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6.青い騎士と隊商


「向こうも気づいたみたいだけど、大丈夫?」


「殺気を感じるか?」


「殺気はないよ。こっちを見てるけど、特に動きはない」


「攻撃の配置には転換していない?」


「うん。でも、こんなところにいるなんて、変だなあ~。俺たちみたいに訳ありなのかな」


「危険な奴らでなければいいが……馬車は、何のために……?」


「国境なんだろう? 貿易の品物とか?」


「ここは魔獣が多くて有名だが、屈強な護衛を付ければ近道ルートではある。あとあの崖さえどうにかすればね」


「護衛付き隊商か……あちらも動いていないということだし、腹は減ったから、警戒はしつつ、軽く食べよう」


「そうしよう!」


という訳で、作り置きの携行食を魔法バッグから出して、ムシャムシャ食べる。


そして、魔力をそれなりに使ったであろうアロニアに魔力を充填しておく。


俺はまだ、ほぼ使ってないからな。


一度、魔力枯渇を経験したおかげで、俺の魔力の残がどのくらいかわかるようになった。


魔力だけで言うと、毎日枯渇させたほうが、俺の魔力の経絡がしっかり増えるんじゃないかって気がする。だけど、いつ魔獣がまた出るかわからないから、そういうことはできない。


火を使ってないから、携行食は冷たい。それでも、旨い。


魔法バッグの性能が恐ろしく良いのだろうなと思う。

魔法バッグも俺の親友らしいヨアキムが作っていそうだ。


あとアロニアの料理の腕も良いんだよな。コンセプトが普通のメイドじゃなくて、サバイバル特化型のメイドなんじゃないかな。


おっと、向こうにも警戒をっと。


索敵!


俺の脳内マップに森の中の気配の情報が飛び込んでくる。

生命の気配と魔力の流れが明るい色で表され、暗くされた現実の視界とのコントラストではっきりわかる。


あ...…向こうの護衛の人かな、なんか筋トレしている。

警戒心とかないのか?


次にその人は剣を持って素振り……おっ、速い、速い!


長い裾の青色のガウンに、長い1つ結びの黒髪……。

黒髪はこちらの世界では初めてだから、覚えやすい。


ゴンッ。


「いてっ」


なぜかアロニアが隣に座って、俺に肩をぶつけてきた。


「あれ、警戒心ないんかな?」


「俺も同じことを思った」


「なら、同じところにとどまる理由は、なんだろう?」


「落とし穴でも掘るのか?」


「そんなわけはない!」


なお、俺の索敵能力は、使えば使うほど伸びている。

この世界では、ゲームのようなステータス画面は現れない仕様らしい。


けれども、もしもレベル表示ができたら、レベルアップしているはずだ。


経絡が増えたか読むアロニア流のやり方は俺には馴染みがなくて難解だけれど……。


セラフみたいな鑑定持ちなら、ステータス画面みたいな認識ができるのかな?


いつか自分のレベルが気になったら聞いてみようっと!

(今は自分の相対的レベルを知らなくてもいいので……)




