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学園のアイドル「じゃない方」の女の子と友達になった俺は、彼女の見た目が偽装であることを知っている  作者: 滝藤秀一


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似た者同士の3人

「――実は樋口さんが演じていた聡さんは、姉の優香さんに好意を持っていて」


 マダミス事件終了後、GMさんが各キャラのバックボーンを演じた人と共に解説をして、俺たちが参加した『人気女優殺人事件』は幕を閉じる。


 参加者は各々で反省会などしている中、席を立った唯さんに近づき声を掛けようとしたら、


「あ、あの、樋口君、さっきはすいませんでした……」

「うんうん、俺のほうこそ、緊張しているのは気づいていたのに何にもしてあげられなくてほんとにごめん」


 彼女は本当に申し訳なさそうに頭を下げてくる。

 始まる前の緊張でがちがちな状態はどこへやら、今は舞台を成功させまだ興奮しているようで、まだ頬に少し赤みがさしていた。

 間近で見るとほんとに……。


「い、いえ、わ、私が情けないから、なんか樋口君の調子も崩してしまったみたいで」

「……」


 互いに謝って、顔を見合わせていると夏妃さんが傍へかけてくる。


「やっほい。二人ともお疲れ様。いいものを見せてもらって、すっごく驚いたよ。ねえ、さっきのどういうからくり? どうしてあんな別人みたいにいきなりなれちゃうの? 何かコツがあるんならお願いだから教えて」

「えっ、あっ、うっ……」


 予期せぬことだったのか、言い淀む唯さん。

 なんだかさっきと立場が逆転しているな。

 それはともかくとして、俺もお礼を言いたい。


「そ、その、ありがとうございました」

「やだなあ、もう……お礼を言われるようなことはしてないってば。あたしさ、お仕事の役に立つかもよってオフラインのマダミス始めてみたんだけど、最初はね、同じかんじだったんだよね。だからなんかほっとけなくなっちゃってお節介を焼いちゃっただけだよ」

「「……お仕事の役?」」

「ああ、ごめん話してなかったね。あたしモデルやってて、演技にも興味があって、でもそっちは大根ちゃんもいいところでね。見かねたマネージャーさんがマダミスを勧めてくれたってわけ」

「モデルさん……」


 改めて夏妃さんを見てみれば、モデル体型に小顔でその表情も終始明るい印象だ。

 異性なら仲良くなりたいと思うのが正常だろうけど、俺はそういう意味ではなくて彼女に興味が出ている。


「「「……」」」


 やり取りはそこで止まり、俺を含め3人とも何かを伺っているような雰囲気。

 クラスでは唯さん以外話す子はいない。

 せっかく知り合った同世代の子。

 しかも唯さんを助けてくれたし、勘もよさそうだ。


 仲良くなりたい。そう思ったのは俺だけではなかった。


「「「あ、あの、も、もしよかったら……」」」


 同時に言いかけて目を合わす。


「れ、連絡先を教えてくれない?」

「れ、連絡先を、お、教えてください」

「連絡先教えて」


 続く言葉も同じだった。

 しかも全員恥ずかしそうに顔を赤くしている。

 あり得ないと思うけど、もしかしたら似た者同士だったりするのかもしれない。


 傍目にはたいしたことなんてないことだろう。

 でも俺的には相当勇気を振り絞った出した言葉で、それだけでどっと疲れた。


「なんだよ。みんな同じか……」

「き、緊張しました」

「私も……自分から連絡先聞くのは初めてかも」

「「えっ……」」


 俺と唯さんは夏妃さんの言葉に声を上げ、それから首をかしげる。

 タイプ的にそういうことが初めてというのは何とも信じがたかった。

 どう考えても夏妃さんは陽キャさんタイプに入るだろう。


「あー、私、学校ではぼっちちゃんなんだよね」

「「えっ……」」


 印象とはまるで違うことをさらりとほのめかされ、唯さんと共に驚いてしまう。


「あはは、入学した時さ、ちょうど仕事忙しくてねえ。だから毎日学校行けてなくて、登校したら登校したで放課後はさっさと帰っちゃったから。その間にみんな仲良くなってて」

「そ、そうなんですか……」

「二人はさ、学校でもイケてそうじゃない」

「「……」」


 いったいどこからそう思ったのだろうか。

 俺たちは顔を見合わせる。

 なんとなく嘘をつきたくはなくて、


「い、いや、俺は、高校デビューに見事に失敗してボッチまっしぐら」

「わ、私も、デビューしちゃおうかなって思ってはいましたけど、頑張ろうとしたんですけど、でも、やっぱり、クラスでもあんまり喋れないし、ま、い、いえ、妹みたいに明るく振舞えたらいいのに、ちゃんとできなくて……」


 唯さんは胸に溜まっていたものを吐き出しているかのようだった。

 上手くいってないのは俺だけじゃなかったのか。


「そうなんだ……うーん、君のはすんなりと助言できないけど、あなたはさっきみたいにすれば上手くいくと思わない?」


 夏妃さんの意見を聞いて、それはいい考えだなと思う。


「えっ?」

「思い描く理想の子を、さっきみたいに演じればいいんだよ!」


 夏妃さんの言葉に唯さんは瞬きをした後、はっと目を見開いた。


「あ、あの、立ち話もなんなので移動しませんか? ちょっと顔出しておきたい場所があって」

「うん、そうしよっか。お腹もすいたしね」

「は、はい」


 長話を出来るうってつけの場所かはわからないけど、俺の提案に二人は乗っかってくれた。

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― 新着の感想 ―
唯さんは見た目を少し変えるだけ、夏妃さんは少しクラスメートと交流するだけで簡単にぼっちを脱却できそうな気がしますね。
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