージだと書いては消してを繰り返しちゃってなかなかなあ……」

「私も同じです……」

「そうそう、新たな対策どうするの?」

「それをこれから決めよう」

「何のお話ですか?」

「ほら、今日みたいにしつこすぎる男子への対応策、冷たい美少女のお断りでも、通じない子へのさらなる一手、みたいな」

「た、確かに聞いておきたいです」

「お昼の時、何があったか、唯ちゃんの妹がどう対処したのかはだいたい敬大君から聞いたよ。それを踏まえて、もしもの時は唯ちゃんだからできる上の対策があるかなって」

「それ、俺も考えてた。それきゃないかなって」

「どうするん、ですか……?」

「それはね」

「それは」


 俺と夏妃さんが考えていることは一緒のことだった。


 それはいざって時の策で、使う機会がないならないでいい。

 現に翌日からは唯さんへの呼び出しはなくなった。

 舞さんのけん制が効いているのだろう。


 それでも登校時などに男子生徒の視線を多く感じることは変わらない。

 まあそれは唯さんだけに限ったことではないだろう。

 変貌したってこともあって、転校生のような存在になっている、のかもしれない。


 数日間はそんな調子だった。

 だけど、週末が迫った金曜日。

 それまでの数日が嘘だったかのように、それは突然やってきた。


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― 新着の感想 ―
学年どころか下手したら校内でもトップクラスの美少女二人に加えて、不良扱いされてた敬大さんがついてる唯さんに告白、それもかなりしつこい告白をするなんて命知らずな男子生徒もいるものですね。
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