そのままにらみ合いは続いた。


俺たちが南東に動くと、向こうも一定の距離を保ったまま、同じくらい南東に進んだ。


次に南西に速度をやや上げて進んだが、向こうもしっかり付いてきて、距離を開けて尾行されている形になった。


アロニアが四方に魔方陣を書いて結界とし、夕食の支度に取りかかる。


「完全について来られちゃったなあ……」


それでも、向こうも、夕食は火を焚いて、しっかりと作っている。


「あれは、敵なのか、味方なのか……?」


「ストーカーだね」


俺は言った。





翌日も、謎の付きまといは続いた。


「もうっ! 我慢ならん!」


とうとうアロニアが爆発した。「おいらが言って、訳を聞いてくる!」


アロニアが行けば、話し合いじゃなくて、果たし合いになってしまいそうだ。


「セラフも行く!」


「おっ、お嬢ちゃんは鑑定眼で見てくれるか? じゃあ、よし、一緒に行くか!」


「ちょっと待って、俺は? 俺、索敵持ちだろ?」


「おまえは相手に敵意さえなければ、どうせ『ハイ、ハイ』と言うだろう?」


「まあ、そうだけども...…」


「おまえは甘い、だからここで待っていろ」


「セラフは良いのかよ」


「対人ならセラフは大丈夫。むしろ推奨」


「はあ……」



そして、アロニアとセラフは大股で、例の付きまとう馬車の一行の元へ乗り込んだ。


「どうしておいらたちのそばにずっと付いてくるんだ? 気になってしょうがない」


「悪意はない」


青い鎧を来た背の高い騎士が答えた。「むしろ、わざわざ来ていただいて申し訳ない」


「どういう意味だ?」


「実は、この周辺の魔獣が例年より活発化していて……我々の準備不足が悪いのだが、そちらに我々の護衛を依頼できればと思っていた」


「護衛ならば、おたくがいるじゃないか」


「我ではあんなに魔力を放てない。すぐに枯渇しまう」


「おいらたちを見ていたのか」


「見ていた。あの鳥が出てきた時、我も焦ったが、見事、撃退していただいて、助かった。我では、あのような鳥の魔獣には太刀打ちできない」


「しかも、そちらには高位の治癒術師がいるようだ。ぜひとも、行動を共にさせていただきたい」


「けっ」


アロニアは端正な顔ながら、唾を吐いた。「そういうのは、おたくらがこっちに直々に来て、頼むもんだ」


「断らないのか?」


「あとは、うちのパーティーリーダーが決めるさ」


「あのエルフの治癒術師か! ……でも、いいのかな、我のような混血が出向いても?」


混血とは、黒髪のことを言っているのだろう。


「そんな理由でためらっていたの? アイツはそういう類のエルフじゃないよ」


「そうなのか」


馬車の積荷とか、同乗しているらしい商人の様子を「鑑定しておくようにね」とは、行きの道でセラフには言っておいた。


なので、先に戻って、3人で情報共有してから、この騎士には来てもらう必要がある。


「じゃ、おいらたちは先に戻っておくから、お昼過ぎに来てくれ」


「はい」


そして、アロニアとセラフは戻っていった。


「リンクス、あちらさんは、こっちと合流したい希望があるぞ。護衛依頼もされた」


「依頼相場とか、依頼完了後の報酬を知りたい」


「まあまあ、まあ! で、セラフが見たあちらさんの積荷の情報共有が先だ」


「おお、では」


「積荷は魔道具よ。でも魔力の元がなくなってたわ」


「魔道具の交易商人なのかな」


「商人のふりをしていただけよ。護衛で付いているあの騎士さんだけど、あの人が中心なの。伴はあと2人いたわ」


「あの騎士が中心?」


「うん。マスターみたい。あの人は、本当は女の人だよ」


「ふーん、女性ねえ」


「リンクスの周りは女性だらけかな?」


「でも伴は男の人だったよ。若かった」


「ふーん」


「じゃっ、お昼にしようっと! リンクスは偽名を考えた? お昼過ぎには彼女が来るから」


「おお……う……、えっと、俺の偽名はな、怜樹れいじゅだから」


「れいじゅ? ああ……」


「れいじゅ。ふーん」


謎の間をあけて、俺の本名は受け入れられた。



約束通り、食後に彼女はやって来た。

伴は連れず1人である。


「どうも、騎士さま。俺は怜樹れいじゅと言う。よろしく」


相手が名乗り出て、身分を言うまで、敬語は不要、とあらかじめアロニアに言い含められている。

しかも、今後はハンター登録をする可能性もあるとのことなので、敬語はやはり不要らしい。


「我の名はミラビリス・アーファと言う。南のウィクラシア王国の騎士である。が、今は家業の手伝いで、旅人の護衛を行っている。以後、お見知りおきを」


「ミラビリス殿、改めまして。おいらの名はアロニアだ」


「私はセラフ!」


俺はミラビリスと名乗った騎士の顔を見つめていた。

東洋系の顔立ちだ。

日本生まれの俺が言うのはなんだが、ミラビリスは元の俺と近しい系統の顔をしている。

でも、元の俺みたいに平坦な顔をしているわけでもなく、そこそこ彫りが深くて綺麗な顔をしている。


まあ、隣のアロニアの超絶なる美しさには一段劣るのだが……。


アロニアの胸は大きいけど、この騎士の胸も、鎧に隠されているが、かなり大きいんではないのか。


この騎士とでも行けそうだなッ!

と確信した。








投稿頻度をもしかしたら週2にするかもしれません。なんか慣れてきました。

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